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丹波篠山市立田園交響ホール 様 / 兵庫県
Japan / Hyogo Sep. 2026
丹波篠山市立田園交響ホール 様

兵庫県丹波篠山市の篠山城跡近くに佇む「丹波篠山市立田園交響ホール」は、美しい生音の豊かな響きを特長とするホールです。舞台・照明・音響などのスタッフを市民ボランティアが担うほか、隔年で市民参加型ミュージカルを開催するなど、地域と一体となった文化活動を続けています。ヤマハサウンドシステムは、同館の音響システムの改修工事を担当しました。今回のシステム改修のコンセプトや導入後の運用について、同館館長の酒井 直隆 氏と音響担当専門員の小林 純一 氏にお話をうかがいました。

丹波篠山市立田園交響ホール 様

丹波篠山市立田園交響ホール
館長 酒井 直隆 氏(前列右)
同 専門員 小林 純一 氏(前列左)

ヤマハサウンドシステム株式会社
大阪営業所 保守課 東宝 秀樹(後列右)
同 技術部 名古屋技術課 村上 大樹(後列中央)
同 設計部 システム設計1課 三浦 麻奈美(後列左)

地域の期待に応えて誕生した文化拠点「丹波篠山市立田園交響ホール」

● 「丹波篠山市立田園交響ホール」は、どのような施設なのでしょうか。

酒井氏:
もともと音楽や芸術活動が盛んだったこの地域では、市民からホール建設を望む声が強くあがっていました。その願いが形になり、1988年、地域の文化芸術と福祉を育む拠点として兵庫県によって建設されたのが、このホールです。最初は「たんば田園交響ホール」としてオープンしましたが、平成22年の大規模リニューアルを経て丹波篠山市に移譲され、現在は「丹波篠山市立田園交響ホール」として地域の皆さんに親しまれています。

丹波篠山市立田園交響ホール 館長 酒井 直隆 氏

丹波篠山市立田園交響ホール 館長 酒井 直隆 氏

酒井氏:
敷地面積は約7,000m2、建築面積は約3,000m2で、鉄筋コンクリート2階建て、一部3階建ての施設です。このホールは音楽用途を重視して設計されているのが特長で、大ホールには車椅子4席を含む約800席の客席を備えています。さらに奥には90人の立見スペースがあり、前方4列の客席は取り外してオーケストラピットとして利用することもできるため、多様な舞台演出に対応可能です。

丹波篠山市立田園交響ホール 外観

丹波篠山市立田園交響ホール 外観

丹波篠山市立田園交響ホール ホール

丹波篠山市立田園交響ホール ホール

市民と創り上げる「ステージオペレータークラブ」と
2001年から続く市民ミュージカル

● このホールの理念について教えてください。

酒井氏:
「田園交響ホール」の基本理念は「市民協働による文化芸術の向上と夢ある文化事業の創造」です。そこには「交流」「感動」「創造」という3本の柱があります。「文化芸術の鑑賞や発表の場として、市民みんなが『感動』できる拠点」「市民の参画と協働で、個性ある文化を『創造』できる拠点」、そして「文化芸術を通じて、人と人が集い『交流』できる拠点」という3つの基本方針が、事業のベースとなっています。

● 「丹波篠山市立田園交響ホール」ならではの取り組みについて教えてください。

酒井氏:
代表的な催しは、隔年で開催している「丹波篠山市民ミュージカル」です。開館当初から開催しており、直近の第12弾『シンデレラ』は、3日間の全6回公演はいずれもほぼ満席となり、過去最多となる約4,000人の方が来館しました。出演者も過去最多となる107名で、小学校1年生から77歳までの市民が出演しています。

丹波篠山市民ミュージカル 第12弾 シンデレラ

● 長年続けられている市民ミュージカルの特長について教えてください。

酒井氏:
この市民ミュージカルの素晴らしさは、公募で集まった出演者全員がステージに立てることです。皆さん本当に熱心で、約半年間、多い時には週5日もの稽古を重ねて本番を迎えます。脚本や演出はプロをお招きしていますが、出演者だけでなく、舞台・音響・照明のオペレートやお客様受付・誘導などの運営スタッフに至るまで、「ステージオペレータークラブ」、「スタッフi」という市民ボランティアスタッフが担当します。市民がひとつになって創り上げるこの舞台は、まさに日本一の市民ミュージカルだと誇りを持っています。

