「ソニックシティ」は大小ホール・国際会議室・展示場・市民ホール・大小会議室群・都市型ホテルで構成される総合コンベンション施設。JR大宮駅から徒歩3分の好立地に位置します。「ソニックシティホール」は、2,505席の大ホール、496席の小ホール、国際会議室を備え、埼玉県内屈指の集客数を誇ります。2022年に終了した大規模改修では大ホールの音響システムの設計・施工を、ヤマハサウンドシステムが担当しました。改修の内容や音響の仕上がり、使い勝手などについて、公益財団法人埼玉県産業文化センター 総務企画部 部長 川村 正俊 氏、同 施設担当部長 横山 勇斗氏、同 施設管理課 課長 若林 久義 氏、および音響を担当する株式会社シグマコミュニケーションズ 統括チーフ 音響 斉藤 誠 氏、同 長尾 修 氏、同 大澤 彩香 氏にお話をうかがいました。
(前列左より)
公益財団法人埼玉県産業文化センター 総務企画部 施設管理課 課長 若林 久義 氏
公益財団法人埼玉県産業文化センター 総務企画部 施設担当部長 横山 勇斗 氏
公益財団法人埼玉県産業文化センター 総務企画部 部長 川村 正俊 氏
株式会社シグマコミュニケーションズ 統括チーフ 音響 斉藤 誠 氏
株式会社シグマコミュニケーションズ 音響 長尾 修 氏
株式会社シグマコミュニケーションズ 音響 大澤 彩香 氏
(後列左より)
ヤマハサウンドシステム株式会社 品質管理部 検査課 伊賀川 淳
同 営業部 東京営業所 営業課 富士本 優
同 営業部 東京営業所 保守課 林 拓也
多目的な用途に対応する2,505席の大ホール、496席の小ホール、180席の国際会議室を擁する「ソニックシティホール」
● 「ソニックシティホール」は、どのような施設なのでしょうか。
川村氏:
「ソニックシティ」は以前、「埼玉県商工会館」があった場所に建てられた総合コンベンション施設です。設立の目的は産業の振興や文化の振興、国際交流の促進でオープンは1988年、今年で37年目を迎えます。そして「ソニックシティホール」は、「ソニックシティ」を構成するホールであり2,505席の大ホールと、496席の小ホールに加え、180席の国際会議室を備えています。
ソニックシティホール大ホール 客席数:2,505席(車椅子10席含む)
ソニックシティホール小ホール 客席数:496席(車椅子4席含む)
● 本日は、主に大ホールのお話をうかがいます。大ホールでは、どのような公演が行われるのでしょうか。
川村氏:
大ホールは多目的なホールとして作られました。埼玉県内で収容人数2,500席を擁する施設は他にないので、さまざまな公演が行われます。全国ツアーのような大規模なものを含めてポピュラーコンサートが4、5割ほど。あとは我々の主催事業で日本フィルハーモニー交響楽団と提携したクラシックの定期演奏会を開催しています。定期演奏会は2000年から年に6回開催し、2024年7月の公演で144回目となります。
公益財団法人埼玉県産業文化センター 総務企画部 部長 川村 正俊 氏
● クラシックの他には、どのような主催イベントがあるのですか。
川村氏:
「ソニックダンスステージ」という埼玉県内の高校生を対象としたダンスイベントを主催しています。大ホールの舞台で生バンドをバックに高校生に踊ってもらおうという企画で、2024年の1月に3回目を実施し、県内の高校のダンス部15チームが出演しました。4回目は2025年の2月に開催予定で、すでに募集を開始しています。
● この大きな舞台で生バンドの演奏で踊ることができるのは、高校生も喜びそうですね。
川村氏:
そうですね。特にコロナ禍で発表の場が少なくなったこともあり、高校生のみなさんに発表の機会をつくりたいという思いから、当財団のダンスが好きな職員が企画しました。
天井や壁面を開閉することで残響を可変し、
講演から音楽コンサートまで幅広い用途に対応
● ポップスあり、クラシックあり、ダンスありと多目的な催し物を行われるホールですが、音響面や施設面で工夫していることはありますか。
斉藤氏:
音響面でいうと残響可変装置を積極的に活用しています。天井の一部を開閉するものと壁面の裏側にあるカーテンを開閉することで客席内の響きを変化させることができます。たとえば、講演会などで響きを抑えたいときは、壁面裏のカーテンを閉じて天井の開閉部分を開けます。逆にクラシック演奏で響きがほしいときは、ステージ上は反響板をセットし天井の開閉部分を閉め、壁面裏のカーテンを開けるようにしています。大ホールの残響時間は響きを抑えた状態で約1.5秒、いちばん響かせた状態で約1.8秒です。
株式会社シグマコミュニケーションズ 統括チーフ 音響 斉藤 誠 氏
開閉可能な天井 開くと吸音し反響が少なくなる
壁面の反響を抑える厚いカーテン
● 催し物ごとに残響可変装置で響きを変えているのですか。
斉藤氏:
