ヤマハサウンドシステム株式会社

東京ガーデンシアター 様 / 東京都
Japan / Tokyo November. 2021

東京ガーデンシアター 様

2020年7月、東京のウォーターフロント有明に、最大収容人数約8,000人を誇る東京屈指の劇場型イベントホール「東京ガーデンシアター」が誕生しました。アーティストとオーディエンスがひとつになれる、かつてない臨場感を提供するこのホールの音響設備(施設全体の設計・施工:竹中工務店)をヤマハサウンドシステムが担当しました。「東京ガーデンシアター」を運営する住友不動産商業マネジメント株式会社 シアター運営部 部長 本田 裕之 氏、同 シアター運営部 運営グループ 加無木 克志 氏、そして音響責任者を務める 寺田 泰人 氏に、「東京ガーデンシアター」の特長や音響設備の使い勝手、そしてヤマハサウンドシステムの仕事ぶりについてお話をうかがいました。

東京ガーデンシアター 様

住友不動産商業マネジメント株式会社 シアター運営部 部長 本田 裕之 氏(中央)
同 シアター運営部 運営グループ 加無木 克志 氏(左端)
音響責任者 寺田 泰人 氏(右端)

新しい街で、非日常と日常をつなぐ劇場型イベントホール

● 「東京ガーデンシアター」の概要について教えてください。

本田氏:
お台場や国際展示場など非日常を楽しめる場所と、豊洲、東雲といった日常的な新興住宅エリアとのちょうど真ん中にあるのが有明という街の立地特性です。そして今後、住宅地として非常に賑わっていくであろう有明の中心となるのが「東京ガーデンシアター」を擁する大型多機能複合施設「有明ガーデンシティ」です。この施設は商業モール、温浴施設、ホテル、集合住宅、そして劇場型イベントホールである「東京ガーデンシアター」で構成されています。規模としては収容最大人数8,000人、ロックコンサートを中心としたライブを想定しています。

東京ガーデンシアター 様

住友不動産商業マネジメント株式会社 シアター運営部 部長 本田 裕之 氏

東京ガーデンシアター 様

東京ガーデンシアター

● 「東京ガーデンシアター」にはどんな特長があるのでしょうか。

本田氏:
第一の特長は「当日設営、当日本番、当日撤去」が可能である点です。多くの劇場やホールは土日稼働が中心ですが、「東京ガーデンシアター」は「非日常を日常に」がコンセプトなので、毎日なんらかのライブがあることが理想的だと考えています。そこで設営日のいらない、当日すぐ本番ができる劇場にしたいと考えました。

●「当日設営、当日本番、当日撤去」を可能にするために、どんな工夫がなされているのでしょうか。

本田氏:
まず、できるだけ使っていただけるような常設機材を用意することで設営時間の短縮を図りました。オープン後にもスピーカーの補強を行っており、その結果、想定以上に常設機器を使っていただいていますし、今後は比率がさらに高まると思います。また持ち込みの場合でもできるだけ短時間に設営ができるような動線とし、常設のメインスピーカーを使用しない場合には短時間にハケられるような機構も用意しています。

● 常設機材を使うと設営時間はどのくらい違うのでしょうか。

加無木氏:
メインスピーカーのリギングの時間が全くいらなくなるので、設営だけで1時間半から2時間は短縮できると思います。

東京ガーデンシアター 様

住友不動産商業マネジメント株式会社 シアター運営部 運営グループ 加無木 克志 氏

● 近年の大型の音楽イベント会場はアリーナ型が多いですが、ここは劇場型でステージと客席が非常に近く感じます。

加無木氏:
観客との距離が近く、客席からのエネルギーが感じやすいホールだという評価をいただいています。ステージでは観客がアーティストをとり囲むように感じられ、あるアーティストが下見に来られたときステージに立って「スゲエ!」っておっしゃっていました。

本田氏:
ここは最大視野距離が54メートルという近さになっています。もちろんアリーナ型は多様な用途に対応できるメリットはありますが、私たちはライブでの一体感を重視しました。同時にこの形状は設営時間を減らす目的もあります。アリーナ型はどうしても設営時間がかかります。

東京ガーデンシアター 様

舞台を3層のバルコニー席が取り囲む
客席は舞台まで最大視野距離54メートルの範囲内に設置されている

● ステージが近くに見えて、ライブには最高の劇場ですね。

本田氏:
ありがとうございます。「東京ガーデンシアター」は音楽に強みを持った劇場型イベントホールですが、音楽だけに特化したわけではありません。昨年もスポーツイベントを開催しておりますし、企業などの会議(Meeting)、研修旅行(Incentive Travel)、国際会議 (Convention)、展示会・見本市・イベント(Exhibition/Event)といういわゆる「MICE」にも注力しています。特に国際会議は登壇者が観客に向かって話すので音楽ホールと高い親和性があり、多くの方にご活用いただけると考えています。