丹波篠山市民ミュージカル 第12弾 シンデレラ
丹波篠山市民ミュージカル 第12弾 シンデレラ
丹波篠山市民ミュージカル 第12弾 シンデレラ
丹波篠山市民ミュージカル 第12弾 シンデレラ

丹波篠山市民ミュージカル 第12弾「シンデレラ」

● その「ステージオペレータークラブ」とはどのような組織ですか。

小林氏:
開館当初は、委託業者を常駐で雇うことが難しかったため、みんなで何とかしようという思いから立ち上がった活動を組織化したのが「ステージオペレータークラブ」です。出演するのは恥ずかしいけれど、裏方なら面白そうだという当時20代から50代までの有志約40名が集まりました。
この「ステージオペレータークラブ」の技術向上を支えているのが、「ステージオペレーター養成講座」です。当初は納入業者の方に指導をお願いしていましたが、現在では私たちホール職員が座学や現場で直接指導しています。講座修了後、舞台・照明・音響のどれを担当するかは本人の希望制なので、各部署とも「自分のところに来てほしい」と、それぞれ工夫を凝らしながら楽しく教えています。

丹波篠山市立田園交響ホール 専門員 小林 純一 氏

丹波篠山市立田園交響ホール 専門員 小林 純一 氏

● ボランティアスタッフに人気のある部署はどこですか。

小林氏:
まずは音響に惹かれて参加される方が多いですね。ただ、実際に現場に触れる中でそれぞれの魅力を発見し、「自分にはこちらが向いているかも」と照明や舞台へと進む方もいらっしゃいます。ボランティアスタッフの中には、ここでの経験を生かして舞台スタッフの道に進んだ若者もいます。音響分野では、これまで3人ほどがPA会社や音響会社に就職しました。貸館公演などの際に、プロの音響スタッフとしてこのホールに帰ってきてテキパキ仕事をしている姿を見ると、こちらも嬉しくなります。

世界的な演奏家からも高く評価される「建築音響」と、
明瞭性を追求した「電気音響」

● ここからは音響についておうかがいします。ホールの音響面での特長を教えてください。

小林氏:
このホールは非常に澄んだ綺麗な音で、しかも残響時間が1.6秒〜2.4秒と豊かな響きが特長です。地元の合唱団からも「歌声が綺麗に響き渡り、気持ちよく歌える」と好評をいただいています。自主事業として毎年お招きしているバイオリニストの古澤巌さんからは「国内外の数あるホールの中でも屈指の素晴らしい響き。毎年弾かせてほしい」とのお言葉をいただいています。また、兵庫県立芸術文化センターの芸術監督である指揮者の佐渡裕さんもこのホールの響きを気に入ってくださり、ユースオーケストラの合宿を行っています。

丹波篠山市立田園交響ホール

● 響きが豊かだと、その反面マイクを使用する際に苦労しませんか。

小林氏:
そうですね。マイクを使うとどうしても響きすぎる傾向があります。ですからヤマハサウンドシステムさんに相談しながら、できるだけ残響の回り込みを抑えられるスピーカーを選択したり、最新の技術を導入するなど、さまざまな対策を講じています。

田園交響ホールならでは「デュアルコンソール運用」

● 音響システムの更新は、どのように進めたのですか。

小林氏:
2001年の最初の音響システム更新では、当時発売されたばかりだったヤマハデジタルミキサーのフラッグシップモデル「PM1D」を導入しました。周囲の音響関係者からは「デジタル卓は時期尚早ではないか」「オーバースペックでは?」と驚かれたものです。確かに挑戦的な選択だったかもしれませんが、実際に使ってみると非常に素晴らしく、結果的に導入は大成功でした。
その後「PM1D」の導入から20年が経過して更新の時期を迎えたこと、そしてDanteなどのデジタル伝送技術が大幅に進化したこともあり、2021年、リリースから間もないヤマハ「RIVAGE PM3」と「RIVAGE PM5」の導入を決めました。

RIVAGE PM3を設置した音響調整室

「RIVAGE PM3」を設置した音響調整室

RIVAGE PM5

ホール内にFOHコンソールとして設置した「RIVAGE PM5」

● 「RIVAGE PM3」「RIVAGE PM5」の使い勝手はいかがですか。

小林氏:
20年間トラブルなく「PM1D」を使い続けてきましたので、正直なところ手放したくなかったんですが、実際に「RIVAGE PM3」や「RIVAGE PM5」を使ってみると、機能も音質も進化していて驚きました。さらに、筐体も大幅に小型・軽量化したことで、運搬や設置の労力が減りました。「PM1D」は移動も6人がかりでしたが、「RIVAGEシリーズ」なら2人で運べます。現場の負担軽減という意味でも大きなメリットでした。

