

可児市文化創造センターala 舞台技術課 音響主任 池田 勇人 氏(写真 左)
ヤマハサウンドシステム株式会社 営業部 東京営業所 営業課 齊藤 健太(写真 右)
可児市文化創造センターala
舞台技術課 音響主任 池田 勇人 氏(写真 左)
ヤマハサウンドシステム株式会社
営業部 東京営業所 営業課 齊藤 健太(写真 右)
「Intermission(幕あい)」とは、一幕が終わって、次の一幕が始まるまでの間。舞台に幕が下りている間のこと。このシリーズでは、ヤマハサウンドシステムが日頃お世話になっているホール・劇場の世界を牽引するキーマンの方々に、市場のトレンドやヤマハサウンドシステムへの期待などを、その仕事の「Intermission(幕あい)」に語っていただきます。
第二幕 Act 9にご登場いただくのは、「可児市文化創造センターala」の舞台技術課 音響主任 池田 勇人氏。ご本人のことや「可児市文化創造センターala」のことについてお話をうかがいました。
「このままでは後悔する」と思い、会社を辞めて音響の世界へ
齊藤:池田さんはどんなきっかけで音響の世界に入られたのですか。
池田氏:学生時代から音響の仕事には憧れがありました。コンサートで音響エンジニアが機材を操っている姿がかっこ良く見えて、いつかは音楽に関わる仕事をしたいと思っていました。一度は音楽と関係のない会社に就職したんです。でも「このままでは絶対に後悔する」と思って会社を辞め、名古屋の音響の専門学校に入りました。そして卒業後は東京のテレビ音声、PA、レコーディング業務を行う会社に面接に行ったんですが、当時テレビドラマ全盛期だったこともあり「面接でドラマ音声がやりたいです、と言わなければ落とされるらしいぞ」という噂話が流れてきて「ドラマがやりたいです!」と思ってもいないことを言って入社しました(笑)。
可児市文化創造センターala 舞台技術課 音響主任 池田 勇人 氏
齊藤:サラリーマンを辞めて音響の世界に入られたということは、音楽への想いが強かったんですね。そこから「可児市文化創造センターala」の音響に携わるようになるのはどんな経緯ですか。
池田氏:ドラマ制作に携わりながら時々スポーツ中継やPA業務にも携わって、やっぱりPAって面白いなと思っていました。そこで5年ぐらい仕事をし、その後あるきっかけで地元の岐阜に戻ることになりました。それで地元の音響プロダクションに転職したのですが、その会社が開館したばかりの「可児市文化創造センターala」の委託業者として関わりがあったため、この劇場では増員スタッフとしてよく仕事をしていました。その後フリーランスで仕事をしていた2016年に前任の音響担当者が辞めることになり、そのタイミングで採用試験を受け音響担当として採用されました。ですから職員としては8年目ですが、2002年の開館当初からずっと関わっています。
「人間の家」をコンセプトに、市民による賑わいの創出を目指す劇場
齊藤:「可児市文化創造センターala」について教えていただけますか。
ヤマハサウンドシステム株式会社 営業部 東京営業所 営業課 齊藤 健太
池田氏:「可児市文化創造センターala」は最大1019席の主劇場と最大311席の小劇場を持つ施設です。それに加えて音楽ロフト、演劇ロフト、美術ロフトという3つのロフトもありますが、これらはいずれも200m2ほどの大きさがあり、それぞれの催しに適した造りになっています。ちなみに「ala」(アーラ)という名称はイタリア語で「翼」を意味しますが、これは全国からの公募で中高生を含む選考会で決められたそうです。
可児市文化創造センターala 主劇場
可児市文化創造センターala 小劇場
可児市文化創造センターala 演劇ロフト
齊藤:「可児市文化創造センターala」のコンセプトは「人間の家」とのことですが、そこにはどんな意味が込められているのですか。