ライブハウスでもあり、アリーナツアーの会場でもある劇場に

● 現在はコロナ禍で無観客ライブが増えていますが、「東京ガーデンシアター」は配信・中継のニーズにも対応しているのでしょうか。

加無木氏:
今は配信・収録での利用率は7、8割ぐらいになっています。最近増えてきたのは中継で、それに耐えうるインフラを用意しています。館内は光回線を常設で4回線引いており、正副で2プラットフォームという考え方でご提供しています。さらにシングルモードの光ファイバーが劇場に24回線あり、それはご自由にお使いくださいという形でご提供しています。また1階の中継室まで40芯の光ファイバーを引いてあり、ビジネスイーサワイドなどの臨時光回線を、利用者様にお申込みいただいて放送局に直接光回線で送ることができます。

東京ガーデンシアター 様

● 配信・中継に関しては、最も新しいタイプの劇場といえるのはないでしょうか。

本田氏:
そう思います。われわれとしては、ここを50年使える建物にしたいと思って作りました。ですから少なくとも10年先にどういう世界になっているか、どういう使われ方をされるのかを考え、今後、配信、収録は間違いなく増えていくだろうということで、それに対応した設備を用意しました。結果的にコロナ禍で10年先と想定していた世界が、ぐっと前倒しされたのが現状です。

東京ガーデンシアター 様

● 今後「東京ガーデンシアター」はどんなことを目指していきますか。

加無木氏:
先ほど本田が申し上げたように、1日で完結して毎日本番ができるように、お客さまが使いやすい環境を用意し、それによってホールの稼働率を上げていくことを目指したいと思います。

本田氏:
オープンしてから気づいたことですが、われわれが目指す姿は、平日はライブハウスの大型版みたいな感じで、当日ちょっと行こうかなってふらっと行ける場所であり、土日はメジャーアーティストさんのアリーナツアーの一部として組み込んでいただけるホールでもある。そのように「東京ガーデンシアター」はライブハウスからアリーナツアーまで、幅広い使い方ができる劇場なのだと思います。ですからわれわれの側もそうした使い方にさらに柔軟に応えられるようになれば、もっと面白いコンセプトの会場になるのではないか、と思っています。

音響機器だけでなく、音響システムの設計、
施工、そして保守までを含めたオールヤマハで

● このたび「東京ガーデンシアター」の音響設備をヤマハサウンドシステムが担当しましたが、その仕事ぶりはいかがだったでしょうか。

寺田氏:
手際がよかったなんてもんじゃないです。コロナ禍もあって、工程管理が厳しい状況でしたが、音響設備工事だけは群を抜いて早かったです。非常にきっちり仕上げてもらいました。

東京ガーデンシアター 様

音響を担当する 寺田 泰人 氏

● 加無木さんはいかがでしょうか。

加無木氏:
私はもともと、ヤマハサウンドシステムさんは非常に頼れるパートナーだという認識を持っていました。というのも以前私はある劇場にコンサルティングで入ったのですが、その時、ヤマハサウンドシステムさんが工事で入られたんです。かなり厳しい工事でしたが、いろいろな提案をしてくれて、最終的にかなりブラッシュアップされた形で納まりました。また納品後の対応も誠実で、信頼に値するチームだと思いました。ですから今回、ヤマハ「RIVAGE PM7」やNEXO、そしてネットワークまで全部ヤマハさんのシステムを採用しましたが、それは製品だけでなくヤマハサウンドシステムさんの設計・施工、そして保守も含めて全てヤマハサウンドシステムさんにお願いしたいと考えたからです。

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音響調整室で調整卓として使用されている「RIVAGE PM7」

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音響調整室のラック

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メインスピーカーのNEXOラインアレイ

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ステージ下に設置されたサブウーファー「STM S118」とニアフィル用「PS15-R2」

