劇場・ホールの音響ケーブル入門
音響で使うケーブルって、種類が多いですよね。覚えるのに苦労した人、している人も多いと思います。
劇場やホールは、コンサートや演劇、講演会などさまざまな演目を行い、出す音もさまざま。そのため、マイク、ミキサー、プロセッサー、パワーアンプといった音響機器を多種多様のケーブルでつなぎ合っています。ケーブルだけに、頭がこんがらがってしまいそう・・・。
今回はホールの音響調整室を見回して、どんなケーブルが使われているか探してみましょう。
目次
音響調整室で見かけるケーブル
マイクケーブル
フォンケーブル
RCAケーブル
AES/EBU デジタルケーブル
LANケーブル
スピーカーケーブル
陰で活躍するケーブル
ユーロブロックケーブル
光ファイバーケーブル
ラック内のケーブルの集合場所!
まとめ
音響調整室で見かけるケーブル
マイクケーブル
特徴
コネクター形状:丸いコネクターに3本のピンがある。XLRやキャノンと呼ばれる。オスとメスがある。
接続方式 :バランス接続(ノイズに強い)
伝送する信号 :アナログ音声
このページを訪れる人であれば、見たことのある人がほとんどかもしれません。劇場でも、ライブハウスでも、音響の世界で欠かせないといっても過言ではないのが、マイクケーブルです。マイクケーブルは、マイクからミキサーへの接続、DIや楽器用アンプからミキサーへの接続などに使われます。「バランス接続」と呼ばれる方式を採用していて、アナログケーブルの中ではノイズに強く、長距離でも音質が劣化しにくい特徴があります。
音響調整室に入ってまず目に入る大きな音響ラックのパッチ盤にも、XLRコネクターがズラリ。パッチ盤のコネクターは、ホール内各所にあるコンセント盤や音響機器とつながっています。それらと音をやりとりしたり、音の経路を切り替えたりするのに使うのが、「マイクパッチケーブル」です。マイクパッチケーブルは、1~3mくらいの短いマイクケーブルで、パッチ盤にある音の出口と入口をつなぎます。
パッチ盤とパッチケーブル
ミキサーの背面
フォンケーブル
TSフォンプラグ
TRSフォンプラグ
特徴
コネクター形状:細長い棒状の「フォンプラグ」
TSフォン: 黒い線(絶縁部)が1本。モノラルタイプともいう。
TRSフォン: 黒い線(絶縁部)が2本。ステレオタイプともいう。
接続方式 :主にアンバランス接続(短距離向き)。TRSフォンはバランス接続もできる。
伝送する信号 :アナログ音声
両側に棒状の「フォンプラグ」がついたケーブルです。プラグの部分に1本線が入っている「TSフォン」ケーブルと、2本線がある「TRSフォン」ケーブルがあります。
TSフォンプラグのケーブルはエレキギターやベース、キーボードなどの楽器からミキサーへつなぐときや、エフェクターをつなぐときなど、モノラル音声の伝送に使います。マイクケーブルのバランス伝送に対してこちらは「アンバランス伝送」を採用していて、長い距離で使うとノイズが入りやすいので注意が必要です。
一方TRSフォンプラグのケーブルはステレオ音声の伝送ができるため、ヘッドフォンでよく見かけます。また、カラオケ機器などではマイクの接続にTRSフォンのケーブルを使用することもあります。この場合、ステレオではなくモノラル音声を「バランス接続」するケーブルになります。全く同じ構造のケーブルでも、接続する機器によって使われ方が異なるおもしろい例です。
RCAケーブル
特徴
コネクター形状:筒状のコネクターの中心に1本のピンがある。RCAコネクターやピンコネクターという。
用途ごとに色が区別されている。
接続方式 :アンバランス接続(短距離向き)
伝送する信号 :アナログ音声、映像、デジタル音声(S/PDIF)など
家庭用オーディオ機器やビデオとテレビの接続などでもおなじみのケーブルです。赤と白でペアになっているのを見たことがあるのではないでしょうか。
