2021年に横浜市港南区に誕生した、横浜市営地下鉄「港南中央駅」から徒歩1分の好立地にある「横浜市港南公会堂(以下、港南公会堂)」。「港南公会堂」内にある定員525名のホールは、地域の文化活動の拠点としてさまざまな催し物に使用されています。ヤマハサウンドシステムは「港南公会堂」の音響システムを担当しました。音響システムのコンセプトや使い勝手などについて、横浜市港南公会堂 館長 後藤 晋氏、同 副館長 高橋 隆一氏にお話をうかがいました。
横浜市港南公会堂 館長 後藤 晋 氏(前列左)
同 副館長 高橋 隆一 氏(前列右)
ヤマハサウンドシステム株式会社 技術部東京技術2課 阿部 真(後列右端)
同 設計部 計画設計課 今野 瞳(後列右端から2番目)
同 営業部 東京営業部 営業課 早野 飛雄馬(後列左端)
横浜市港南地区の文化活動と相互交流を支える拠点
● 「港南公会堂」について教えてください。
後藤氏:
「港南公会堂」は横浜市港南区役所に隣接する公会堂です。以前は区役所の敷地内にあったのですが、2017年に取り壊され、2021年5月に現在の場所でリニューアルオープンしました。
「港南公会堂」の役割は、地域住民が地域での活動や文化芸術活動、および相互交流を深める場を提供することです。横浜市港南区は「愛あふれる♡ふるさと港南に」という基本目標のもと「安全で誰もが安心して元気に暮らせるまち」を目指しています。そのため、利用者や地域住民、周辺の公共施設と協力し、コミュニケーションや連帯感を高める活動を進めています。
横浜市港南公会堂外観
横浜市港南公会堂 館長 後藤 晋 氏
● ホールの内部が明るくて可愛らしい公会堂ですね。これはお花なのでしょうか。
後藤氏:
はい。港南区の花である「ひまわり」をモチーフにしています。太陽に向かって元気に成長していく「ひまわり」のように、オープンで明るい活動をイメージしたもので、花びらのひとつひとつは「文化」「教育」「福祉」「街づくり」といった活発な区政を表現しているんです。これにちなんで、シート、壁面のレリーフ、緞帳も「ひまわり」を意匠にしています。今は収納されていますが音響反射板も壁面と同様に「ひまわり」の意匠が施されています。
公会堂内部
緞帳
「ひまわり」のレリーフの壁面
ウォールスピーカー
●「港南公会堂」ではどのような催し物が多いのでしょうか。
高橋氏:
「港南公会堂」でおこなわれる催し物は多岐にわたります。まず行政の式典や研修会など区が主催する地域の式典、会議、講演会などがあります。またお子さま向けの音楽発表会や中学生・高校生の吹奏楽の練習、発表会の場としても利用されています。最近は「港南公会堂」の音響の良さが評判となり、合唱団の練習や発表会にも頻繁に利用されるようになりました。
横浜市港南公会堂 副館長 高橋 隆一 氏
● 「音が良い」とは、具体的にはどういうことでしょうか。
高橋氏:
このホールは良質な響きを持っています。ただ残響が長いわけではありません。一般に残響時間が長すぎるとスピーチが聴き取りにくくなってしまいますが、このホールは音楽用途と講演会などの用途の両方に対応できる最適な響きになっています。「港南公会堂」は催し物の主催の方に場所を提供するだけでなく、音響・照明機材も貸し出し、基本的には利用者に操作していただきます。このホールはベースとなる響きが良いので、主催の方から非常に使いやすいとご評価いただいています。
● 自主事業もおこなっているとうかがいました。どのような公演を企画されているのでしょうか。
後藤氏:
自主事業として出演者を公募する「港南公会堂フェスティバル」、「映画鑑賞会」、そしてお客さんの協力を得て公演中に避難訓練をおこなう「避難訓練コンサート」などをおこなっています。
高橋氏:
「港南公会堂フェスティバル」には8団体ほど出演します。このフェスティバルは「港南公会堂」の舞台技術スタッフの腕の見せどころでもあり、私たちも力を入れています。「映画鑑賞会」は地域の方々に特に人気で、今年はお子さま向けに「アンパンマン」を上映し、大変喜んでいただきました。幼いお子さんが安心できるように親御さんのお顔が見えるよう、あえて真っ暗にせず上映したことが特に好評でした。