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アンプ室に設置されたNEXO「NXAMP4X4MK2」

東京ガーデンシアター 様

天井に設置された「STM M28」

● ヤマハサウンドシステムが「信頼に足る」と感じられたのは、具体的にはどんな点ですか。

加無木氏:
たとえば、これ、ヤマハサウンドシステムさんの保守点検報告書なんですけど、厚すぎて読めないんですよ(笑)。そのぐらいきちんと保守点検をしてくれるんです。そして細かくいろいろな提案をしてくれる。こちらも好きなこと言いますけど「これ、何とかならない?」って言うと、何かしら提案が上がってくる。そういったやりとりができるコミュニケーションが構築されている。たとえばオープン後にスピーカーの大規模な追加補強を行いましたが、その時も非常にレスポンスよくやっていただけた。寺田も私もヤマハサウンドシステムさんとは、コミュニケーションがとりやすいと感じています。

東京ガーデンシアター 様

● 寺田さんもヤマハサウンドシステムとは以前からお付き合いいただいていたのでしょうか。

寺田氏:
僕もヤマハサウンドシステムさんとは、相当つきあいが長いです。僕はホールの立ち上げに就くことが多くて、よくヤマハサウンドシステムさんと顔を合わせてました。昔の劇場の設備はシンプルでしたが、「東京ガーデンシアター」ってマニュアルが昔の10倍以上厚くなっているんです。それで使い始めの頃って、何かトラブルがあると、マシンの不具合なのか、こちらの使い方が悪いのかわからないんですよね。マニュアルを見ればいいのかもしれないけど、その都度ヤマハサウンドシステムさんに電話すると、みなさんすごいんですよ。電話口で、即答されるんです。他にもホールを手掛けてるはずなのに、あれは本当にすごい!

● 困ったらすぐにヤマハサウンドシステムに電話! ですか。

寺田氏:
すぐ連絡しちゃいます(笑) もうかかりつけ医みたいな感じですね。

ラインアレイスピーカーがリギングしやすい
新たな機構のアイデアを投入

● ここからは「東京ガーデンシアター」に関わったヤマハサウンドシステムのメンバーにききます。阿部さんは、設計担当ですが、どんな点を大切にしましたか。

阿部:
私は今回、ベストなシステムをいろいろご提案をさせていただいく中で、イコライジングにHYFAXのアコースティックメジャーメント/EQプロセッサー「AMQ3」、マトリクスコントローラー「LDM1」という、このホールでベストチョイスと思える機器を採用いただき、音質、使い勝手ともに、ベストに近い、自分でも納得のいくシステムが構築できたと思います。

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マトロリクスコントローラーHYFAX 「LDM1」

東京ガーデンシアター 様

データロガーHYFAX 「DL3M」とアコースティックメジャーメント/EQプロセッサー「AMQ3」

東京ガーデンシアター 様

HYFAX データロガー「DL3 System」による出力監視

東京ガーデンシアター 様

カスタムオーダーされたCRESTRONのコントロール画面

● 柳原さんはいかがですか。

柳原:
阿部と一緒に考えた音響システムを具現化するのが私の仕事です、たとえばスピーカーを設置するにあたって施工図を起こして承認をもらうといった仕事ですが、音響なのでノイズが混入しないようにするために、舞台照明はこっちを通してくださいとか、こっちは舞台音響が使わせてもらいます、とか。そういった調整はたくさんやりましたね。ここは規模が大きいので、空調設備や一般電気設備の方々と折衝・調整するのが大変でした。

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ヤマハサウンドシステム システム設計室 主事 阿部 良生(写真左)
同 技術部 東京技術2課 柳原 涼太(写真右)

● 確かに現場での調整は大変そうですね。

柳原:
たとえばスピーカーを増設した時も、バルコニー天井面が特殊な作りだったのと、取り付けたい所に空調ダクトや客電照明があったりしました。それでわずかな隙間を狙って「ここならどうですか?」って全部回って、寺田さんに確認をいただいて取り付けたという経緯もあって、結構苦労しました。でも、音に妥協しないで施工することが現場の施工管理だと思っています。

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NEXO 「ID24-T」(1階フロア奥の天井に設置)

東京ガーデンシアター 様

バルコニー下に設置されたNEXO 「PS10-R2」

● 長谷さんは計画設計として、「東京ガーデンシアター」でこだわった点などはありますか。

長谷:
最初にお話をいただいたときに、音楽を主体とした8,000人規模の劇場とのコンセプトと聞き考えたことは、常設FOHスピーカーは大規模なものが必要、またFOHスピーカーを持ち込んで仮設吊りする機会もかなり多いだろうということでした。そのような運用の劇場では持ち込みスピーカーを吊りたい位置と、常設スピーカーの吊り位置がバッティングすることが多くて、持ち込みの時は毎回前日に常設スピーカーを降ろして本番後の夜間にまた吊り直す作業が必要となります。その時間と労力が大変なんだ、という話をいままで運用者の方からよく聞いていました。そのためいかに効率よく仮設スピーカーの吊り込みをできるようにするか、を考えました。「東京ガーデンシアター」は図面で確認すると、プロセニアム上部に大きな空間がある、じゃあ使わないときはスピーカーを上げて、常設スピーカーを吊ったまま同じ位置に持ち込みスピーカーを吊るという機構ができるのではないか?と思いつき、舞台機構設備さんへアイデアを提案させていただきました。このように、より運用しやすい施設にしたいということが一番こだわった点ですね。

