ヤマハサウンドシステム株式会社

第二幕 Act1
浪花千葉音響計画有限会社 取締役ゼネラルマネージャー
千葉 朝子 様

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取締役ゼネラルマネージャー 千葉 朝子 様

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第二幕 Act1 浪花千葉音響計画有限会社 取締役ゼネラルマネージャー 千葉 朝子 様

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取締役ゼネラルマネージャー 千葉 朝子 様

トップ対談 #09 浪花千葉音響計画有限会社 取締役ゼネラルマネージャー 千葉 朝子 様

浪花千葉音響計画有限会社 取締役ゼネラルマネージャー 千葉 朝子 氏(写真 左)
ヤマハサウンドシステム株式会社 代表取締役 平井 智勇(写真 右)

浪花千葉音響計画有限会社
取締役ゼネラルマネージャー 千葉 朝子 氏(写真 左)
ヤマハサウンドシステム株式会社
代表取締役 平井 智勇(写真 右)


「Intermission(幕あい)」とは、一幕が終わって、次の一幕が始まるまでの間。舞台に幕が下りている間のこと。このシリーズでは、ヤマハサウンドシステムが日頃お世話になっているホール・劇場の世界を牽引するキーマンの方々に、市場のトレンドやヤマハサウンドシステムへの期待などを、その仕事の「Intermission(幕あい)」に語っていただきます。
新シリーズ第1回は、音響設計・舞台設備設計における技術協力およびコンサルティングを主業務として快適な音空間つくりを実現してきた浪花千葉音響計画の取締役ゼネラルマネージャー・千葉朝子さんにご登場いただきました。「これから音響に携わる若い人たちの心に響かせられれば」と、多岐にわたるお話を弊社代表取締役 平井智勇がお話をうかがいました。

トップ対談 #09 浪花千葉音響計画有限会社 取締役ゼネラルマネージャー 千葉 朝子 様

プロフィール 千葉 朝子(ちば あさこ)
東京電機大学理工学部建設工学科を卒業。株式会社永田音響設計にて音響設計技術スタッフとして勤務後、楽器店の内装設計施工会社を経て、2001年森本浪花音響計画有限会社(2014年浪花千葉音響計画有限会社に社名変更)に入社。2014年7月同社取締役プランニングマネージャーに就任。現在に至る。日本音響学会/日本騒音制御工学会/日本舞台音響家協会、会員。多摩美術大学環境デザイン学科非常勤講師。公害防止管理者(騒音・振動)。

20年にわたって観てきた音の現場は宝物がいっぱい! 
苦労も、ヒントも、学びも、緊張感も、けた違い

平井:本日はお時間いただきありがとうございます。浪花千葉音響計画さんには、公共施設などの音響システムを提案する際にプランの妥当性などを評価する音響コンサルタントとして、数多くのプロジェクトでご一緒してきました。このご縁は、ヤマハサウンドシステムの前身であるヤマハサウンドテックや不二音響の時代からですよね。

千葉氏:はい。当社は、もともと永田音響設計で仕事をしていた浪花克治と〝ミスターアルテック〟として知られる森本雅記さんが2001年に立ち上げた会社で、私はその年に永田穂先生の紹介で入社しました。浪花は1973年からこの仕事をしている大先輩で、ヤマハサウンドテックの前身である三精エンジニアリングの方々から薫陶を受けたとのことで、その頃からのお付き合いになります。

トップ対談 #09 浪花千葉音響計画有限会社 取締役ゼネラルマネージャー 千葉 朝子 様

平井:現在の主たる業務は、やはり音響コンサルティングということになるのでしょうか。

千葉氏:はい。わかりやすく言うと「音についての何でも屋」で、困った末の駆け込み寺のような存在として声をかけていただくことも少なくありません。音に関する問題というのは、施主・設計事務所の方・施工者・音響技術者・施設運用者/利用者と、それぞれの立場によって問題や課題もさまざまです。これらの問題について課題を明確にし、ベストな解決案をご提案し、いろいろな方のお力を借りながら解決することが我々の仕事だと考えています。結果が良い方向に近づくと、曇った表情だった人も含めて関係者の表情が笑顔に変わっていくのが嬉しく、やりがいを感じる瞬間だったりします。