音響設備ではCDプレーヤーやメモリープレーヤーなど録音再生機器の接続で使用することがあります。「アンバランス接続」で、短い距離で使用します。このRCAケーブルは音声や映像などさまざまな用途で使用されていて、プラグの色で用途を区別しています。おなじみの赤と白はアナログ音声のLとR、橙のプラグはデジタル音声信号のS/PDIF規格で使用します。
AES/EBU デジタルケーブル
特徴
コネクター形状:マイクケーブルと同じXLRコネクター
接続方式 :バランス接続
伝送する信号 :デジタル音声(AES/EBU)
AES/EBUは、「Audio Engineering Society(AES)」と「European Broadcasting Union(EBU)」が共同で制定したデジタルオーディオの伝送規格です。この規格は、1本のケーブルで2chのデジタル信号を伝送します。デジタル信号なのでノイズが少なく、アナログケーブルよりも安定した長距離伝送ができます。
両端のコネクターはマイクケーブルと同じXLRですが、ケーブルの仕様は異なります。アナログ信号よりも周波数の高いデジタル信号を安定して伝送するため、ケーブルのインピーダンスが110Ωと決まっています。見た目が似ているからといってマイクケーブルを代用すると正常な伝送ができないのでやめましょう。
AES/EBUデジタルケーブル。110Ωと書いてある
LANケーブル
RJ45
etherCON®
特徴
コネクター形状:RJ45 または etherCON®
伝送する信号 :デジタル音声、デジタル制御
LANケーブルは、デジタルオーディオ信号を伝送する「オーディオネットワーク」の構築や、機器のリモートコントロールに使うケーブルです。オーディオネットワークの規格には、Dante, AVB, AES67などがあります。1本のケーブルで多くのチャンネルの音声を伝送できるので、アナログケーブルと比べ省配線できます。また、長距離伝送が得意で、ギガビットイーサネットでは最大100m伝送できます。
一般に音響で使うLANケーブルは、「カテゴリー5eまたは6以上」「STP(Sealed Twisted Pair)」が推奨されています。カテゴリーは5, 5e, 6, 6Aなどがあり、通信速度や通信周波数帯によって分けられています。STPはシールド処理が施されているという意味で、ノイズ対策に効果的です。反対にシールド処理されていないものはUTP(Unsealed Twisted Pair)といいます。
LANケーブルの両端はRJ45コネクターが一般的ですが、抜け止め機能がついたetherCON®(イーサコン)と呼ばれるコネクターもあります。丸いコネクターで囲われた形をしていて丈夫なため、舞台上や仮設のシステムに適しています。
スピーカーケーブル
特徴
コネクター形状:スピコン、NL4と呼ばれる円筒状のコネクター。オス-オスが一般的。
伝送する信号 :パワーアンプ出力音声
スピーカーケーブル、こちらも音響の世界では欠かせないものですね。パワーアンプとスピーカーを繋ぐものです。スピーカーケーブルをパワーアンプやスピーカーに挿すときは、コネクターと挿し込み口の凹凸をあわせて挿し込み、そのあと右に回してロックします。うまくロックできていないと音が出ないので注意しましょう。
NL4コネクターの中を開けてみると、赤白合わせて4本の線があります。これは4心ケーブルと呼ばれ、赤っぽい線は1+と2+、白っぽい線は1-と2-です。1±で1系統、2±で1系統の音を送るので、1本の4心スピーカーケーブルでは2系統分の音を伝送できます。これは、例えばフルレンジスピーカーとサブウーファーを同じ場所に置いたときに、アンプからスピーカーまでの長い距離を1本のケーブルで配線できるので便利です。
もちろんスピーカーケーブル1本で1系統の音を送ったほうがわかりやすい場合も多いですので、そのようなときには1+/1-や2+/2-のどちらかだけに接続して1系統とする方法をとります。
音響調整室やアンプ室のパッチ盤には、XLRコネクターと同様にNL4のコネクターがずらりと並んでいます。パワーアンプの出口と、設備スピーカーの入口がパッチ盤まで伸びてきて集合しているイメージです。パッチ盤に並ぶコネクター同士は、短めのスピーカーパッチケーブルで繋ぎます。