東京ガーデンシアター 様
東京ガーデンシアター 様

常設のメインスピーカーを上方に昇降し、外部スピーカー用のトラスを下げてリギングすることが可能

東京ガーデンシアター 様

ヤマハサウンドシステム 計画設計室 主幹 長谷 浩史(左)
同 営業部 東京営業所 営業課 白築 佑希恵(右)

● 白築さんは営業として、どんなところにやりがいを感じましたか。

白築:
私はかなり早い段階からこの劇場に携われたことがとても感慨深いです。最初は2016年の春ぐらいで、まだおおまかな建築図面しかなく計画設計の長谷と相談しながらご提案して、見積もりをし、金額の交渉をし、工事を受注して、完成するまで全ての過程が見られましたし、こんなに素敵な劇場ができたことが本当に嬉しいです。

● 他の方は実際に劇場ができあがった時はどんな気持ちでしたか。

阿部:
やっぱりみんなで話しながら作ったので嬉しかったです。私と柳原、そして加無木さんや竹中工務店の建築設計や技術研究所の方たちとかなり話しました。そこからベストなシステム、施工を選んでいただいてよかったです。

柳原:
メインスピーカーをつなぎ終わってシステムの電源が入った時、ちょっと音を出そうよって言って阿部と好きな音楽を再生してみたのが気持ちよかったです。

白築:
完成後、私のまわりで東京ガーデンシアターにライブを聴きに行ったという声をよく聞くようになりました。そういう話を聞くと、このホールがたくさん使用されて、多くの人が集まっていることを実感できて、それがとても嬉しく思います。

長谷:
加無木さんや寺田さんにヤマハサウンドシステムはコミュニケーションがとりやすいと言っていただいたんですけど、私たちの一番の強みがそれだと思うんです。音響機器の知識を持って設計施工出来る人はたくさんいますが、実際に運用されている方々と向き合って会話をし、舞台スタッフさんの目線で運用を理解し、舞台のさまざまな知識を持って会話できるようにすることが、とても大切なことだと考えています。

東京ガーデンシアター 様

舞台運営用ITVシステム

東京ガーデンシアター 様

ITVシステム用カメラ(舞台正面用)

● 今後ヤマハサウンドシステムは保守として、長くお付き合いさせていただくことになります。加無木さん、そこで期待することがあれば一言お願いします。

東京ガーデンシアター 様

加無木氏:
いま長谷さんからお話があったコミュニケーションですね。今後いろいろな問題が出てくると思うんですが「こうするためにはどうしたらいいの?」「じゃあ図面を書きます」というキャッチボールが大切だと思います。僕がボールを投げれば、かならず受け取ってくれる安心感がありますから。先ほどのスピーカーの増設はまさにそれで、社内の承認を得るために綿密なプランと具体的なメリットを示す必要があったのですが、それを丁寧に、かつ辛抱強く対応していただいて、ヤマハサウンドシステムさんに助けられて、今ここにあるというところです。

寺田氏:
僕としては、これ以上望むものはないです。コロナ禍で始まってからのお付き合いで、本当に長くいる時間が多かったので。コロナ禍が収まったら飲みに行きたいですよね(笑)。現場の運用状況はこちらから発信しますので、ヤマハサウドシステムさんからも情報を発信していただきたいと思います。この劇場は乗り込みのエンジニアさんがたくさんいらっしゃる現場ですから、機材も技術も、新しいものがどんどん入ってきます。私たちもそれをキャッチアップしていく必要がありますから、ヤマハさんの新しい卓のデモンストレーションなど、実験する劇場としてもどんどん使っていただけたら、こちらとしても嬉しいです。

● 本日はご多忙の中、ありがとうございました。

東京ガーデンシアター 様

 

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<施設概要>
建築主:住友不動産株式会社 所在地:東京都江東区 設計施工:株式会社 竹中工務店 敷地面積:21,560.00㎡ 延床面積:83,970.55㎡ 階数:地下1階、地上16階

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