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対談・インタビュー「Intermission(幕あい)」第二幕 Act11 山口情報芸術センター[YCAM] 中上 淳二 様

山口情報芸術センター インターラボ課 R&D/音響 中上 淳ニ 氏(写真 左)
ヤマハサウンドシステム株式会社 営業部 首都圏営業所 営業課 齊藤 健太(写真 右)

山口情報芸術センター
インターラボ課 R&D/音響 中上 淳ニ 氏(写真 左)
ヤマハサウンドシステム株式会社
営業部 首都圏営業所 営業課 齊藤 健太(写真 右)


「Intermission(幕あい)」とは、一幕が終わって、次の一幕が始まるまでの間。舞台に幕が下りている間のこと。このシリーズでは、ヤマハサウンドシステムが日頃お世話になっているホール・劇場の世界を牽引するキーマンの方々に、市場のトレンドやヤマハサウンドシステムへの期待などを、その仕事の「Intermission(幕あい)」に語っていただきます。
今回はご登場いただくのは、「山口情報芸術センター[YCAM]」のインターラボ課 R&D/音響 中上 淳ニ氏。「山口情報芸術センター[YCAM]」の特長や取り組み、そしてご本人のこれまでについてお話をうかがいました。

音や音楽を数値化することから音響の世界へ

齊藤:中上さんはどんな経緯で舞台や音響の仕事に関わるようになったのですか。

中上氏:私はここ山口の出身ですが、もともと舞台や演劇に縁があったわけではありません。中学生の頃は音楽が好きでした。当時は小室哲哉さんが全盛の時代で、私もTM NETWORKが大好きだったので小室さんがプロデュースしたヤマハのシンセサイザー「EOS B500」をアルバイトして購入しました。それで小室哲哉さんの曲をミックスしたりアレンジしたりした作品を小室さんが審査委員長をしていたヤマハのコンテストに応募したら、なんと9位になりました。それが嬉しくて「もしかしたら才能があるのかもしれない」と思ったのが、音楽に興味を持ったきっかけでした。

第二幕 Act11 山口情報芸術センター[YCAM] 中上 淳二 様

山口情報芸術センター インターラボ課 R&D/音響 中上 淳ニ 氏

齊藤:そこからミュージシャンを目指したのですか。

中上氏:バンドを組んだりしましたが、私は演奏や作曲よりも音楽理論的なものに惹かれました。ヤマハの「QY10」というシーケンサーを使って数値だけで音をステップ入力していくうちに1小節を96に分割して考えるという手法を学び、「音楽って数値なんだ、数学なんだ」という感触を持ち、とても面白いと感じました。

齊藤:舞台や音響の仕事をされている方としては、珍しいバックグラウンドですね。その後、音楽や音響の学校に進学されるのですか。

第二幕 Act11 山口情報芸術センター[YCAM] 中上 淳二 様

ヤマハサウンドシステム株式会社 営業部 首都圏営業所 営業課 齊藤 健太

中上氏:音大を目指すという発想はなくて、私がやりたいと思った「数値で作る音楽」のためには海外へ出たり、いろんな人とコミュニケーションをとれた方がいいと思い、名古屋の外語大学に入学しました。名古屋ではクラブでDJをしたりバンドを組んだりし、卒業後はDJをしながら普通の仕事をしていました。でもしばらくすると卒業した大学で映画、音響、写真、絵画、CGを扱うメディア系の学部を作ることになり、それにあたって助手を探しているとのことだったので、自分の経験が活かせると思い、助手として大学で働くことにしました。そして助手をしている時に、マイクを立ててのレコーディングや、周波数特性を測定して音を聴き比べるといった音響の基礎を身につけていきました。

齊藤:ずっと好きだった音楽を深く学べる環境に飛び込んだのは素晴らしいですね。

中上氏:働きながら勉強させてもらった感じです。そのうちに自分自身には音楽やアートのバックグラウンドが足りないと感じるようになりました。そこで34歳の時にいったん仕事を辞めて岐阜県大垣市にある情報科学芸術大学院大学(IAMAS)に入学し、学び直しました。