平井:官公庁など会議場の音響設備にも関わっていらっしゃるとうかがいました。特別な音場空間ですが、そのお仕事ではどのようなことが求められるのでしょうか。

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ヤマハサウンドシステム株式会社 代表取締役 平井 智勇

千葉氏:官公庁の会議場でも民間の役員会議室などでも、スピーチの聞き取りやすさや音量感が求められます。老若男女すべての人が会議の内容を聞くために会議場に集いますので、聞き取れないとか音が止まってしまうということはあってはなりません。会議場に限ったことではありませんが、このようなことで苦労される施設管理の方々が多いんです。彼らは並々ならぬ緊張感と身を削るような想いで、毎回本番を迎えています。音に対する鋭さも我々の比ではないこともしばしばです。彼らと同じ感覚で臨まないといけない。例えば、音を止めないようにバックアップとして二重化システムを導入する場合もあります。最近では音響調整卓も二重化できる機種が増えてきましたが、調べるとほとんどが自動切換えです。オペレーターや管理者が判断して手動で切り替えることを求められることがあり、課題となっています。
また、反射音が増えたという相談を受けて現場にうかがうと、温湿度による差が原因だったということもありました。そのくらい感覚が鋭いチェックをされています。気が抜けません、すごいですよね。

高1のときから思い続けた音響の世界で

平井:ところで、千葉さんが音響に関わるようになったきっかけを教えていただけますか。

千葉氏:私の父は学生時代には軽音楽部、仕事を引退した今はジャズバンドでベースを弾くという音楽好きです。その影響で私も子どものころからピアノやトロンボーンなど楽器演奏に親しんできました。なかでも中学時代に出会ったチェンバロ(これも父のおススメでした・笑)に魅了され、いつしか音に関わる仕事がしたいと考えるようになり、高校時代にはクラヴィコード(チェンバロと同時代に使われた鍵盤楽器)を製作しました(キットですが)。その時クラヴィコードの発音の仕組みや反響板の裏側の構造を知って、音や楽器をつくる世界に興味を持ちました。高校1年の夏休みの宿題で「将来について親と話し合い、親がレポートを提出する」という課題が出たのです。その頃はちょうどサントリーホールが話題となっていた時で、ホールを設計した永田音響設計が注目されていたこともあり「音に関わる仕事といえば永田音響設計」と考えた父がアポイントをとってくれて、どうしたら音響に関わる仕事に就けるのかを電話で教えてもらったんです。その6年後の大学3年の夏休みには永田音響設計でアルバイトをさせていただく機会を得て、永田音響設計に入社しました。

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↑ 浪花千葉音響計画の事務所に置かれた電子チェンバロ

平井:高校1年生のときからの思いが実ったのですね。

千葉氏:はい!永田音響設計では、いろいろな経験をさせていただきました。建築音響設計のチームだったのですが、電気音響の重要さにも気がつくことがありました。その後、永田先生から「森本さんと浪花くんで会社を立ち上げるからそこでやってみないか」とお声がけいただき、電気音響のトップランナーとして活躍しているお二方と仕事ができるチャンスでしたので入社しました。2014年に森本さんが自身の会社を立ち上げてお辞めになりましたが、「浪花千葉音響計画」として、おかげさまで昨年、設立20周年を迎えることができました。

空間の響きを最適化するヤマハ「AFC Enhance」
潜在的なニーズはもっとあるはず

平井:ヤマハサウンドシステムは2019年に設立10周年を迎え、その際、千葉さんから『音がみえる瞬間』と題した素敵な文章をお寄せいただきました。千葉さんは、日本音響学会誌(2020年)に『電気音響設備に関する近年の動向』という論文も発表していらっしゃいますね。

