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日本舞台音響事業協同組合
(株式会社クレア・ジャパン)西澤 勝之 様

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幕あい 特別号外
「新型コロナウイルスとライブ・エンターテイメント業界について」

日本舞台音響事業協同組合
代表理事 西澤 勝之
(株式会社クレア・ジャパン 代表取締役会長)

幕あい 特別号外 
「新型コロナウィルスとライブ・エンターテイメント業界について」

日本舞台音響事業協同組合 代表理事、株式会社クレア・ジャパン 代表取締役会長 西澤 勝之氏 (写真 左) Talks with
ヤマハサウンドシステム株式会社 代表取締役 武田 信次郎(写真 右)

日本舞台音響事業協同組合 代表理事、
株式会社クレア・ジャパン 代表取締役会長 西澤 勝之氏 (写真 左)
Talks with
ヤマハサウンドシステム株式会社
代表取締役 武田 信次郎(写真 右)

「幕あい」とは、一幕が終わって、次の一幕が始まるまでの間。舞台に幕が下りている間のこと。このシリーズでは、ヤマハサウンドシステムが日頃お世話になっているホール・劇場の世界を牽引するキーマンの方々に、市場のトレンドやヤマハサウンドシステムへの期待などを、その仕事の「幕あい」に語っていただきます。
今回は日本国内で2020年2月1日に指定感染症に指定された新型コロナウイルス(COVID-19)の感染者急増によるライブ・エンターテイメント業界でのイベント自粛について、コンサートPA会社をはじめとする音響事業者の組合である日本舞台音響事業協同組合の代表理事であり、株式会社クレア・ジャパン 代表取締役会長でもある西澤 勝之氏に、急遽お時間をいただきお話をうかがいました。「幕あい 特別号外」として掲載します。

(※対談日:4月2日。記載の情報は4月2日時点のものです)

プロフィール 西澤 勝之(にしざわ かつゆき)

プロフィール 西澤 勝之(にしざわ かつゆき)
1952年長野県にて生まれ。東洋大学経営学部入学、同大学在学中19歳より「赤い鳥」バンドボーイとしてライブ・エンターテイメント業界に入る。同大学卒業後株式会社バード企画に音響ミキサーとして入社、長年にわたり髙橋真梨子・Hi-Fi-Set 等のハウス・オペレーターを手掛ける。1989年、同会社取締役前年退職後、準備期間を経て7月20日株式会社クレアブラザーズ・オーディオ・ジャパン(旧社名)を設立。
同時に常務取締役に就任。1993年、代表取締役社長に就任。2012年、現株式会社クレア・ジャパン 代表取締役会長に就任。2016年 日本舞台音響事業協同組合 代表理事に就任。2019年 会社設立30 周年を迎えた。

ライブ・エンターテイメント業界では現状で
450億円以上の損失が出ています

武田:このたびは大変な時にお時間をいただきましてありがとうございます。本日は4月2日です。新型コロナウイルスの影響で各業界が大変な状況にある中、音響に関わる方々がどのような状況にあるのかを、ぜひお聞かせいただき、「幕あい 特別号外」として世間にお伝えできればと思っています。よろしくお願いします。

西澤氏:ライブ・エンターテイメント業界が直面している現状をお伝えいただきたいと思います。よろしくお願いします。

武田:今回の新型コロナウイルスによるライブ・エンターテイメント業界でのコンサートの自粛ですが、業界として状況が悪化したのはいつ頃ですか。

西澤氏:2月26日、安倍首相より、「この1、2週間が感染拡大防止に極めて重要であることを踏まえ、多数の方が集まるような全国的なスポーツ、文化イベント等については、大規模な感染リスクがあることを勘案し、今後2週間は、中止、延期または規模縮小等の対応を要請することといたします。」と発表がありました。それまでは通常にコンサートなどを行っていましたが、そこから完全にストップしました。

ライブ・エンターテイメント業界では現状で 
450億円以上の損失が出ています

武田:急ブレーキですか。

西澤氏:まさに急ブレーキです。僕の会社は翌日の仕込みをしていたところでストップがかかって撤収しましたし、2月26日に東京ドームや京セラドーム、大阪のコンサートが開始直前に中止になったのはニュースなどでみなさんご存じかと思います。その翌日27日から現在に至るまで、ライブ・エンターテイメントの業界は政府の要請に従ってほぼ100%、中止または延期となっています。唯一かと思われる例外が東京国際フォーラムの椎名林檎さんの東京事変のライブで、決行の結果、賛否両論が巻き起こったのは周知の通りです。
いずれにしても私たちコンサートPA会社のクライアントにあたるプロモーターの方々、つまり一般社団法人コンサートプロモーターズ協会、一般社団法人日本音楽事業者協会、一般社団法人日本音楽制作者連盟のこの3団体様が自粛を決めたので、我々はクライアントの意向に沿うしかありません。ですから2月26日以降、本当にほぼ100%、仕事はありません。

武田:仕事がゼロですか!