齊藤:情報科学芸術大学院大学では、どんなことを研究されたのですか。

中上氏:その頃ちょうど「メディアアート」という言葉が知られるようになった時で、プロジェクションマッピングなどの高度な技術を使った表現が出てきたところでした。私はメディアとアートの違いを掘り下げる中で、喜びや悲しみが現われる人の「顔」に興味を持ちました。そこで人の顔や表情をコンピューターがどう判断するかを研究し、最終的にはコンピューターと人との関係を明らかにすることを研究テーマにしました。

第二幕 Act11 山口情報芸術センター[YCAM] 中上 淳二 様

齊藤:その後「山口情報芸術センター[YCAM]」には、どういった経緯で来られたのでしょうか。

中上氏:情報科学芸術大学院大学を卒業後、1年間同校でシステム管理の仕事をしていました。その時にちょうど「山口情報芸術センター[YCAM]」で職員募集があったんです。山口市は地元だということもあり、いろいろな作品を紹介する施設として「山口情報芸術センター[YCAM]」のことは設立当初から知っていました。なので、まさに自分がやってきたことが活かせる場だと思って応募したところ採用をいただきました。

アートとテクノロジーが融合した、創造の場を提供

齊藤:「山口情報芸術センター[YCAM]」について教えていただけますか。

中上氏:「山口情報芸術センター[YCAM]」は2003年に設立されたアートセンターで、公益財団法人の山口市文化振興財団が運営しています。建物の設計は磯崎新アトリエによるもので、山の稜線を思わせる波型の外観が特徴です。館内はスタジオ、ギャラリー、展示空間、図書館が横に並ぶように構成されています。ギャラリーは、映像をはじめとするメディア・テクノロジーを活用した作品を制作・発表する場で、国内外のアーティスト、研究者、エンジニアがここに滞在しながらインスタレーションやパフォーマンス作品を制作・発表しています。

山口情報芸術センター[YCAM]外観

山口情報芸術センター[YCAM]外観

インスタレーションYCAM Dance Crew

インスタレーションYCAM Dance Crew

山口情報芸術センター[YCAM])外観

スタジオA

インスタレーションYCAM Dance Crew

スタジオB

齊藤:市が運営する公共の施設としては、先進的な印象を受けました。山口市、すごいです。

中上氏:当時の市長が「これからはメディアアートだ」と考えたようです。海外で言うとオーストラリアの「Ars Electronica」やサンフランシスコの「Exploratorium」のように、山口市にもアートとテクノロジーが融合した創造の場が必要だという認識のもと、こういった施設を建てたと聞いています。

第二幕 Act11 山口情報芸術センター[YCAM] 中上 淳二 様

齊藤:これまで中上さんが関わった「山口情報芸術センター[YCAM]」の作品で、思い出深いものや印象に残っているものはありますか。

中上氏:印象深いのはイスラエル・ガルバンさんというフラメンコダンサーとのコラボです。彼は非常に高速なステップを踏めるダンサーなのですが、そのステップをAIで再現するという舞台作品でした。ガルバンさんのブーツにセンサーを仕込んでステップを踏んでもらってAIで分析し、そのデータをもとにソレノイドという装置でステップを再現するという仕組みの舞台作品で、最終的にはご本人とAIが共演しました。私はその作品ではテクニカルディレクション的な役割で参加しました。

第二幕 Act11 山口情報芸術センター[YCAM] 中上 淳二 様

市民を巻き込んだ多くのアートやイベントを開催

齊藤:山口市民の方々が参加するような、独自の取り組みはありますか。

中上氏:市民参加型のイベントやインスタレーションとしては、たとえば先日、山口市内の空き家を活用して一時的に文化施設を創出する「meet the artist 2022 成果発表 中園町で逢いましょう」という市民参加型のアートプロジェクトが行われました。「meet the artist 2022 メディアとしての空間をつくる」という企画の中で山口市内の空き家を解体しながら色々なイベントが行われ、その空き家の中で運動会を行ったり、アーティストを招いてトークをしたりしました。その成果発表です。先に上げた運動会では、空き家の中で借り物競争などを行ったりしました。その後も空き家はどんどん解体され、構造体がなくなっていく中でコンサートもやりました。壁がない家でPAを組んでコンサートをすると近所に迷惑がかかりますから、ヘッドホンコンサート形式にしてコンピューターが奏でた音を使いました。さらにその後、解体で出た廃材で屋台を作って公園に置いたりと、キュレーターと市民が話し合いながら、すすめていったアートプロジェクトでした。