● それはお子さまがいるご家族には喜ばれるでしょうね。
後藤氏:
泣いてしまうお子さんや盛り上がって歓声を上げるお子さんもおり、一般の映画館では他のお客さんの迷惑になってしまうような場面でも、ここでは気にせず映画を楽しめたという声をいただきました。
舞台下手袖でほとんどの音響機器をコントロール可能なシステムを構築
● ここからは「港南公会堂」の音響システムについてうかがいます。貸館の場合には、音響機器の操作はどのようにされているのでしょうか。
高橋氏:
マイクの準備やテストは我々スタッフがおこないます。リハーサルの時も近くにいて「このぐらいの音量がいいんじゃないですか」「これ以上は上げないでください」などのアドバイスは行いますが、基本的には本番は主催の方に操作してもらいます。そうなると主催のどなたか1名が音響の担当となりますので、その方が客席奥の音響調整室専属になるというオペレーションは難しく、舞台の下手袖で音響操作が完結するシステムを構築してもらいました。
● では催し物によっては客席奥の音響調整室を使わないこともあるのでしょうか。
高橋氏:
そうですね。Danteネットワークで接続されているので、音響に関するほとんどの操作を舞台下手袖のヤマハのデジタルミキシングコンソール「QL1」でおこなえます。
舞台下手袖の音響システム
● ヤマハのデジタルミキシングコンソール「QL1」の使い勝手はどうですか。
高橋氏:
非常に良いですね。タッチパネルの画面表示がわかりやすく、操作したことがない人でも慣れるのが早く扱いやすいと思います。
舞台下手袖のヤマハデジタルミキシングコンソール「QL1」
● 音響調整室はどんな用途で使われているのでしょうか。
高橋氏:
映画などのBlu-ray上映や催し物の録音時に使用することが多いですね。音響調整室にはヤマハデジタルミキシングコンソール「QL5」があり、映写室も兼ねています。先ほどご紹介した映画鑑賞会ではBlu-rayディスクを使用し、5.1chサラウンドの再生は「QL5」でおこないました。
音響調整室
音響調整室のヤマハデジタルミキシングコンソール「QL5」
● HYFAXシリーズの電動吊マイク装置「MHN1」についてはいかがでしょうか。
高橋氏:
記録用の録音に使っていますが、音質はとてもいいですし、マイクの上げ下げなどの使い勝手も良好です。吹奏楽などでプロジェクター映像をバックに演奏する際、映像に影が入らないようにマイクを高く吊り上げてもかなり良い音で拾ってくれます。
HYFAXシリーズ 電動吊マイク装置「MHN1」
機器のレイアウト、配置、使い勝手に徹底的にこだわった音響システム
● ここからは「港南公会堂」のシステム設計・工事に関わったヤマハサウンドシステムのメンバーも加わります。システム設計を担当した今野さんは、どんな点にこだわりましたか。
今野:
「港南公会堂」では多種多様な催しものがあること、そして舞台の下手袖で音響に関する操作を集約したいというご要望をいただきましたので、それを実現できるようシステム設計をおこないました。舞台袖に音響調整室とほぼ同等機能を持たせましたので、音響調整室に足を運ぶことなくステージ袖で全てのオペレーションがおこなえます。またタブレット端末での操作性も重視しました。Wi-Fi接続したタブレットで客席からデジタルミキシングコンソールをコントロールできますし、さらにサイドスピーカーやプロセニアムスピーカーなどはパワードスピーカーを採用しているので、スピーカーの音量やクロスオーバーといった細かいスピーカーの設定もタブレットで操作できます。
ヤマハサウンドシステム株式会社 設計部 計画設計課 今野 瞳
プロセニアムスピーカー
サイドスピーカー
● 施工管理を担当した阿部さんはいかがですか。
阿部:
私がこだわったのは機材の配置です。「港南公会堂」の音響コンサルティングを担当された永田音響設計の故・稲生 眞さんと設計図面を見ながら「ここの機材の使い勝手はこれでいいのか」などと細部にわたって徹底的に協議して検討しました。稲生さんはホール・劇場における電気音響の巨匠といっていい存在だと思いますが、サイドスピーカーやプロセニアムスピーカーの向き、角度、高さなど本当に細かい部分まで時間をかけて調整されました。その音に対する真摯な姿勢が非常に勉強になりました。