西澤氏:そうなんです。お店のように、売り上げが半分になったとか、20%になったではないんです。ゼロです。私の会社でいえば、2月26日以降にあったイベント現場は、唯一、3月に入って東京フォーラムの無観客で行ったテレビ関係の仕事1本だけです。

ライブ・エンターテイメント業界では現状で 
450億円以上の損失が出ています

武田:普段はどのぐらい月間やっていらっしゃるんですか。

西澤氏:僕の会社で言えば、通常であれば100本はありますね。

武田:東京以外ではどうですか。

西澤氏:東京と同じ状況です。ライブ・エンターテイメントに関しては、もう一律、全く動いていません。

武田:ライブ・エンターテイメント業界としては途方もない損失になっているのでしょうね。

西澤氏:一般社団法人コンサートプロモーターズ協会様含む音楽4団体様は、2月以降3月末にかけて自主的判断による中止・延期が1550公演、その損害額が推計450億円に上ると発表しました。

リーマンショック、東日本大震災をはるかに超える未曾有の事態

武田:西澤さんが業界に入られて、ここまでの事態はご経験ありましたか。

西澤氏:私はこの世界に入って早50年近く経ちますが、初めての体験です。2008年のリーマンショックや2011年の東日本大震災も経験していますが、それ以上です。
リーマンショックは金融の世界では大変だったと思いますがライブ・エンターテイメント業界は普通に仕事ができました。東日本大震災の時は放射能拡散風評問題で外国人ミュージシャンが来日しなくなったので僕の会社は大変でしたが、それでもチャリティのイベントなどがあり、それなりの需要はありました。でも新型コロナウイルスでは、「ゼロ」ですから。これは未曽有です。

武田:地域、規模を問わずに業界自体が大変なんですね。

西澤氏:はい。どこの会社も給料や家賃などの固定費の支払いがありますから、実際問題として3ヶ月この状態が続くともう会社を維持できない、という状況だと思います。
今のところ、コンサートの振り替え公演も5月下旬ぐらいからのものは実施の方向ではありますが、新型コロナウイルス感染者の状況次第で自粛が長引くことになると、ほんとうに大変なことになります。

武田:こうなる直前はどういう状況だったのですか。

西澤氏:ライブは好調でした。僕の会社で言えば2019年の最終四半期は最高益を出していました。直前までライブが活発に行われて、たくさんのお客さんがコンサート会場に来てくださっていました。

武田:CDが売れなくなっても国内のエンターテイメントはずっと右肩上がりでしたよね。ぴあ総研の統計データでもそうでした。

リーマンショック、東日本大震災をはるかに超える未曾有の事態

西澤氏:ただ2020年は東京オリンピック・パラリンピックが予定されていたので、実はコンサート業界は忍耐の年だったんです。というのも大きな会場がオリンピック・パラリンピックの競技会場及びプレスセンターになったりして会場が押さえられず、あまりイベントができない状況でした。
東京オリンピック・パラリンピックは1年延期になりましたが、だからといって予定が空いたホールにすぐに振り替えができるのかと言われるとそうはいかない。新型コロナウイルスがいつ終息するかわかりませんし、1回延期したものがもし仮にダメになったりしたらその次はどうなってしまうのでしょうか?

武田:そして2021年に東京オリンピック・パラリンピックが開催予定になったのですから、また会場が使えないことになりますね。

西澤氏:そうなんです。東京オリンピック・パラリンピック開催が2020年から2021年になったのですから、コンサート・エンターテイメント業界は受難が2年続くことになります。ライブ・エンターテイメント業界にとっては地獄の2年といえると思います。
もちろん一国民として、この一大国家事業の開催実施・成功は願うばかりではあります。

このままではライブ・エンターテイメント業界は潰れてしまいます

武田:よく台風などでイベントができない時の興行中止保険(イベント中止保険)がありますよね。新型コロナウイルスによる自粛に関しては適用されないのですか。

西澤氏:新型コロナウイルスに関しては想定外ということで、保険の対象になっていないんです。ですからチケットが全部売れているのに、政府の要請に従って自粛したことで、目の前のキャッシュが全部水の泡になった、というのが実情です。