山口情報芸術センター[YCAM])外観
インスタレーションYCAM Dance Crew

「中園町で逢いましょう」のギャラリー展示より

齊藤:中上さんが音響で関わった企画などはありますか。

中上氏:「山口情報芸術センター[YCAM]」での企画ではほぼ全ての企画に携わっていますが、映画評論家の樋口泰人さんが企画する「YCAM爆音映画祭」では毎年音響の設計の段階から関わっています。文字通り爆音で映画を楽しむもので、コンサート並みのL、C、Rの本格的なラインアレイを組んで、ありったけのサブウーファーも出し、通常の映画館ではありえない爆音で映画を上映します。また、年々使用するスピーカーの数も増えていっています。2024年は8月29日から9月1日にかけて、国内外の13作品を上映し大好評でした。僕自身2016年の爆音映画祭で上映した「インターステラー」を観ましたが、ものすごい迫力で感動したので、家の27インチのテレビでもう一度観たら「ちっちゃ!」って思わず声が出てしまいました(笑)。やっぱり音やスクリーンの大きさで映画の質は全く変わってしまいます。

音響機器は自由度の高い仮設設置となるため
ヤマハサウンドシステムとのリレーションが重要

齊藤:「山口情報芸術センター[YCAM]」は私たちがいつもお付き合いしているようなホールや劇場というより、美術館とか科学館などに近いのかも知れませんね。

第二幕 Act11 山口情報芸術センター[YCAM] 中上 淳二 様

中上氏:たしかに美術館や科学館に近いかもしれません。ここにアーティストを招聘することも多いのですが都会とはちがって、山口では時間がゆっくり流れている、とアーティストによく言われますし、リラックスした状態で制作に没頭できるともよく言われます。

齊藤:弊社は「山口情報芸術センター[YCAM]」の音響システムの設計、保守で関わらせていただいております。ヤマハサウンドシステムの働きぶりはいかがですか。

中上氏:ここでは基本的にすべての音響機材が仮設なんですよ。イベントごとに機材を設置し、終わったらすべて倉庫に片付けます。その自由度の高さが特徴なのですが、仮設がメインなので常設の劇場やホールよりトラブルが発生する可能性は大きいです。ヤマハサウンドシステムさんには開館当初から音響機器の選定、設計、施工、保守まで一貫してお願いしていて、何かトラブルがあればすぐに対応していただけるという信頼感があります。実際、やや無茶な企画もあるので、めちゃくちゃ頼りにしています。

齊藤:私たちは、ホール・劇場をはじめとした空間演出をする施設の音響をワンストップで支えるプロフェッショナルだ、と自負しています。どの施設もそれぞれ目指すものや実現したいことが違っていて、同じ施設は2つとありません。ですからお客様の方向性や施設の特徴を理解しながら、そこに最適な音響システムを提供していきたいと思っています。「山口情報芸術センター[YCAM]」のように、独自性の高い施設では、特に運用状況に合わせたご提案と柔軟な対応が重要だと考えています。最後に、ヤマハサウンドシステムへの期待や今後の課題についてお聞かせください。

第二幕 Act11 山口情報芸術センター[YCAM] 中上 淳二 様

中上氏:「山口情報芸術センター[YCAM]」のように独特な立ち位置の施設では、その活動内容をよく理解してくれているパートナーの存在が不可欠です。今後もヤマハサウンドシステムさんとは信頼関係を維持しながら、常に新しいチャレンジを一緒に進めていきたいです。

齊藤:ありがとうございます。私たちも「山口情報芸術センター[YCAM]」のパートナーの名に恥じぬようチャレンジしていきたいと思います。今後もユニークな活動を展開できるよう、音響面でのサポートを続けさせてください。本日はお忙しい中、ありがとうございました。

第二幕 Act11 山口情報芸術センター[YCAM] 中上 淳二 様

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