千葉氏:先輩方々のおかげもあり、原稿依頼のお声をかけていただいくことは、いつもとても有難くうれしいです。音の問題を抱える方々に少しでも役に立てていただければという想いを込めて書いています。ヤマハサウンドシステムさんの10周年に寄せた文章では、スタッフの方々の印象や専門性の高いトップ企業だからこその期待、役割について書きました。日本音響学会誌に発表した論文 外部サイト では、電気音響設備に関する近年の動向として普段の仕事の中で向き合ってきた課題から、響きが長い空間での聞き取りやすさ、劇場でもとめられる自然な拡声音、クラシック音楽専用ホールで近年増えてきたレクチャーコンサートに対応する出力系や多目的ホール・劇場の改修で課題になりがちな諸問題について記述しました。また、2019 年夏に視察したオーストリアのブレゲンツ湖上音楽祭とサンクト・マルガレーテン採石場でのオペラフェスティバルの2つの音楽祭で使われた音像定位と音場制御システムの概要やメンテナンス点検で求められることも紹介しました。ヨーロッパの音楽祭は昔から長く続いているイベントですが、このようなものは日本でもこの先増えていくのではないかと感じています。

平井:千葉さんが論文で取り上げられたブレゲンツ湖上音楽祭とサンクト・マルガレーテン採石場でのオペラフェスティバルでも使われた音像定位と音場制御のシステムと同様なものをヤマハからイマーシブオーディオソリューション「AFC(Active Field Control)」として提供しています。「AFC」は音の響きや空間の拡がり、音量感など建築音響の聴感・印象をナチュラルに変化させることができるシステムです。特に空間の響きを最適化する音場支援システム「AFC Enhance」を導入した案件で浪花さん、千葉さんのお力をお借りしたことがありましたね。

トップ対談 #09 浪花千葉音響計画有限会社 取締役ゼネラルマネージャー 千葉 朝子 様

千葉氏:「鹿児島ライカホール(2020年)」「なら歴史芸術文化村芸術文化体験棟ホール(2017年)」と「愛知芸術文化センター 愛知県芸術劇場 小ホール(2015年)」の3件です。使い方次第で演出の幅が広がると感じていて、期待は大きいです。ライカホールと、なら歴史芸術村は、コロナ禍でのOPENだったので、これからの使われ方や現場の反応にとても興味があります。

平井:「AFC Enhance」のように電気的な仕組みで響きを付加されることに懸念を示されるケースもあるのでしょうか。

千葉氏:そうですね、演奏者はもちろんお客様も感覚が鋭いですからその点には配慮が必要です。また、実際の響きよりも極端に響きを長くしたり、その室の残響特性と大きく違ってしまったりすると違和感を抱きます。その室にあった調整が必要です。いわゆる生音と電気的な音とのハイブリットであると考えるとわかりやすいかもしれません。残響の“長さ”と“質”との両方を考えないと不自然に感じてしまいます。残響が短い場合には「AFC Enhance」で付加することも一つの手段として可能です。「AFC Enhance」を使用して用途に適した響きにできれば、式典講演用途以外にもクラシック音楽など響きが長い演出まで対応できるようになります。催し物の幅や可能性が広がり、何か面白い演出が増えるのではないかと期待しています。

平井:「AFC Enhance」による響きは生の残響に匹敵するようなレベルに近づいているでしょうか。

千葉氏:最近はサウンドプロセッサーの信号処理が目覚ましい進化を遂げているので、かなり自然に聴こえるようになってきたと思います。とはいえ、音はとても繊細なものですし、それを感知するのは人の耳というアナログの最たるもの。その感度は人によってまちまちなので、なかなか調整しきれない面があります。どう使いこなすかがキモです。たとえばブレゲンツ湖上音楽祭やマルガレーテンのオペラフェスティバルは、屋外での催しで響きを付加しているのですが、とても自然でスピーカーから音がでていることを感じないことに驚きました。とにかく大音量であればよい、という演出とは全く違い、電気音響を感じさせない音の演出により、舞台セットの美しさをより引き立てていました。国立劇場の文楽を観た時に感じた自然でリアリティのある音つくりに、なんとなく通じるものを感じました。見習わなければと思いました。「AFC Enhance」のリアリティさの追及にも通じるかもしれません。

「笑顔が見える音つくり」をめざして

平井:これまでのキャリアを通じ、千葉さんは今、どのような「音」を求めてコンサルティングされているのでしょうか。

千葉氏:私が目指しているのは、「笑顔が見える音つくり」です。音というのは繊細なもので、繊細がゆえに理解しにくい面があります。人はわかりにくいことに直面すると顔が曇りますが、「わかった!」と思うと目に光が灯り、表情がパッと明るくなってやる気も出ます。お客さま(お施主さん)が笑顔になれば設計者や施工者をはじめとしたチームみんなが笑顔になり、自分も笑顔になってやりがいや楽しさを感じます。「笑顔が見える音つくり」は我々音響設計、音響コンサルの永遠の課題かもしれません。