基本は話者の声が明瞭に聞こえるように響きを抑え気味にしています。貸館の場合はお客様次第ですね。うちの残響可変装置をわかっていらっしゃるオペレーターさんからは、事前に打ち合わせで「後ろのカーテンを閉めてください」とご要望をいただくことがあるので、その都度対応します。
大規模な天井改修のタイミングで音響機器も全面的に改修
● このたびの改修についてうかがいます。まず改修の経緯を教えてください。
川村氏:
一番の理由は、東日本大震災後の建築基準の見直しです。天井を作り直すため約1年の大規模な工事となり、既存のスピーカーも取り外すことになるので、併せて老朽化した音響やその他の設備も改修することになりました。
● 音響設備の改修にあたり、どのような点が問題だったのでしょうか。
斉藤氏:
これまではプロセニアムスピーカーの開口部がやや狭く、2階席の後方にスピーカーの音がどうしても当たらないという問題がありました。プロセニアムスピーカーの開口を大きくするような建築的な改修が伴うため、今までの改修では改善できなかった点です。今回は天井を作りなおす建築を含んだ大規模改修でしたので、開口部を縦に広げました。これにより、スピーカーの角度も調整できるようになりましたのでその問題を解消できました。
● スピーカー以外の機材の更新についても教えてください。
斉藤氏:
音響設備は全て更新しました。音響調整卓は大ホール、小ホールともにヤマハ「RIVAGE PM5」を導入しました。改修時期がコロナ禍と重なっていたのでヤマハのデモルームで実機を触りながら、じっくり検討して決めました。
大ホール音響調整室のヤマハ デジタルミキシングコンソール「RIVAGE PM5」
小ホール音響調整室の「RIVAGE PM5」
● 「RIVAGE PM5」を実際に使ってみて、音の印象はいかがですか。
大澤氏:
音がとてもクリアになりました。抽象的な言い方ですが、音の厚みや色の濃さが、以前より出ている印象です。薄い音じゃなくて身の詰まった音、というイメージです。
株式会社シグマコミュニケーションズ 音響 大澤 彩香 氏
● 操作性はいかがですか。
長尾氏:
「RIVAGE PM5」は液晶の操作パネルが3枚もあるので、とても使いやすいです。一つの画面で見たいところを確認しながら、別のパネルで他のパラメーターが操作できます。催事は毎回シーンをストアしておいて、同じ催事の時にはリコールして使っています。
株式会社シグマコミュニケーションズ 音響 長尾 修 氏
● 「RIVAGE PM5」をiPadでリモート操作できるのは、便利ですか。
大澤氏:
とても便利です。以前の卓もノートPCからリモート操作できたのですが、操作内容は限られていました。「RIVAGE PM5」のリモートはコンプやゲートなどのエフェクトも感覚的に触れるようになったので、客席で音を聴きながら調節をすることが簡単になりました。
● HYFAXシリーズのデータロガーシステム「DL3」、マトリクスコントローラー「LDM1」、電動吊マイク装置「MHN1」も導入されましたが、それらの使い勝手はいかがですか。
長尾氏:
データロガーシステムがあることでメーター類が一目で把握できて見やすくなりました。電動吊マイク装置は平行移動できる点が便利です。たとえばピアノは必ずしもステージのセンターに設置するとは限らないので、吊マイクの位置をきめ細やかに調整できます。
LDM1はIN/OUTの状況が同時に確認できるメーターやパッチ画面が大変見やすく、出力先を増設する際には直感的なパッチ変更を行うことができるようになりました。
音響調整室に設置したHYFAXシリーズ データロガーシステム「DL3 System」とマトリクスコントローラー「LDM1」
● 改修後にお客様から反響はありましたか。
川村氏:
お客様のアンケートでは「前よりだいぶ音が良くなった」という意見が圧倒的に多いです。
(写真左から)川村氏 斉藤氏 長尾氏 大澤氏
● 若林さんは、「ソニックシティホール」の改修工事中はどのような業務をされていたのですか。
若林氏:
施設管理業務として、各委託業者さんとの折衝を主に担当しました。
また、私は改修期間中ずっと工事に立ち会っていました。ヤマハサウンドシステムの方々は内部の目につきにくい部分を担当されていましたが、スケジュール通りきちんと進めてくださっていたのが印象的でした。
公益財団法人埼玉県産業文化センター 総合企画部 施設管理課 課長 若林 久義 氏
● 横山さんは、「ソニックシティホール」の改修工事中はどのような業務をされていたのでしょうか。
横山氏:
私は、委託業者さんとの契約業務や修繕を担当する課におりますが、この4月から「ソニックシティ」に赴任したばかりで、工事を見ていません。これから深く関わっていきます。
公益財団法人埼玉県産業文化センター 総務企画部 施設担当部長 横山 勇斗 氏
● そうでしたか。これから活躍されるのですね。
シミュレーションを繰り返すだけでなく設置位置、角度、ディレイタイムを緻密に調整し最良の音響を実現