ヤマハサウンドシステム株式会社 技術部東京技術2課 阿部 真
今野:
私もシステム設計の段階で稲生さんと仕様を詰めたのですが、音響ラックのレイアウトなども原寸サイズで実際に印刷して壁に貼り「この高さなら触りやすいね」とか「これだと届かないよ」などと具体的に検証しました。さらにスイッチパネルのボタン一つ一つのレイアウトなど、細かい部分も徹底的に検証しました。こうした稲生さんとのやりとりから得られた知見は、私にとってもかけがえのないものになっています。
優れた使い勝手を実現した音響システム スイッチのレイアウトにこだわった操作パネル
● 営業担当の早野さんはいかがですか。
早野:
実は、2022年に大阪営業所から異動してきたので、私は竣工当時には携わっておりませんでした。いま、私は「港南公会堂」様をはじめ、横浜市のホールを担当しています。「港南公会堂」様は明るくモダンで、最先端の設備が導入されています。今後も地域の方々に愛されるホールであるよう、サポートしていきます。
ヤマハサウンドシステム株式会社 営業部 東京営業部 営業課 早野 飛雄馬
● 後藤館長、高橋副館長から見て、ヤマハサウンドシステムの仕事ぶりはいかがでしょうか。
高橋氏:
非常によく対応していただいています。ヤマハサウンドシステムの方々は話しやすく、急な対応もすぐにしてくれます。たとえばある日、急に音が出なくなって、急いで担当の方に連絡したらすぐ来て見てくださったんです。そうしたらスピーカーのスイッチがオフになっていたんですよ。単なるこちらの勘違いだったんですよね。それでも嫌な顔せずにニコニコと対応してくださいました。このように何かあれば気軽に相談できる雰囲気が非常にありがたいです。
後藤氏:
私もそう思います。ヤマハサウンドシステムさんには年に2回、保守点検をお願いしていますが、保守点検に合わせてちょっとした要望にも気軽に対応してくれる点も助かっています。あと信頼関係ですね。たとえば会館のスタッフではわからない音響に関する非常に専門的な部分があります。そういう部分もヤマハサウンドシステムさんならやってくれてるんだろうなと信頼しています。また機器のバージョンアップも他の機器との兼ね合いも考えながら、常に一番良いタイミングでしてくださいます。

高橋氏:
付け加えるとヤマハサウンドシステムさんは劇場の拡声装置だけでなく、会館全体の音響を見てくれるので非常に助かります。そこが一番助かる点かもしれません。先日も受付のスピーカーだけ音量がちょっと大きかったので調整をお願いしたんですが、アッテネーターの設定を変えることで、その場で即座に対応してくださいました。

● 最後に、今後やってみたいことや期待していることがあれば教えてください。
後藤氏:
今後はアウトリーチ活動として学校や介護施設などに出向いて何かしたいですね。その時には移動式のPAが必要になるのでその折にはまたご相談したいと思います。
高橋氏:
「港南公会堂」の音響システムにはヤマハサウンドシステムさんが心血を注いだ非常にいいものが入っています。ですから利用者の方々がより高度なことができるよう提案していきたいと思います。具体的にはメモリーやシーンを使ったオペレーションに取り組んでみたいですね。
● ヤマハサウンドシステムのみなさんは、今後「港南公会堂」とどのようにかかわっていきたいですか。
今野:
私は新築工事のときにシステム設計業務に携わりましたが、音響システムは今後もどんどんアップデートしていくと思いますので、使い勝手や運用面で何かわからないこと、小さな疑問など、なんでもどんどんご相談いただきたいです。
阿部:
私は施工管理担当ですので今後関わる機会があるとするとすれば改修の時かもしれません。改修の折には、より良い改善ができるよう尽力したいと思います。
早野:
今日は保守点検に関してご満足いただけているとのお話をいただき、営業担当としてとても嬉しく思っています。この先10年、20年で音響設備はさらに進化していくと思いますので、「港南公会堂」にとってメリットがあるものをご提案しながら、よりよい良いサービスをご提供できるように頑張ります。
● 本日はご多忙中ありがとうございました。
外部リンク