このままではライブ・エンターテイメント業界は潰れてしまいます

武田:それは本当に大変ですね。

西澤氏:このままではライブ・エンターテイメント業界は潰れてしまいます。
それで私たちの組合も音楽4団体様主導の基、国会議員の先生方に働きかけていて、3月17日に「新型コロナウイルスからライブ・エンタテイメントを守る超党派議員の会」※ができて、衆議院議員の石破茂さんをはじめとする超党派国会議員の先生方(当日参加30数名)が動いてくださっています。自粛要請が出たばかりの初期の頃はイベントの補償は一切しないということでしたが、少しずついい方向に向かっていると思います。

※「新型コロナウイルスからライブ・エンタテイメントを守る超党派議員の会」
新型コロナウイルス感染拡大の防止を目的に、イベントの中止・延期を続けている現状に対し、3月17日、衆議院第一議員会館にて衆議院第一議員会館 多目的ホールにて新型コロナウイルスからライブ・エンタテイメントを守る超党派議員の会が開催された。

武田:「新型コロナウイルスからライブ・エンタテイメントを守る超党派議員の会」ではどんなことが検討されているのでしょうか。

西澤氏:業界からは補償について具体的な要望を行いました。

2020年3月17日、衆議院第一議員会館にて開催された「新型コロナウイルスからライブ・エンタテイメントを守る超党派議員の会」において、ライブ・エンターテイメント業界から、以下の要望が出された。

(1) 公演再開に向けた気運醸成への協力・感染予防対策費用の補助
・公演会場における感染予防体制整備費用の補助
・来場者への感染予防意識の啓発費用

(2) 経済的支援
・社会保障費、住民税、法人税などの一時的減免措置
・中小零細企業や経済的に不安定な出演者・スタッフへの支払い補償
・公的施設の会場使用料(キャンセル代)減免措置
・中小個人事業者への休業期間の補償
・「働き方改革関連法」に関する4月1日からの中小企業適用の先送り
・(緊急対応策第2弾)雇用調整助成金の特例措置の拡大

(3) 官民連携緊密化による協力体制の構築
・政府担当窓口の一本化
・国の感染拡大防止対策について正確かつ適時適切な情報の提供
・感染予防・会場環境整備自主ガイドライン策定への協力

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武田:ライブ・エンターテイメントを自粛したことに対する補償をしっかりすることが、文化を守ることになりますよね。

西澤氏:それがなければ本当に文化の崩壊になってしまいます。

まずは補償、それもできるだけ早く

武田:新型コロナウイルスによるこの事態はしばらく収束しないとは思いますが、今後どのようなことを考えていらっしゃいますか。

西澤氏:このままではどんどんライブ・エンターテイメント業界の会社は倒れていきます。政府は新たな実質上無金利、無担保の融資や中小・小規模事業者などを対象とした給付金、休業補償などの措置も考えているようですので、それらの情報を組合員さんに早め早めに告知していきます。

武田:本当に、今何かの力で守らないと、エンターテイメント業界が息絶えてしまうかもしれないですね。ドイツなんかでは「芸術は生活必需品だ」とちゃんとおっしゃっている閣僚がいて、補償もしっかりしているなと思いました。

まずは補償、それもできるだけ早く

西澤氏:まずは補償ですね。それもできるだけ早く。私たちライブ・エンターテイメント業界は政府から自粛の要請が出た時から、すぐにその意向に沿ってコンサートを自粛しているわけですから。

武田:とはいえウイルス感染が収束し、コンサートが再開するまでは時間がかかるかもしれませんね。

西澤氏:これは先日の「新型コロナウイルスからライブ・エンタテイメントを守る超党派議員の会」でも提言したのですが、一律の自粛を続けるのではなく、最初は部分的に解除できないか、と思っています。たとえばライブハウスとかスタンディングでのライブはできないとしても、公演内容と公演会場の条件、そして設定した基準を満たす衛生設備があればコンサートをしていい、といったことです。ともかくできるだけ早期に一部解除していただきたい。一律3ヶ月自粛では、多くの会社が存続できなくなるのではないかと憂慮しています。
それとコンサート保険ですね。今回の新型コロナウイルスではカバーされなかったのが非常に痛みが大きかった。もともとコンサート保険は一回限りの掛け捨てかつ保険金があまりにも高いんです。規模が大きいほど高くなる。ですから今後のためにも、もう少し使いやすくて、想定外の事態でも補償してもらえるような保険制度を政府主導で作ってもらいたいと思います。