● ここからは、改修工事に携わったヤマハサウンドシステムのメンバーにも話を聞きます。まず、現場担当の神谷さんは、今回の工事で特に工夫した点やこだわった点はありますか。
神谷:
私は特にサイドスピーカーで2階席奥も含めて音量と音質をきちんと届くようスピーカー機種や台数、取付角度など工夫をしました。サイドスピーカーは建築スピーカー室にうまく納めないといけませんので、現地で寸法を計って、スピーカーシミュレーションをしてカット&トライをして、今のシステムを作り上げました。さきほど「音が良くなった」とのご意見を聞き、うまくできたとほっとしています。
● 音響調整を担当した伊賀川さんは、今回の工事で工夫した点はありますか。
伊賀川:
私は神谷がシミュレーションしたスピーカーデザインを実際にホールの現場で調整し、「いい音」に仕上げる役割でした。そのためまずは現場で足場に登ってスピーカー位置や角度がシミュレーション通り取り付けられているか、すべての場所を確認しました。そして音響調整では、特に2階席に音が届きにくい点を改善できるようウォールスピーカーを部分的に使い、どの席でもスピーチがクリアに聴こえるようにしました。その結果、お客様から「落語の声がよく聴こえるようになった」という反響をいただき、大変うれしかったです。やはり現場は大事で、細かい部分の仕上がりに妥協してはいけないと思いました。
ヤマハサウンドシステム株式会社 品質管理部 検査課 伊賀川 淳
サイドスピーカー
ウォールスピーカー
● 営業担当の富士本さんは、「ソニックシティホール」とどのように関わったのでしょうか。
富士本:
「ソニックシティホール」は、当社の前身である不二音響の時代から関わりが深く、大切な絆を守るために良いプレッシャーの中で日々やらせていただいています。今回の現場は、JV(ジョイント・ベンチャー)としての施工でしたので会則作りや会議などJVでの仕事の進め方などについて学ばせていただきました。
ヤマハサウンドシステム株式会社 営業部 首都圏営業所 営業課 富士本 優
● ヤマハサウンドシステムの働きぶりや今後の期待について、一言ずつお願いします。
大澤氏:
改修が終わった今でも音響調整卓の操作やリモートコントロールするiPadのアプリ操作などでマニュアルを読んでも理解しにくいことを、保守に来てくださった時に教えていただいています。iPadのアプリで見つからなかった機能も「社内に相談します」と、こちらの要望を吸い上げて製品開発につなげてくださっているように感じました。たとえば、ちょっと前にヤマハサウンドシステムの方の前で「iPadでリバーブのラックが触れないんですよね」とつぶやいたのですが、そうしたら次のアップデートでは操作できるようになっていました。ヤマハさんはこういったソフトの対応も素早いので現場はとても助かっています。
長尾氏:
改修工事中は隣のビルに控えていたのですが、何かあればすぐに連絡しあって、顔をあわせながら相談できたのですごく助かりました。たとえば発注図面には書かれていないパッチ機構や配線具合といったところまで、こちらの「ああしたい、こうしたい」をきいていただきました。今もよくメールや電話でやり取りしているのですが、レスポンスも早く、すぐに対応してくださいます。今後もこのリレーションを維持してもらえると助かります。
斉藤氏:
ヤマハサウンドシステムの方々とは、「ソニックシティホール」ができた当初から37年間、ずっと関わっていただいています。本当に何でも話しやすい方たちばかりで、何かあれば相談して、すぐ対応していただけるので、本当に助かっています。もう本当に現状維持で、このまま末永いお付き合いが続いてくれたらと思います。
横山氏:
今日お話をうかがって、現場の方々にこんなに高く評価され、愛されている会社って、そんなにあるわけじゃないと思っています。連携も緊密に取れていますし、管理側からしたら、こんなに心強いことはありません。引き続きお付き合いいただければと思います。
若林氏:
工事中も、ヤマハサウンドシステムさんが当社や他の業者さんとやり取りするのを見ていました。本当に信頼のおけるパートナーです。
● 最後に、今後「ソニックシティホール」で企画されていることがあれば教えてください。
川村氏:
2025年10月にオペラの自主事業公演を予定しており、現在キャストを募集しています。 この作品は私たちとしては初めて台本制作からすべて自分たちで行います。「世界初演」と銘打った「平家物語」のオペラです。これまでにない世界観、仕掛けを用意した公演にしたいと思っています。ただオペラはどんなに頑張ってもチケット販売だけで黒字にはできないと言われている演目です。助成・寄付は大歓迎ですので、多くのみなさまに応援していただけたらと思います。
● 楽しみにしています。本日はご多忙中ありがとうございました。
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