ヤマハサウンドシステム株式会社

サーラ音楽ホール様 / 静岡県
Japan / Shizuoka Oct. 2022

サーラ音楽ホール 様

浜松市はさまざまな楽器メーカーが立地する「音楽の都」。市民の音楽文化活動を支える新たな拠点として2021年6月1日、浜松市北区新都田に「サーラ音楽ホール(浜松市市民音楽ホール)」が開館しました。地上5階建て、客席数1,414席を備える「サーラ音楽ホール」の舞台設備工事(舞台音響・舞台照明・舞台機構)をヤマハサウンドシステムが担当しました。施設の音響システムの概要やヤマハサウンドシステムの仕事ぶりなどについて、公益財団法人 浜松市文化振興財団 サーラ音楽ホール 館長 村木 啓純 氏、同 サーラ音楽ホール 宗田 涼 氏、同 サーラ音楽ホール 鈴木 雅子 氏、株式会社 ステージ・ループ 岩崎 博子 氏にお話をうかがいました。

サーラ音楽ホール 様

公益財団法人 浜松市文化振興財団 サーラ音楽ホール 館長 村木 啓純 氏(前列左から2番目)
同 サーラ音楽ホール 宗田 涼 氏(前列右から2番目)
同 サーラ音楽ホール 鈴木 雅子 氏(前列左端)
株式会社 ステージ・ループ 岩崎 博子 氏(前列右端)
ヤマハサウンドシステム株式会社 名古屋営業所 川島 洋次郎(後列左端)
同 技術部 名古屋 技術課 村上 大樹(後列中央)
同 設計部 システム設計課 髙橋 杏奈(後列右端)

「サーラ音楽ホール」は卓越した建築音響で
美しい響きを実現した市民のための新たな文化拠点

● 「サーラ音楽ホール」についてご紹介ください。

村木館長:
「サーラ音楽ホール」は2021年6月に開館した音楽ホールです。正式名は「浜松市民音楽ホール」ですが、株式会社サーラコーポレーション様とネーミングライツ契約を結んでいます。もともと楽器メーカーが多く立地する浜松市は音楽人口が多い都市です。その音楽活動の受け皿の一つとして作られたホールであり、浜松市の新たな文化施設の拠点としての役割も担っています。

サーラ音楽ホール 様

公益財団法人浜松市文化振興財団 サーラ音楽ホール 館長 村木 啓純 氏

サーラ音楽ホール 様

サーラ音楽ホール外観

● 「サーラ音楽ホール」にはどんな特長があるのでしょうか。

村木館長:
浜松には数多くの大型ホールがありますが、その中でも市民の皆様に身近な存在として私ども「サーラ音楽ホール」ではできるだけ多くの市民にご活用いただきたいと思っています。とはいえ音楽に親しまれていない方にとって、ホールはちょっと敷居が高いイメージがありますので、できるだけ敷居を低くしていろんな方に気軽に立ち寄っていただき、さまざまなことに挑戦できる施設にしたいと考えています。使用料に関しても浜松市がかなり抑えた金額設定をしており、教育関係団体で平日の日中であれば朝から夕方までの980席の1階席のみの利用で3万円程度です。ぜひいろんな用途でご活用いただきたいと思います。加えて言えば、演奏会などで使われたお客さまからよく「このホールは響きがいい」と言っていただきます。

サーラ音楽ホール 様

● この地区では吹奏楽の活動が盛んだそうですが、このホールだと気持ち良く演奏できそうですね。

宗田氏:
ヤマハ吹奏楽団さんもここで演奏をした時、「ここの響きはすごくいいですね」って褒めてくださいましたよ。アマチュアの利用が多いのですが「自分たちがちょっと上手くなったみたいだ」と言われるぐらい、響きがいいです。また吹奏楽だけではなく、合唱などでも「こんなによく響く大きいホールなのに自分の声が返ってくるなんて初めての経験です」などとお褒めいただいています。弦楽の演奏時には、響きを抑制するカーテンを半分開けたり閉めたりして、効果的に響きをコントロールされていました。これだけいい響きのホールは、なかなかないと思います。