● 「RIVAGE PM3」と「RIVAGE PM5」という構成ですが、どのように使い分けているのですか。

小林氏:
音響調整室に「RIVAGE PM3」、客席内のFOH位置に「RIVAGE PM5」を常設し、2台を連携させた「デュアルコンソール(2台体制)」で運用しています。例えば、落語やトークイベントなど入力数が少なくシンプルな催しは調整室の「RIVAGE PM3」で操作し、市民ミュージカルやバンド演奏などはFOHの「RIVAGE PM5」で操作しています。「RIVAGE」のデュアルコンソールは非常に恵まれた環境に見えますが、このホールならではの事情もあります。ボランティアスタッフがいたとしても、基本的に音響担当の職員は一人です。そこで、調整室とFOHの卓をリンクさせ、ホール内SR拡声と運営系拡声をワンマンで並行してコントロールできる体制を整えました。

● 音響システムの更新で、マイク使用時の課題だった明瞭性は改善しましたか。

小林氏:
はい。スピーカーをラインアレイに置き換えたことで明瞭性が向上し、前から後ろまで均一に聴こえるようになりました。また、音の分離の良さも「RIVAGEシリーズ」への更新で際立ちました。「PM1D」を導入したときもフェーダーを上げただけで音がきれいに分離して驚きましたが、「RIVAGE」はさらにすごいですね。

丹波篠山市立田園交響ホール 音響システム

● 音響システムが更新されたことで、お客様や出演者からなにか反響はありましたか。

小林氏:
お客様アンケートでは「音が素晴らしい」というお褒めの言葉を多くいただいています。演者のみなさまからも更新前との違和感を指摘されることなく、これまでの高い評判をしっかりと維持できていると感じています。

現場の課題解決を支える運営系機器の更新

● 周辺設備についてもうかがいます。電動吊マイク装置がHYFAXシリーズ「MHN1」に更新されました。使い勝手はいかがですか。

小林氏:
たいへん便利になり、助かっています。以前の電動吊マイク装置はダイヤル式で、細かな位置設定が難しく、操作に力が必要でした。今回導入した「MHN1」はタッチパネルに軽く触れるだけで、マイクをあらかじめ設定した位置へ正確に移動できます。昇降もスムーズで、微調整も簡単です。

電動吊マイク装置 MHN1

電動吊マイク装置「MHN1」

このホールは吊マイク装置の出番が非常に多いんです。ピアノ発表会では演奏を録音することがほとんどですし、講演会などで音声を録音する際にも、ラインに吊マイク装置で収音した会場の響きを少し加えることで、より自然な音に仕上げることができます。また、この吊マイク装置の音はエアモニターとしても活用しています。客席奥にエアモニター用のマイクがあるのですが、舞台から距離があるため、どうしても音の到達が遅れます。そのため催しによっては、吊マイク装置の音をエアモニターとして使っています。

● ワイヤレスインターカムも更新したそうですね。

小林氏:
ボランティアスタッフの皆さんは、それぞれの仕事などの都合があるので、リハーサルはAさん、本番はBさんが担当するという流動的な運用が日常的にあります。十分に引き継ぎができないまま本番を迎えることもあるため、スタッフ全員にワイヤレスインターカムを装着してもらい、どこにいてもすぐに指示が出せる状態にしています。今回導入したワイヤレスインターカムは4系統を個別に運用できるため、舞台・照明・音響とチャンネルが分けられ、非常に便利です。また、市販の充電式電池で8時間以上使用できるため、ランニングコストを大幅に抑えられる点も助かっています。

LaON Technologyのワイヤレスインターカムシステム

LaON Technologyのワイヤレスインターカムシステム

前例なき挑戦と、現場のビジョンを具現化する技術力

● ここからは、音響の更新に携わった、ヤマハサウンドシステムのスタッフに話を聞きます。設計を担当した三浦さんは、「田園交響ホール」の改修ではどんな点に力を入れましたか。