トップ対談 #09 浪花千葉音響計画有限会社 取締役ゼネラルマネージャー 千葉 朝子 様

平井:「笑顔が見える音つくり」に必要なものとは、どんなことでしょう。

千葉氏:目に見えない「音」を相手にできるだけわかりやすく伝えることが一つ大事なことだと考えています。そのためには繊細な感覚を持ち、わかりやすい言葉で見えない現象を説明する術を磨く必要があります。「音を大事に想う、関心をもつ」のはもちろん、「施主の希望と設計者の意向」をしっかりヒアリングできる力も欠かせません。特にいろんな立場の方々のお話は音つくりのヒントになります。

平井:「音」そのものについては、どんな点にこだわりますか。

千葉氏:大事なのはバランスです。主張しすぎると「気障」になるし、足りなければ「野暮」です。ほどよい色気、つまり魅力を感じられるのが「粋」であり「意気」であると辞書にあります。「洗練されてはじめて垢抜ける、鍛錬してはじめて磨きがかかる」という粋人の箴言は、音の世界にも通じることだと思っています。

若い世代ならではの純粋で素直な気持ちを
いつまでも忘れずにステップアップしてほしい

平井:千葉さんは大学の講師や企業向けに音のレクチャーをされているとのことですが、そのことも少しお聞かせください。

千葉氏:音の専門家を養成するのではなく設計事務所やデザイン事務所などで仕事をするときに、音についてざっくりした勘どころだけでも知って感じて、興味をもってくれれば大成功!という思いでやっています。たとえば「騒音の感じかた」について、ロックが好きな人には心地よい音楽なのにそうでない人には騒音にしか聴こえない、というお決まりの話がありますが、それを伝えるとみんな興味をもってくれます。こちらが思いつかないような反応をしてくれることもしばしばあって、そのひらめきには逆に勉強させられることもあります。

平井:学生の方々に特に伝えたいと感じていることは何かありますか。

千葉氏:建築家やデザイナーさん志望の学生さんには、音は目に見えないけれど建物の形・内装・使われる素材から見えてくる音があるということ。空間の形をほんの少し変えただけで、ガラっと音がかわることがあるということ。音の観点から建築材の影響、電気を用いた音の技術を知り理解することで、機能美を備えた音空間をデザインすることができるということ。笑顔がみえる音つくりを心がけ、いい音とは。心地よい音とは。と問い続けることの大切さ。──といったあたりでしょうか。

トップ対談 #09 浪花千葉音響計画有限会社 取締役ゼネラルマネージャー 千葉 朝子 様

平井:御社には、現在ともに20代半ばという若いスタッフ(2017年入社の鈴木健斗さん、2019年入社の若林成美さん)がいらっしゃいます。おふたりへの期待はどのようなことがありますか。

千葉氏:鈴木と若林に共通しているのは、マイペースということ(笑)。自分にとって大切なものをコアとしてしっかり持っていて周囲に振り回されるようなところがありません。これはとってもいいことで、今の純粋で素直な気持ちをいつまでも忘れずにいてほしいです。もちろん地道な勉強は大切なので、諸先輩方からたくさんの経験や知識を吸収してほしい。そのとき素直で純粋な心持ちが役立つと思います。

