ヤマハサウンドシステム株式会社

信号と電源をLANケーブル1本で!
便利なPoE技術

ホールや劇場では、ネットワークを構築して信号を伝送することが多くなっています。このネットワークは世界で最も普及している有線LANの規格である、イーサネット(Ethernet)で構築します。そしてイーサネットを利用した便利な技術のひとつが、今回のテーマであるPoEです。一見音響には関係なさそうですが、実は音響機器や設備でもメリットがあります。いくつかポイントをご紹介します。

PoEとは?

PoEとはPower over Ethernetの頭文字を組み合わせた略語で、イーサネットで使用するLANケーブル(ツイストペアケーブル)を通じて電源を供給する技術です。IEEE (米国電気電子技術者学会)で標準化されています。

PoEには電気を与える機器[PSE(Power Sourcing Equipment)]と受ける機器[PD(Power Device)]があります。通信技術の発達に従っていくつかの規格が生まれ、その規格ごとに仕様が異なります。PSEとPDで同じ規格に対応することが大事です。

PSEの一例

PDの一例

表1 PoE規格ごとのPSEとPDの対応表

  PD(受電機器)
PoE(IEEE802.3af) PoE+(IEEE802.3at) PoE++(IEEE802.3bt)
PSE
(給電機器)
PoE(IEEE802.3af) × ×
PoE+(IEEE802.3at) ×
PoE++(IEEE802.3bt)

PoEを使用するメリット

PoEを使用すると、信号伝送だけでなく電源供給もLANケーブル1本で可能になるため、以下のようなメリットがあります。

・ 仕込みの時間短縮:
接続機器の配線が少ないため、配線の仕込み時間を短縮できます。仮設で使用する際には特に有効です。

・ コスト削減:
電源ケーブルや電源アダプターを削減できます。音響機器1台ごとに信号と電源のケーブルを2本敷設したり、本体に電源アダプターを取り付けたりする必要がなくなります。

・ 自由度アップ:
運搬や取り付け位置の自由度が向上します。機器の設置場所に必ず電源コンセントがあるとは限りません。LANケーブル1本で電源供給までできるので、電源供給の悩みが解消できます。

・ 見た目がスッキリ:
電源ケーブルやアダプターがなくなり、機器の接続ケーブルが少なくなることで、見た目の印象がスッキリします。

PoEで注意したいこと

PoEを安全にご利用いただくためにはいくつか注意点があります。ポイントをおさえて活用しましょう。

・ PoE規格と給電電力/消費電力を確認:
PSEが供給可能な電力量には限界があります。PoE対応のネットワークスイッチなどは複数のPDを繋ぐことができますが、すべてのPDの消費電力の合計が、ネットワークスイッチの最大給電能力を越えないようにご注意ください。
PoE++対応のネットワークスイッチとPoE++対応で90WのPD機器を例にします。PSEとなるネットワークスイッチの最大給電能力が240W場合、電源供給できるPD機器は2台までです。

表2 PoE規格ごとの最大給電電力と最大受電電力

PoE規格 PSE最大給電電力 PD最大受電電力
(消費電力)
PoE(IEEE802.3af) 15.4W 12.95W
PoE+(IEEE802.3at) 30W 25.5W
PoE++(IEEE802.3bt) 60W/90W 51W/71.3W

・ PoEポートかどうか確認:
PoE対応のネットワークスイッチなどの接続ポートが全てPoE給電に対応しているとは限りません。PD機器の台数分、PoE対応の接続ポートがあるか確認しょう。また、同一の機器でもポートによって、給電電力が異なることもありますので、ご注意ください。

・ LANケーブルは規格と最大長に注意:
PoEに使用するLANケーブルはカテゴリ5e以上のものを使用してください。また、イーサネットの規格ごとにLANケーブルの最大長が規定されています。施設内の配線を使用する場合にも全長が規定の長さ以下であることを確認しましょう。(参考:LANケーブルは何mまで使えるの?│Tips

・ ファンの音がする場合があります:
PoE対応ネットワークスイッチなどのPSE機器には、冷却ファンを搭載しているものが多いです。静けさが求められる音響調整室や舞台上などでPoEを使う場合は、冷却ファンが非搭載のPoEインジェクターがお勧めです。

PoE対応の音響・映像機器

PoEで動作する音響・映像関連製品(PD機器)にはどのようなものがあるでしょうか。ここでは、主なものを示します。

・ワイヤレスアクセスポイント

・デジタルインターカム

・ネットワークカメラ

・パワードスピーカー

まとめ

今回はPoEをご紹介しました。この技術のメリットを活かすことで、音響機器の選択肢や設備での自由度が向上すると考えています。この記事の内容が、少しでも音響システム構築の幅を広げることにつながれば幸いです。

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