三浦:
田園交響ホール様の改修は第1期・第2期を通じて携わらせていただき、長期間にわたり担当いたしました。このプロジェクトにおける私自身の最大の挑戦は、「RIVAGE PM5」と「RIVAGE PM3」を組み合わせたデュアルコンソールのシステム設計でした。設計当時は「RIVAGE PM3」と「RIVAGE PM5」がリリースされて間もない時期であり、ヤマハサウンドシステムとして前例のないデュアルコンソールシステムでした。ひとつ設計をミスすればシステム全体に影響を及ぼす可能性がある中で、トラブルを絶対に起こさない伝送ルーティングを一から構築していったことは、設計者として非常に貴重な経験になりました。

ヤマハサウンドシステム株式会社 設計部 システム設計1課 三浦 麻奈美

ヤマハサウンドシステム株式会社 設計部 システム設計1課 三浦 麻奈美

● 施工管理を担当した村上さんは、どのような点にこだわりましたか。

村上:
普段の施工では、図面をもとに現場での使い勝手を想像しながら進めることが多いのですが、今回は小林さんから「こう運用したい」という明確な運用イメージを共有していただいたので、スムーズに施工を進めることができました。図面上では細かく指示されていないコネクター盤の設置位置についても、現場で動線を確認しながら、出演者やスタッフの動きを妨げないよう配置を工夫しています。

ヤマハサウンドシステム株式会社 技術部 名古屋技術課 村上 大樹

ヤマハサウンドシステム株式会社 技術部 名古屋技術課 村上 大樹

● 具体的に、今回の改修で運用が改善された例はありますか。

小林氏:
このホールでは開館当初から地元のピアノ発表会などで当日の演奏をライブ録音し、終演までにCDに焼いてお渡ししています。演奏前に「次は〇番、〇〇さんです」といった影アナウンスが入りますが、できればそのアナウンスを含めて録音してお渡ししたかったんです。以前は「影アナ入れます」と都度インターカムで連絡をもらい、そのタイミングで録音を開始していました。そこで今回の改修にあたり、舞台袖のキューボックスのボタン操作に連動して、音響卓前ランプが点灯する仕組みを作っていただきました。これにより、録音のタイミングを視覚的に把握できるようになり、より確実でスムーズな運用ができるようになりました。

音響側で録音タイミングを示すランプ

音響側で録音タイミングを示すランプ

● 保守点検を担当されている東宝さんは、「田園交響ホール」との関わりで大切にしていることはありますか。

東宝:
田園交響ホール様とは、「PM1D」導入時から長くお付き合いをさせていただいています。更新タイミングが「RIVAGE PM3」「RIVAGE PM5」がリリースされて間もなかったので、私自身にとっても初めて扱う機材だったこともあり、最初は緊張感を持って臨みました。そんな中で小林さんから「取扱説明書にこんな機能が載っているが、どう活かせるだろうか」といった鋭いご質問をいただくなど、私自身も多く学ばせていただく機会となりました。田園交響ホール様とともに現場で培ってきたノウハウや経験は、他のホールの保守やサポートに携わる際にも大きな力となっています。

ヤマハサウンドシステム株式会社 大阪営業所 保守課 東宝 秀樹

ヤマハサウンドシステム株式会社 大阪営業所 保守課 東宝 秀樹

現場の挑戦を支える技術提案力と対応力

● ヤマハサウンドシステムの対応や、今後期待することをお聞かせください。

小林氏:
私は導入したからにはその機材をとことん使い倒したいタイプなんです。それで取扱説明書に載っていないような使い方をしようとして相談すると、多くのメーカーは「仕様上それは無理です」と断ります。でもヤマハサウンドシステムさんは「できません」とは言わないんですよ。こちらの「こうやりたい」という要望に対して、技術的な裏付けを持って「こうすれば実現できますよ」という代替案や解決策が必ず返ってくる。本当にすごいです。また保守点検の際も、バージョンアップを丁寧に行ってくれるだけでなく「点検のついでにここまで甘えていいの?」と思うような細かな修繕までその都度柔軟に対応してくれるので、本当に感謝しています。
日々進歩する最新機能や機種のトレンドを踏まえながら、こちらの財政事情に合わせた最適かつ誠実な提案をしていただき、結果として、ホールのポテンシャルを最大限に引き出す、理想的なシステムに育ててもらいました。来年に向けて、私たちの最大の自主事業である「第13弾 市民ミュージカル」の企画がいよいよ本格的に始動します。きっとまた新しい演出や音響面でのワクワクするような挑戦が生まれると思いますので、その際はぜひ知恵を貸していただきたいですね。

丹波篠山市立田園交響ホール

● 本日は貴重なお話をありがとうございました。

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