サーラ音楽ホール 様

公益財団法人 浜松市文化振興財団 サーラ音楽ホール 宗田 涼 氏

サーラ音楽ホール 様

吹奏楽の演奏

サーラ音楽ホール 様

合唱

● 「サーラ音楽ホール」の響きがいい理由はどんなところにあるのでしょうか。

岩崎氏:
よい響きが得られているのは、固定型の反響板がステージにあることと、ホール形状が音響特性をよく考えて設計されていること、さらにステージの中にも響きをコントロールするための凹凸が壁面にあることなどが大きく寄与していると思います。

サーラ音楽ホール 様

株式会社 ステージ・ループ 岩崎 博子 氏

サーラ音楽ホール 様

ステージにある固定の反響板と凹凸が付けられているステージの壁面

● 開館してから1年ですが、どんな利用が多かったですか。

鈴木氏:
この一年、多くの市民の方々にご利用いただき、みなさんに認知されてきたのかなと思います。このホールは内観がとても美しいホールで響きもいいので発表会などでも人気があります。舞台音響をはじめ、ホールスタッフがお客さまの細かな要望にお応えしていることも評価されていて、今後のご予約もすでにたくさんいただいています。

サーラ音楽ホール 様

公益財団法人 浜松市文化振興財団 サーラ音楽ホール 鈴木 雅子 氏

● 具体的な用途はどんなものが多いですか。

村木館長:
多いのは吹奏楽の練習ですね。あとは吹奏楽、弦楽、合唱のコンサート、ピアノの音楽発表会、和太鼓の演奏など、音楽の催しが多いです。2022年からは市内の小学校の音楽発表会の場所に指定されましたので、11月末から12月初旬にかけて、市内の小学4年生が集まって演奏会をします。

宗田氏:
音楽以外では民間企業様のご利用もあり、講演会やカンファレンスなど、マイクを使った催しも行われています。音楽ホールの場合、マイク音声が響きすぎて聴き取りにくいことが多いのですが、このホールはマイクを通した声がボヤっとすることなく、明瞭に聴こえるとご評価いただいています。先日もここを使われた企業さんが、別の場所の予約をキャンセルして、このホールを予約してくださいました。

NEXOの小型ラインアレイと多数の補助スピーカーにより
明瞭で聴き取りやすいアナウンスを実現

● ここからは音響システムについておうかがいします。今マイクのお話が出ましたが、ホールの響きと明瞭なマイク音声の両立は大変ではないでしょうか。

村木館長:
最近はコンサートも演者がお話しすることが多いのですが、よく聞くのが「演奏の響きはいいんだけど、おしゃべりは何を言っているか全然分からない」という声です。特に古いタイプの音楽ホールでは響きとマイク音声の両立に悩まれているようですが、当ホールは適切にスピーカーを設置することで両立できています。

● どうやってマイク音声の明瞭性を確保しているのでしょうか。

岩崎氏:
「サーラ音楽ホール」は、音楽ホールでありながら、かなりの数の補助スピーカーが分散配置されていることが明瞭性に大きく影響していると思います。スピーカーはコンパクトでかつパワー感があって、ナチュラルなサウンドのNEXOの小型のものが選定されています。そして各スピーカーは音質、音量、距離補正が適切に設定されているので、お客さまはスピーカーの存在を感じることなく、ホール全体が鳴っているような自然な聞こえ方になるように調整されています。

● 外見からはスピーカーの存在を感じさせませんが、NEXOスピーカーがたくさん使われているのですね。

岩崎氏:
そうなんです。ステージの両脇にサイドスピーカー、ステージ中央の天井部分にプロセニアムスピーカーがありますが、これらはすべてNEXO「GEO M6シリーズ」ラインアレイシステムが埋め込まれています。また2階席用の補助スピーカーとしても「GEO M6シリーズ」が天井の金属ネットごしの見えにくい部分にあります。さらに客席後方やバルコニー両サイドの天井、そして最前列のステージフロントにはNEXOの小型スピーカー「ID24」が距離補正を施して分散配置されています。これらのおかげで、響きが豊かな音楽ホール特有のトークの聴こえづらさが少なく抑えられています。