池田氏:いわゆる「劇場」って「芸術の殿堂」みたいなイメージがありますよね。でも「可児市文化創造センターala」が目指しているのは地域のいろいろな人が集い、つながっていくコミュニティ的な施設です。この劇場は催しがある時だけ来る場所ではなく、乳幼児を抱える親子から高齢者、外国籍の方まで、さまざまな人が交流できる多様なプログラムが用意されている事に加え、芝生広場で子どもと遊んだり、本を読みに来たり、お友だちと話したり、自動演奏ピアノの演奏を楽しんだりと、自分の住まいのように寛げる賑わいの場であり、それが「人間の家」という意味だと思います。
可児市文化創造センターala 外観
可児市文化創造センターala 水と緑の広場
齊藤:市民が参加できるイベントもたくさんあるそうですね。
池田氏:平成20年度から毎年「大型市民参加プロジェクト」としてミュージカル、コンテンポラリーダンス、演劇という流れで自主事業を実施していて、毎回100名程の市民が参加しています。具体的には「君といた夏〜スタンドバイミー可児〜」「MY TOWN 可児の物語」「オーケストラで踊ろう」で、これを繰り返し公演している感じですね。
今年(2024年)は「オーケストラで踊ろう!『裁&判』」の公演を行いましたが、これは公募された市民ダンサーが、可児交響楽団の演奏に合わせてコンテンポラリーダンスを踊るという、一風変わった公演です。みんな本番までの数か月間、毎週ここのロフトで頑張って稽古をしてきました。
「オーケストラで踊ろう!『裁&判』」
大型市民参加プロジェクト
池田氏:また『ala Collectionシリーズ』というプロジェクトも毎年実施しています。これは、第一線で活躍している俳優さんやスタッフが約1カ月半、可児市に滞在して質の高い演劇作品を創り上げるものです。そして、その作品を可児市から東京や全国に向けて発信しています。こうしたプロの現場においても、わが町の演劇をサポートしようと多くの市民サポーターが稽古を支えるのも「可児市文化創造センターala」の特徴です。
また「可児市文化創造センターala」が開館する前から継続している催しとしては、可児市在住で日本を代表するジャズドラマーである森山威男さんのコンサート「森山威男ジャズナイト」があります。このコンサートは2001年から開催されていて、「可児市文化創造センターala」が開館した2002年からは毎年この劇場で行われています。森山さんには、ここで「ドラム道場」という教室を開いていただいておりまして、毎週森山さんによる熱心な指導が行われています。この教室からは、プロとして活躍している方も出ていますよ。
森山威男ジャズナイト2023
齊藤:森山さんにドラムを教えてもらえるなんて贅沢な教室ですね。
池田氏:はい。可児のドラマーは恵まれていると思います。
「可児市文化創造センターala」が地域のハブとして存在し続けられるように
齊藤:文化の発信地としての役割以外に、地域に向けた活動はしているのですか。
池田氏:
alaが取り組んでいるプロジェクトとしては、2009年から行われている「アーラまち元気プロジェクト」があります。これは、これまで紹介したプログラムの他に、様々なワークショップやアウトリーチ事業などを活用して、生きづらさや社会的な孤立の解消を目指した取り組みです。地域に対するアウトリーチ事業の一環としては、プロによる「おでかけ落語会」を開催しています。この活動は普段落語に触れる機会が少ない市内の中学、高校に出向き一席楽しんでもらうのですが、そこで落語の楽しさを知り、alaで開催された寄席にチケットを買って見に来てくれた生徒さんもいらっしゃいました。
また「アーラまち元気部」という部活動がalaで行われています。これは学校や教育現場での働き方改革の一環として実施されている部活動の外部化です。「アーラまち元気部」では、市内の中高生に参加してもらい、部員は当館のスタッフと一緒に冬のイルミネーション製作を行ったり、フロントスタッフを体験したり、文学座の役者さんによる「劇場たいけんツアー」という演劇仕立ての劇場バックステージツアーにスタッフとして参加してもらったり、地元のラジオ局の番組の企画や出演などを行ったりしています。部員のみなさんは他の学校の生徒たちと交流できて、また普段体験できないような活動にも挑戦できて、とても楽しそうですよ。
