ヤマハサウンドシステム株式会社

音響ラックの熱対策

厳しい残暑が続いていますね。熱中症対策、きちんとできていますか?
熱中症対策といっても、今回は私たちの大切な音響機器にとってのお話です。
音響機器は複数の機器をラック(機器収納架)に組み込んで使用することが多いですが、適切な熱対策ができていないと高温になって故障したり、音が出なくなってしまったりする恐れがあります。
今回は、ラック内の熱対策の考え方と、ラックに組み込む際に気をつけたいポイントをご紹介します。

音響ラックの熱対策

熱の特徴

まず熱対策をする基本として、熱の特徴を知っておきましょう。
熱には、高温側から低温側へと移動する性質があります。熱の移動には3つの種類があり、それぞれをご紹介します。どれも身近に体験していることなので、イメージしてみてください。

① 熱伝導

熱が物を伝って移動する現象を熱伝導といいます。パワーアンプを直に触ったときに熱が手に伝わって温かいと感じたりしますね。ラック内に機器が隙間なく詰まっていると、お互いが熱を伝えあってどんどん熱くなってしまいます。

② 熱対流

気体や液体は、温かいと上へ・冷えると下へ移動する性質があり、これによって熱が移動する現象を熱対流といいます。機器から出たあたたかい空気は熱対流によって上昇するので、ラック上部にあたたかい空気が溜まらないように空気の逃げ道を考えてあげる必要があります。

③ 熱放射

物体が電磁波として熱エネルギーを放出し、直接触らなくても手をかざすとあたたかく感じる現象を熱放射といいます。例えば、太陽や火は直接触れることができませんが、熱放射によって私達に熱を届けています。ラック内の機器が熱放射することにより、周囲の機器に影響が及ばないように考慮する必要があります。

音響ラックの熱対策

音響機器をラックに組み込む際に気をつけること

音響機器をラックに組み込む際は、音響機器の操作のしやすさとともに、熱の特徴を理解した上で配置を考えましょう。

① 部屋の環境をチェック

ラックに音響機器を組み込む前に、ラックを設置する場所の環境を確認しましょう。
エアコンのある部屋では、冷房をつけて部屋とともに音響機器を冷やします。ポイントは、熱くなったときに慌てて冷やすのではなく、一定の温度で冷やしつづけることです。急激な温度変化があると結露してしまい、その水分で機器が故障する恐れがあり、逆効果になってしまいます。ホールや劇場など大きな施設のアンプ室は、パワーアンプの過熱と結露を防ぐため、常時冷房を稼働させます。
冷気が届きにくい場所では、サーキュレーターで空気を循環させるのも効果があります。

② ラック選び

機器を組み込むラックにはファンがついているものや、背面がメッシュ状に開いているもの、側面・背面のパネルが取り外しできるものなど、さまざまな種類があります。機器の発熱量や、ファンの騒音が許容できるかなど、優先したい要素に応じて選びます。
当社で施工する場合は、設置場所によってラックを使い分けています。例えば舞台袖や音響調整室は静けさが求められるため側面や背面のパネルが閉じていてファンの騒音の小さいタイプを、アンプ室は発熱量の多いパワーアンプをしっかりと冷やせるように、背面パネルが開いたタイプなど、通気性の良いものを選びます。

③ 機器の組み込み

機器と機器の間は空間を確保するようにしましょう。一般的にパワーアンプは発熱すると認識されていますが、ミキサーの信号処理部、デジタルプロセッサーなどパワーアンプ以外のものも発熱することを知っておく必要があり、注意が必要です。
また、熱の特性上、機器から排出された暖かい空気は上に行くので、ラックの上部になるにつれて温度が高くなります。熱くなりやすい機器をひとつのラックに集中して組み込まないようにしましょう。

空間を確保できたら、熱を効果的に排出するために空気の流れを確保しましょう。通気口やファンの位置を確認し、ケーブルで空気の流れを妨げないようにします。

音響ラックの熱対策

上部は熱くなりやすいので特に注意

音響ラックの熱対策

ケーブルがファンを塞いでしまっている様子

ラックの上部にファンがついている場合は、機器と機器の間の空間をブランクパネルで塞ぎます。こうすることで、機器から出た暖かい排気が効率よくラック外へ排出されます。
ラックにファンが付いていない場合は、穴の空いた通気パネルを使って、なるべくラックの外へ温かい空気を逃がすようにしましょう。
なお、今回は熱対策の基本的な考え方をご紹介していますが、製品によって動作保証温度や間隔の空け方が指示されている場合もあります。説明書などをご参照ください。

④ 温度監視

ラック内の温度を監視する手段を用意しましょう。温度が異常に上昇したとき、早期発見に役立ちます。当社のHYFAX データロガーシステム「 DL3 」では、ラック内の温度を監視し、異常時にアラートを表示させることができます。

音響ラックの熱対策

「DL3」の温度監視画面

⑤ 使いやすさ・メンテナンスのしやすさ

ここまで熱対策に焦点をあててお話してきましたが、熱について考えるあまり、日々の操作がしにくくなったり、メンテナンスしにくくなったりしては元も子もありません。
当社では、熱問題をクリアした上で、使いやすくメンテナンスしやすいラック配置を考えます。例えばなるべくパワーアンプを系統ごとに配置したり、配線が複数のラック間を行き来させないなど、シンプルな設計を行います。

音響ラックの熱対策

パワーアンプがずらりと綺麗に並んでいる

まとめ

機器が発する熱の特徴と、ラックに組み込む際のポイントをご紹介しました。これらのポイントをおさえることで、機器の過熱を予防し、正常な動作を長く維持することができます。ラックに機器を追加するときや、移動型のラックをご自身で組むときなどにも、参考にしていただければ幸いです。
ラックの熱問題をクールに対策して、この夏も快適にご安全にお過ごしください!

私たち人間の熱中症対策については、Tips:ホール・劇場で働くみなさんのための熱中症対策 もぜひご覧ください。

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