サーラ音楽ホール 様

サーラ音楽ホール

サーラ音楽ホール 様

プロセニアムスピーカー、NEXOのフルレンジモジュール「GEO M620」× 9台とベースモジュール「GEO M6B」× 3台で構成

サーラ音楽ホール 様

ステージ左右に設置されたサイドスピーカー、NEXO「GEO M620」× 7台と「GEO M6B」× 2台、サブウーファー「RS15」x 1台で構成

サーラ音楽ホール 様

2階席補助スピーカー、NEXO「GEO M620」× 3台、「GEO M6B」× 1台で構成

サーラ音楽ホール 様

ステージフロント補助スピーカーNEXO「ID24」(ステージ下に設置)

サーラ音楽ホール 様

後部座席、バルコニー用補助スピーカーNEXO「ID24」

サーラ音楽ホール 様

アンプ室に設置されたNEXO パワードTDコントローラー「NXAMP MK2シリーズ」

● 調整卓はヤマハのデジタルミキシングコンソール「QL5」を導入いただきましたが、音響システムについての使い勝手はいかがでしょうか。

岩崎氏:
調整卓は乗り込みPAの方も使われますが、「QL5」は音響エンジニアであれば、どなたでも使いこなせます。また舞台袖、客席などにデジタルオーディオネットワークのDanteのコネクターを準備していますので、催し物にあわせてフレキシブルに使いこなすことができます。舞台袖にも簡易操作用に「QL1」を備え、催し物の音声の記録もデジタルデータですぐにお客さまにお渡しできます。

サーラ音楽ホール 様

音響調整室

サーラ音楽ホール 様

音響調整室に導入されたデジタルミキシングコンソールヤマハ「QL5」

サーラ音楽ホール 様

舞台袖に設置されたデジタルミキシングコンソールヤマハ「QL1」

今後80年間の運用される「サーラ音楽ホール」を
音響面から支えるヤマハサウンドシステム

● ここからは音響機器のシステム設計や施工に関わったヤマハサウンドシステムのメンバーも参加させていただきます。システムを設計した髙橋さんは、「サーラ音楽ホール」でどんな点にこだわりましたか。

髙橋:
音響システム自体はシンプルでしたが、乗り込みのPAの方が操作をしやすくするように、HYFAXのマトリクスコントローラー「LDM1」を導入しました。音響調整室の「QL5」や舞台袖の「QL1」を経由せずにスピーカーを鳴らすことができます。また音響調整室から離れたアンプ室のパワーアンプの状態をモニターできるように、HYFAXのデータロガーシステム「DL3 System」を導入しました。「DL3 System」ではパワーアンプ架内の温度、電源、出力状況、そしてスピーカーのインピーダンスを確認することができ、状況のログが残せます。また、各スピーカーを高精度に音響調整をするイコライザーとしてHYFAXのアコースティックメジャーメント/EQコントローラー「AMQ3」を使用しています。プロセニアムスピーカーやサイドスピーカーといったメイン系スピーカーと補助スピーカーの音質を合わせる調整に「AMQ3」を使用しました。響きの豊かなホールで明瞭な拡声ができるよう補助スピーカーを数多く設置していますが、この存在を観客のみなさんが意識せずに楽しんでいただけるように設計しました。

サーラ音楽ホール 様

ヤマハサウンドシステム株式会社 設計部 システム設計課 髙橋 杏奈

サーラ音楽ホール 様

マトリックスコントローラーHYFAX「LDM1」

サーラ音楽ホール 様

データロガーシステムHYFAX「DL3 System」

サーラ音楽ホール 様

アコースティックメジャーメント/EQプロセッサーHYFAX「LAP4S-AMQ3」(ラック上段)

● 村上さんは担当としては現場監督的な立場だったのでしょうか。

村上:
はい。施工管理を行いました。「サーラ音楽ホール」ではヤマハサウンドシステムが舞台設備の元請となり、舞台機構設備、舞台照明設備の工事を統括しました。

サーラ音楽ホール 様

ヤマハサウンドシステム株式会社 技術部 名古屋 技術課 村上 大樹

● 音響が舞台設備全体を統括したのですね。

村上:
私は初めての経験でしたのでいい勉強になりました。主な仕事の内容は工事の進行の調整ですが、スケジュールでは舞台照明、舞台機構と建築工事との取り合いする部分が多く、そこの調整が大変でしたね。特に舞台機構は扱うものが大きく重量もありますので、建築とのやりとり、安全面への配慮などに神経を使いました。結果的には常にホール全体を見ていたので建築工事の方とも話がしやすく、舞台設備の施工もスムーズに行えました。