陰で活躍するケーブル
ここからは音響ラックの中を覗いてみましょう。あまり見ない形のコネクターがついた設備特有のケーブルが見えてきます。
ユーロブロックケーブル
おもちゃのブロックのような、特徴的なユーロブロックコネクターのついたケーブルです。
ユーロブロックケーブルは、ラックにマウントした音響機器の背面やスピーカーの入力端子など、さまざまな用途に使用されます。上の写真ではパワーアンプのアナログ入力の端子として使用しています。接続する線の線種や本数によって、コネクターの大きさが異なります。狭いスペースに多くのケーブルを接続できるので、効率よく配線できるメリットがあります。
一方で、頻繁に抜き差しすることを想定していないので、XLRコネクターやスピコンと比べるとやや耐久性に劣ります。ユーロブロックケーブルは、ケーブルの中の1本1本の線をそれぞれユーロブロックコネクターの差し込み口に入れ、ネジで留める構造をしています。そのためネジが緩んでいたり、留めたケーブルに力が加わって動いたりすると、接触不良が起こることがあるので注意が必要です。ユーロブロックコネクターの接続を頻繁に繋ぎかえたい場合は、片方がユーロブロック、もう片方がXLRなどの変換ケーブルを用意して、XLRから先を繋ぎ変えると、ユーロブロック側に負荷がかかりにくくなります。
光ファイバーケーブル
光ファイバーケーブルは、音響に関するケーブルの中で最も長距離伝送が得意なものです。音響調整室から舞台袖など遠くにあるLANスイッチ同士をつないで、広い範囲のネットワークを構築できます。
光ファイバーケーブルには「MMF(マルチモードファイバー)」と「SMF(シングルモードファイバー)」の2種類の規格があり、芯線の太さ(コア径)と伝送できる最長距離が異なります。舞台音響設備ではパッチ盤を使用してケーブル同士を接続して使うこともあり、比較的接続に有利なMMFを多く使用しています。SMFは長距離に強いです。どちらのケーブルも折れたり汚れたりすると信号を伝送できないといった繊細な面もあります。
長距離に強い一方で、芯線が細く折れやすい、折れたり汚れたりすると信号を伝送できないといった繊細な面もあります。そのため音響ラックの中に収めるときは、誤って触れてしまわないようラックの奥のほうにまとめておくと安心です。
また、光ファイバーケーブルの普及に伴い、仮設現場でも使える頑丈でしなやかなものも登場しています。opticalCON®(オプティカルコン)と呼ばれ、LANケーブルのetherCON®と同じように抜け止め機能付きの丸いコネクターで囲われた形をしています。

opticalCON®ケーブル
ラック内のケーブルの集合場所!
最後に音響ラックの一番下。銘板に「端子部」と書いてある蓋を開けてみましょう。
端子部は、音響ラックの中の機器に繋がるたくさんのケーブルと、壁や床の中を通したケーブルが繋がる場所です。見慣れない端子で何のケーブルかわかりにくいかもしれませんが、パワーアンプ出力や、スピーカーのON/OFFを制御するためのケーブルなどが集合して、別のラックやスピーカーへと続いています。普段はなかなか見ない部分ですが、音を出すために必要なケーブルが集合する場所になっています。
まとめ
音響で使うケーブルはとてもいろいろなものがあります。それぞれの用途や形を理解して、適切なケーブルを使いましょう。スムーズなセッティングやトラブル防止にきっと役立ちます。
今回取り上げられなかったケーブルもたくさんあります。取り上げたケーブルについても、構造や通信の仕組みなど、詳しく語りだしたらきりがないほどです。
ぜひ身の回りのケーブルを手にとって、何に使うものか、どんな作りをしているのかひとつずつ紐解いてみてください!
etherCON®、opticalCON®は、NEUTRIK AGの登録商標です。
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