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人はどうやって音の方向を感じるの?

エンジン音を聞いて車の接近を予感したり、見失った携帯電話を着信音をならして探したりした経験はありませんか?私たちは日常生活の中で、音の方向を感じ取って生活しています。
では、私たちはどのようにして音だけを頼りに、姿の見えない物の位置や方向を判断できるのでしょうか?今回はこの不思議な能力について考えてみましょう。

音の方向を判断する仕組み1 音量差と時間差

音の方向を判断できるポイントとなるのが、左右2つの耳に届く音の「音量差」と「時間差」です。それぞれについて少し詳しく見てみましょう。

■ 音量差

たとえば、あなたの正面にあるスピーカーから音が出ているとします。このとき、この音は両耳に同じ音量で届きます。
では、右前方にスピーカーがあるときはどうなるでしょう。スピーカーからの距離は左耳より右耳の方が近いので、そのぶん音量は大きくなりますね。このとき脳は、左右2つの耳に届く音のわずかな音量の差を比べて、大きい方にスピーカーがあると判断しています。
つまり、1つの音が両耳に同じ音量で聞こえていると、正面に音の方向を感じて、左右に音量の差があると、大きい方に音の方向を感じる仕組みになっています。左右のイヤホンで聴く音楽のボーカリストが、眉間の真ん中あたりで歌っているように感じるのはこのためです。
ミキサーについているPANはこの仕組みを利用して、LとRのスピーカーに音量差をつけることで、音が左や右から聞こえるようになります。

人はどうやって音の方向を感じるの?

音量差によって音の方向を判断している

人はどうやって音の方向を感じるの?

PANを使った定位の仕組み

■ 時間差

あなたの右前方にスピーカーがあるとき、右耳の方が左耳よりスピーカーが近いので、そのぶん音が耳に届くタイミングも早くなります。このとき脳は、左右2つの耳に届くわずかな到達時間の差を比べて、音が早く到達する方に音源があると判断します。
耳は左右についているので左右の方向感に対して特に敏感ですが、上下や前後の方向も同じように判断することができます。

人はどうやって音の方向を感じるの?

時間差によって音の方向を判断している

この仕組みを利用して、ホールや劇場にあるスピーカーから出る音も、自然に聞こえるように調整しています。
後方の客席エリア向けに設置された補助用スピーカーを見たことがあるでしょうか?このスピーカーは、メインスピーカーでは遠すぎて届かない音を近くで補うためのものですが、客席と近いぶん音が早く届くので、不自然に目立つように感じてしまいます。舞台に没頭したいのに、脇にある小さなスピーカーの方向から音がしたら少し気になってしまいますよね。
これを解決するには、メインスピーカーから出た音が補助用スピーカーのところに届くタイミングに合わせて、補助用スピーカーから音が出てくるように信号を遅らせます。こうすることで、音の方向をメインスピーカーに固定したまま、補助用スピーカーで音を補うことができます。

人はどうやって音の方向を感じるの?

補助用スピーカー(手前)とメインスピーカー(奥)

人はどうやって音の方向を感じるの?

補助用スピーカーをメインスピーカーになじませる調整

音の方向を判断する仕組み2 頭部伝達関数

音の方向を判断するとき、音量差と時間差のほかに、耳や頭の形も関係しています。
真正面からの音と真後ろからの音は、どちらも両耳への距離は同じですが、方向の違いを区別することができますよね。これはなぜかというと、耳や頭の形、顔の凹凸など自分の形による音質の違いを脳が記憶して、その経験から音の方向を判断しているからです。
たとえば、真正面で鳴っている音はほぼ直接耳に入るのに対して、真後ろで鳴っている音は頭の形に沿って耳をまわりこんでから聞こえます。この聞こえ方の違いから、正面で鳴っている音なのか後ろで鳴っている音なのか判断できるということです。このような耳や頭の形による音響特性を、「頭部伝達関数」といいます。この特性は正面や後ろの水平方向だけでなく、耳の上や下といった上下方向にもあります。
頭部伝達関数を応用したものに、音が頭の周りを360度囲むように聴こえるバイノーラルの技術などがあります。

人はどうやって音の方向を感じるの?

まとめ

音の方向をどうやって判断するのかについてご紹介しました。左右の耳に届く音のほんの微細な差で方向を判断しているなんて、身体の仕組みは不思議ですね。
音響の世界でも、この仕組みを利用してさまざまな工夫や調整が行われています。たとえば、ホールや劇場では、音を舞台の中から聞こえるようにしたり、客席の天井から降ってくるようにしたりなど、演出の効果もその一部といえます。音響と身体の仕組みは、一見関係がないようで実はとても密接に関わっているのです。身体の仕組みと音について、より深く学んでみるのも、面白いかもしれません。
また、複数のスピーカーから出る音の制御を行い、音の方向感を自在にコントロールできる「イマーシブオーディオシステム」も発展を見せています。今後、ホールや劇場での展開が楽しみです。ご興味があればぜひ調べてみてください。

参考:
ヤマハ | AFC Image (yamaha.com) 外部サイト

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