● 川島さんはいかがでしたか。

川島:
手前味噌ではありますが、「サーラ音楽ホール」はまずホールの建築音響としては弊社の親会社であるヤマハ株式会社のホール設計の部署がコンサルティングし、建築音響的にいい響きを作りました。そして電気音響を弊社が担当し、ホールの美しい響きに負けないしっかりしたものを作りました。その結果、ヤマハの本拠地である浜松に、響きも音響もいいホールをお納めすることができてよかったな、と思っています。

サーラ音楽ホール 様

ヤマハサウンドシステム株式会社 営業部 名古屋営業所 川島 洋次郎

● ホールのみなさまから見て、ヤマハサウンドシステムの働きぶりはいかがでしょうか。

宗田氏:
ちょっとしたトラブルがあると、すぐに音響のスタッフを通じてヤマハサウンドシステムさんにご相談するのですが、あまりにも対応が迅速なので、気づかないうちに解決している、ということが多々あります。えっ、ホールが自然治癒したのかなって思うぐらい(笑)。しかも無駄に速いのではなく、スケジュールを見て、このタイミングで来てこれをやれば大丈夫ですねと、全体を見てうまくやってくださっています。

岩崎氏:
オープンからの1年は音響機器のポテンシャルを探りながらの1年でしたので、ヤマハサウンドシステムさんの手厚いサポートは、オペレーションする我々としても大変心強かったです。

村木館長:
この「サーラ音楽ホール」は80年以上の運用を想定しています。ほかの施設はだいたい40年経つと大規模修繕を行うか運用を中止するかの検討に入りますが、この「サーラ音楽ホール」ではこの先、世紀をまたいでの運用を見越しています。ですから今後の保守は非常に重要です。保守をお願いしているヤマハサウンドシステムさんとも長い付き合いになりますから、今後も末永く支えていただきたいと思います。

サーラ音楽ホール 様

「アイディア・チャレンジ事業」の創設で、
市民の創造的な文化活動を支援

● 「サーラ音楽ホール」はコロナ禍での開館となりましたが、現在の状況はいかがでしょうか。

村木館長:
まだまだコロナ禍ではありますが、施設の稼動はおかげさまで上がってきており100%に近い状態になってきました。

サーラ音楽ホール 様

宗田氏:
コロナ禍で収容人数に制限があった中で、「サーラ音楽ホール」は広さが十分あり、1階と2階を完全に分ける運用ができた点と配信の設備も整っていた点を活かすことで、コロナ禍の中でもある程度催事を行うことができました。

● 今後の「サーラ音楽ホール」についてのお話をきかせてください。

村木館長:
最初にも申しましたが、できるだけホールの敷居を下げて、音楽に親しむ趣味層を増やしていきたいと思っており、その一環として2021年に「アイディア・チャレンジ事業」を立ち上げました。この助成制度はホール側からの提案ではなく、ホールを使う側の方々の「○○がしたい!」という思いを手助けするものです。具体的にはこのホールを活性化する、賑やかにしていくアイデアを募集し、ホールの職員といっしょに企画会議を重ねて、ホールの主催事業として実現に向けて動いていきます。助成は通常年度単位で締め切られ、発表を行いますが「アイディア・チャレンジ事業」では年度単位では実現が難しそうなものであっても、2年、3年かけて取り組むことができます。また単独ではできないような催しでも、ホール側と一緒にやることで実現可能になるかもしれません。その他にも「サーラ音楽ホール」がNPO法人浜松生涯学習音楽協議会と協働で育成している小学生有志による吹奏楽団「 浜松ジュニアブラス 外部サイト 」の育成事業なども積極的に行っています。こうした活動を通じ、「サーラ音楽ホール」が、市民の方々の創造性を育む場、そして創造的な文化活動の中心となるようにしていきたいと思います。

サーラ音楽ホール 様

● 本日はご多忙中ありがとうございました。

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