ほかにも、「あしながおじさんプロジェクト」という活動があります。これは家庭環境などの事情で劇場に来るのが難しい中高生たちに向けて、企業や個人の方からの寄付金を原資としてチケットを贈る活動です。
実は昨年、病気で亡くなった同僚がいます。彼は地域を支える文化プログラムは寄付金で運営されるのが理想だと話していて、私もそれに共感をしています。そんなことが実現できる可児市になるといいな、と考えながら「可児市文化創造センターala」が地域のハブとして機能し続けられるように、積極的に市民活動を支援していきたいと思っています。
常に新しいことにチャレンジしながら、
お客様の要望にはしっかりと応えていきたい
齊藤:池田さんがヤマハサウンドシステムに対して望むことがあったら教えていただけますか。
池田氏:私たちとヤマハサウンドシステムの関係は「クライアントと業者」であるだけではなく、常に私たちに近いところで協力してくださり、共にスキルを高めていく心強いパートナーだと思っています。この信頼関係はヤマハサウンドテック時代から長く続いていて、毎年の音響保守や、2014年の音響改修にも関わっていただいてます。みなさん、本当に近い距離でサポートしてくださるので我々現場の情報を即座に伝えられますし、アドバイスもすぐにいただけるので大変助かっています。
齊藤:ありがとうございます。弊社としても劇場の方々と密接にコミュニケーションを取ることで現場の要望や情報を得ることができますし、お客様と共にいろいろな検証を行うことでスキルやノウハウを磨くことができます。最後に、池田さんが目指していることをお聞かせください。

池田氏:「可児市文化創造センターala」には「笑顔の劇場」というコンセプトもあって、職員は市民と近い位置にいて笑顔で対応することを大切にしています。ある日、高校演劇でここを利用していた音響担当の生徒さんからイベント終了後に「alaで働くにはどうしたらいいですか?」って質問されたんです。理由を聞いたら「すごく楽しそうに仕事をしていたから」って。これはめちゃくちゃ嬉しかったですね。今の時代、担い手不足が問題となっている中で、私たちの仕事が面白くて魅力的だと感じてくれたことは、本当に嬉しくて励みになりました。
齊藤:池田さん個人としては、今後どんなことを目指していきたいですか。
池田氏:これは前任者から受け継いだ「可児市文化創造センターala」の伝統でもあるんですが、自主公演のたびに必ず何か新しいことにチャレンジしています。「森山威男ジャズナイト」でのヤマハのイマーシブオーディオ「AFC Image」の使用や、同じく2024年の「オーケストラで踊ろう!『裁&判』」での「AFC Image」と「AFC Enhance」のも、チャレンジの一環でした。
私はここに来るまでは施設を借りる立場だったんですが、借り手側が新しいことにチャレンジしたいと思っても施設の人から「そういう使い方はできません」と断られてしまうことがありました。そんな経験もあり、私はできるだけお客さんに寄り添い、ご要望に応えられるようにしたいと思っていますので、みなさんには 「あそこには池田がいるから何とかなるな」という軽い感じで来ていただけるのが理想です。
それと、あるご縁があって現在、神戸市三宮駅前に計画中の新しいホールの音響設計に関わっています。これからできるホールの音響に関われるなんて一生に一度あるかないかの経験ですから、可児で培った経験を最大限に活かし、みなさんに喜んでいただけるホールができるように頑張りたいと思います。
齊藤:本日はお忙しい中、ありがとうございました。
「森山威男ジャズナイト2023」情報
メディア掲載記事「Web掲載 「森山威男ジャズナイト2023」で活躍したヤマハのイマーシブオーディオソリューション「AFC」がPROSOUND WEBに掲載されました!」
【 音像制御システム「AFC Image」使用事例レポート 】森山威男ジャズナイト 2023 可児市文化創造センターala / 岐阜 ![]()