平井:今、音響に関わっている若い方、これから音響を仕事にしようとする方にもメッセージをいただけますか。

千葉氏:音や音響が好きであること、音が好きになることが大切です。そして、音を感じること、気持ちに素直になることです。また、ステップアップをしていくには苦労はつきもの、苦労に打ち勝つためのよりどころとなることが、まさに「音が好き」という気持ちと感じています。なにくそ、負けるものか!と自然と思えることかなと。また、私もそうでしたが問題にぶちあたったときに一人で悩み過ぎてしまうことがあるかと思います。その時に思いだしてほしいのは、あなたは一人ではないということ。頑張っていれば周りは必ず見ています。これは浪花にも言われてきました。
専門性が求められることにはその道のエキスパートを頼ることも大切です。頼った上で学んでいけばよいのです。尊敬する諸先輩方々は、いくつになっても常によりよい音を追求しています。ほどよく力が抜けて洗練されたその背中と目線の先をたどることで、これから進むべき方向性を感じることができます。
また、「希望を叶えるためには、是が非でも想い続け、言い続ける」ことが大事だと伝えたいです。これが秘訣だと断言できます。私は両親も親戚もみな秋田の出身で「いつか秋田の仕事がしたい!」とずーっと思い続け、言い続けていたら、な、なんと秋田県内の「秋田市にぎわい交流館 AU(あう)」と「あきた芸術劇場ミルハス」のホールのお手伝いができました。一途に思うことは感度を高め、考えるベクトルを深め、結果的に周囲もバックアップしてくれていたことに気が付きます。やりたいことを言葉にすると行動力が芽生え自然と熱が入り、周囲にもその思いが伝わります。ぜひ思いを途切れさせずに周囲に発信し、望みを叶えていっていただきたいと思います。

平井:ヤマハサウンドシステムの印象や期待することなども教えていただけますか。

千葉氏:音好き、音楽好き、楽器好きの集団という印象に尽きます。現場で打合せをしていてもいい音を実現するための意見や提案が次々に出てきて刺激を受けます。こちらから示した意向の必要性をすぐに理解してくれて、大事なところを共有できるのもうれしいところ。それが一致団結していい音の実現に邁進できる秘訣ではないでしょうか。あと、期待するのは、専門性の高いトップ企業としてのリーダーシップです。音響システム系統図の書き方や概念、名称などの言葉の使い方はヤマハサウンドシステムさんの書式や表記が一般化されることも多いです。なのでその責任を負って、表記を正しく使うなど細部にもご配慮いただければと感じます。新しく開発された機器の規格や標準化についても積極的に関わってほしいと思います。

平井:最後に、千葉さんご自身の今後のテーマをお聞かせください。

千葉氏:先日、浪花と入った飲食店で非常にわかりづらい食券の券売機に遭遇しまして…(笑)。メニューを選ぶボタンをわかりやすくしたかったのかボタンが異常に大きいんです。そのせいなのか、料金投入口が高い位置にあって手が届きにくい、更にこれまで使えていたカードが一切使用不可という機械でした。店や券売機(製品)の都合が優先されていて客に優しくないよね~(笑)って。システムの都合で不便を強いられるのってどうなんだろう、という会話をしました。音響でも同じで、システムや製品をつくる側の都合でつくるのではなく、使う側に操作上のストレスを与えずスムーズに直感的に使えるシステムや製品でなくてはならないよねという話になりました。効率化、デジタル化、高性能が浸透してきている一方で、精度が高すぎて想定外のノイズが発生したり音が出なかったりといったトラブルが発生することもあります。その反面現場は、非効率、ファジーなアナログ的な対応が求められ性能低下となり、余計に苦労が絶えない。そんな一幕を見聞きするとなんか違うなぁと感じてしまいます。
本来なら現場の音響技術者は音や音響のことに時間を割きたいのに、デジタル機器の急速な発達により高性能ならではの不具合やそれに対処するための労力をユーザーに強いる場面が足かせとなり、音響技術者が機器やシステムの勉強やお守り(おもり)をしなくてはならない。苦労をしなくても良いところで苦労をしてしまっている。そんな状況にジレンマを感じることが多くて、音響技術者がやるべき「音のこと」をやれるようにするにはどうするか、という観点で考えることがテーマです。

平井:本日はご多忙中お時間をいただき、ありがとうございました。豊富でユニークな経験をお持ちの千葉さんならではの貴重なご意見、そしてヤマハサウンドシステムへのアドバイス、そして音響に携わる若い世代への愛情あふれるメッセージなどをいただきました。「笑顔が見える音づくり」、我々も実践していきたいと思います。

トップ対談 #09 浪花千葉音響計画有限会社 取締役ゼネラルマネージャー 千葉 朝子 様

(写真左から)千葉朝子さん、ヤマハサウンドシステム社長 平井智勇、浪花千葉音響計画の若手スタッフ・若林成美さん、同社代表取締役の浪花克治さん〈鈴木健斗さんは、現場対応のため撮影が叶いませんでした〉

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