

2024年5月8日(水)、金沢歌劇座近くの「金沢21世紀美術館 シアター 21」において、本年度第1回の音響セミナー「イマーシブオーディオワークショップ」を実施しました。
ワークショップ会場
今回のセミナーは近年注目されているイマーシブオーディオをテーマに、ヤマハの「AFC(アクティブ フィールド コントロール)」技術を用い、空間の響きを最適化する音場支援システム「AFC Enhance」、音の定位を自在にコントロールする音像制御システム「AFC Image」のレクチャーとデモンストレーションをおこない、実際にイマーシブなオーディオ空間を体感していただく内容です。
また、デモンストレーションには金沢でプロのヴァイオリニストとして活動されているジドレさんにご協力していただきました。
AFC Enhance 演奏デモンストレーション
会場には会員以外の関係者も多く来場し、総勢 44 人の参加者となりました。
まずはヤマハミュージックジャパンの石橋健児氏による概要説明があり、イマーシブな音響体験に必要な要素やその音響演出の要求の高まりにメーカーとしてどのように対応してきたかなどを解説していただきました。
続いてヤマハサウンドシステムの兼子紳一郎氏に「AFC Enhance」についてさらに詳細な講義とデモンストレーションをしていただきました。
「AFC Enhance」はその空間に応じた専用マイクロフォンとスピーカを設置し、直接音に反射音の情報を加える「音場合成方式」とその空間の音を収音しフィードバックして響きを増強する「室内音場制御方式」の技術を組み合わせることで、空間の響きを制御できるシステムです。
システム的には大きさや種類の異なる 6 種類の室形状テンプレートがあり、作りたい音場に合わせてテンプレート を選んで設定をおこなうとのことです。今回はカテドラ(大聖堂)とコンサートホール(ラポルト珠洲)の響きを足したモードが作られ、ヴァイオリニストのジドレさんの演奏で AFC を OFF した状態との比較試聴をおこないました。効果は顕著なもので、本来はデットな空間である会場が一瞬にして豊かな響きを持つ空間に感じることができました。最後に国内で実際に導入されている事例の紹介があり、ホールだけではなく、屋外空間でも「AFC Enhance」の技術を導入されている場所もあるので一度体感してみたいと思いました。
次に再び石橋氏による「AFC Image」のレクチャーとデモンストレーションをしていただきました。まずは考え方の基本となる「チャンネルベース」と「オブジェクトベース」の違いを解説していただきました。
チャンネルベースとオブジェクトベースの解説
その上で「AFC Image」は「オブジェクトベース」オーディオの一種で、最大 128 のオブジェクトチャンネルを 3 次元空間に自在に配置することで、その空間において自由に音像が定位や移動をするイマーシブな音響演出をおこなうことができるシステムとの説明がありました。
AFC Imageデモンストレーション(音像移動)
その後、デモンストレーション動画の視聴をおこなった後、ジドレさんが実際にサイレントヴァイオリンを演奏しながら会場内を廻りながら演奏していただき「AFC Image」を使用した音像移動で従来のチャンネルベースでのパンニングでは実現できなかった自然な音像移動を体感することができました。
また、DAW 「Nuendo」との連携による 3D パンニングと軌跡のオートメーションによるデモンストレーションもおこなわれ、また各種事例の紹介とシステム構築のデザインについて考慮すべき点なども解説していただきました。
DAWによる3Dパンニングと軌跡のオートメーション
今回のセミナーでは高度なイマーシブル音響空間を構築すべく、吊り下げマイクを 8 本、スピーカを 29 台、その他、数種のミキサーやプロセッサーを仮設していましたが、セットアップ、チューニングとリハーサルをほぼ 1 日半で実現できました。その甲斐があって素晴らしいセミナーが実施できました。今後はさまざまな場面でこれまで以上にイマーシブな音響空間の展開が増えていくことと思います。このセミナーではその技術を理解し体感する貴重な機会になりました。
会場の機器仕込み状況
最後にセミナーに機材の提供・設置や講師の派遣にご協力いただきました、ヤマハサウンドシステム様、ヤマハミュージックジャパン様、また素晴らしいデモ演奏をおこなっていただきましたヴァイオリニストのジドレ様にこの場をお借りして、いま一度厚くお礼申し上げます。
日本音響家協会機関紙 北陸支部の記事より転載