武田:いま西澤さんのクレア・ジャパンではどうされているのですか。

西澤氏:3月からは政府の意向を受け、2時間時短と時差通勤にしていて、一か月かけて講習や機材のメンテナンスをしていました。それも終わりましたので5日間の特別休暇を付与して、明日(4月3日)からは3週間の臨時休業としました。
会社を創業して31年目になるんですがこんな事態は初めてです。今は政府から外出を最小限にするようにと言われていますから、みんな大変かもしれないけれども、自宅にいて、今までできなかった読書や音楽を聴いて教養を身につけ、また一家団欒で家族の絆を深めて、ともかく家庭円満に頼むよって昨日話ししてきました。

ライブ・エンターテイメントは絶対に復活します

武田:それにしても、まったく想像もできない状況になりました。

西澤氏:でも、私は生意気言わせてもらうと、ライブ・エンターテイメントは、非常にパワーを持った感動や夢や希望を与えることができる、人間が生きていくうえでなくてはならないものなので、絶対に復活すると思っています。
本当にいいライブ、いいエンターテイメントは、夢の世界です。たった2、3時間ですがアーティストとスタッフ、オーディエンスの全てが一体化になった時の感動。今日のコンサートでまた元気が出て明日から頑張ろうと思えること、実はこれってすごいと思うんですよ。

ライブ・エンターテイメントは絶対に復活します

武田:まったくその通りです。私もよくライブに行きますし、音楽で救われたことが何度もあります。

西澤氏:ミキシングのオペレーターをしているとつい勘違いしちゃって、本当に素晴らしいコンサートになると、なんか「俺がやってるんだ」みたいに勘違いして、あれがたまんないんだよね。あれを味わっちゃうとね。あの高揚感は他にはありません。
一つのコンサートには照明、映像、舞台装置、楽器周りなどさまざまなスタッフがいますが、ミュージシャンと一番近いのはやっぱりミキシングオペレーターだと思うんですよ。そして、どんなにミュージシャンがステージでいいパフォーマンスをしても、それをきっちり受けてお客さんに付加価値をつけて伝えることで感動させるのはミキシングオペレーターなんですよ。ですから、僕は常々社員には誇りを持てと言っています。

武田:最後に一言お願いします。

西澤氏:まず政府が政策として、ライブ・エンターテイメント業界を潰さないようにしていただきたい。
それにはまずは融資や給付などの資金対策です。実行が5月、6月といわれていますが、そんなんじゃ間に合わない方っていっぱいいると思います。とにかく早急にお願いしたいと思います。
僕はもう本当に、このライブ・エンターテイメントの社会的役割というのは、衣食住に匹敵するぐらいのパワー・価値があると思います。ですから、必ずライブ・エンターテイメントは復活します。この自粛で音楽がないことに耐えていた人たちが、どこかでライブ・エンターテイメントを求めて爆発するでしょう。新型コロナウイルスの感染が収束してライブができる状況になるまで、今は音楽への思いを溜めておいて、ライブ・エンターテイメントへの愛をもって耐える時期だと思います。

武田:本日はこういう状況でお時間いただき、ありがとうございました。

ライブ・エンターテイメントは絶対に復活します

<対談を終えて>

息苦しい。とにかく息苦しい。マスクのせいだけではない。
明朗で気さくな西澤さんは、いつもは話す時の距離がとても近いのだが、今回はお互いにマスクをして、距離をとっての対談となった。いつもお会いした時とお別れの時にする握手は、今回はなかった。

世間に流れるライブ・エンターテイメント業界関連のニュースから想像していたPA業界の状況と、西澤さんから直接お聞きする状況に大きな違いはなかったが、圧倒的に違ったのは「重さ」である。想像と直接聞く話では、重さが違う。言葉には質量があり、実体験に依拠した言葉の質量はとても重い。お話を聞いて、愕然とするしかなかった。その重さが、読者の皆さんに伝わればと思う。

しかし、西澤さんは現状を嘆いてはいなかった。組合の代表として、企業の経営者として、財務面をはじめとする足元の課題にひとつひとつ対処しながらも、「音楽などのライブ・エンターテイメントは絶対になくならない。人々の生活を豊かにするために欠かせないものである。復活の日は必ず来る。その日を信じて、今は耐えて、しっかり準備をしていきたい」と、目線は未来にあった。

地球上の人々がコロナの脅威に打ち克ち、歓喜の声を上げる時、そこにあるのは間違いなく音楽をはじめとするライブ・エンターテイメントである。一日も早くその日が来ることを願いながら、当社はライブ・エンターテイメントの場を拡大・維持すべく、社員や協力会社の健康と安全を最大限考慮しつつ大空間施設の建設、既存施設の改修・保守などに力を注いでいきたいと思う。

ヤマハサウンドシステム株式会社 代表取締役 武田 信次郎

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