ヤマハサウンドシステム株式会社

ワイヤレスマイクシステムのトラブルの原因とは?

ワイヤレスマイクシステムはホール、劇場などの固定設備で広く普及しており、さまざまな用途で使用されています。ワイヤレスマイクシステムは、送信機(トランスミッター)であるワイヤレスマイク、電波を受信するアンテナ、データを音声に戻す受信機(レシーバー)などで構成されています。マイクケーブルなどを使用しなくても拡声ができる便利なシステムです。しかし、電波を使用して音声を伝搬するため、場合によっては音が途切れたり、雑音が入ったりすることがあり、運用に支障をきたすことがあります。ここでは、音声伝搬の仕組みとワイヤレスマイクとアンテナ間で起こるトラブルの原因について紹介します。

電波ってなに?

電波とは、磁界と電界が相互に発生する波のことを言います。電界は電圧がかかっているものの周辺に発生し、磁界は電流が流れるもののまわりに発生します。単位は波が1秒間に何回振幅するかを表す周波数(Hz)で決まっており、高い周波数ほど直進しやすく遠くへ伝わる性質を持っています。ラジオ放送、テレビ放送、衛星放送、携帯電話、GPS、無線LAN、マイクロ波通信などで使用しています。用途によって使用できる周波数帯が定められています。ワイヤレスマイクシステムで使用できる電波の周波数は、表1のとおりです。

表1 ワイヤレスマイクシステムで使用できる電波の周波数

表1 ワイヤレスマイクシステムで使用できる電波の周波数

どうやって音声信号を伝搬しているの?

音声信号の周波数はおおよそ20Hz~20kHzです。送信機では、音声信号を電波として利用できる高い周波数(搬送波)に変換を行います。このように周波数を変換することを変調と言います。高い周波数に変調することにより、送信機内で電磁誘導が起きて磁界が発生します。同時に電界が発生することにより相互に影響し合い自由空間を伝わっていきます(図1参照)。自由空間に飛んでいる電波は、誘導体と呼ばれるアンテナ内のコイルで受信します。アンテナで受信した電波は、受信機に入力され、復調により音声信号に戻します。変調の方式はアナログ、デジタルなどメーカーや製品ごとに異なります。

図1:磁界と電界による電波の伝搬

図1 磁界と電界による電波の伝搬

電波に関わるトラブルの原因とは?

1:距離による電波の減衰

電波は、放射状に広がるため伝搬距離が2倍になれば、面積は4倍になり、電波の強度(電力密度)は1/4になります。すなわち、距離の2乗に比例して減衰するので、ワイヤレスマイクとアンテナの距離が離れるほどアンテナで受ける電波の強度は弱くなります。また、距離だけでなくワイヤレスマイクとアンテナの間に壁や人がいると電波を遮るため、アンテナで受ける電波の強度が弱くなります。
この対処法として、アンテナをワイヤレスマイクの使用エリアから物理的に離さず、見えるところに設置することが有効です。例えば、舞台上に大道具などを設営する場合は、高く見晴らしのいい位置にアンテナを設置するのも有効な方法です。

ご注意!
ワイヤレスマイクとアンテナが近すぎるとエネルギー量が多い状態で受信するため、受信機がオーバーロード(過大入力)を起こす可能性がありますのでご注意ください。

2:外来からの電波の飛び込み

ワイヤレスマイクシステムを使用していると使っていないチャンネルのRF(Radio Frequency)シグナルインジケーターが点灯することがあります。これは、使用しているワイヤレスマイク以外から発せられた電波(外来からの電波)の影響を受けているということです。また、携帯電話の基地局や高圧線などがあると、電波が誘導されワイヤレスマイク用のアンテナで受信している可能性もあります。
特にB帯のワイヤレスマイクシステムは、ホール、劇場だけでなく、学校や会議室など、さまざまな施設で多く使われています。そのため、同じ施設内の諸室や隣接した学校などで使用しているB帯ワイヤレスマイクシステムの電波の影響を受けることがあります。例えば、隣の学校でワイヤレスマイクを使用している時に電波が飛び込んでくる場合、電波の発信元は隣の学校であると特定することはできます。しかし、隣の学校にワイヤレスマイクを使用しないように依頼するなど、周りの環境を変えることは難しいでしょう。そのため、受信側で飛びこんできている電波を避けたチャンネルプランに変更することで回避できる可能性があります。
それでも回避ができない場合は、B帯をA帯(無線局免許および運用調整が必要)の製品に変更したり、物理的に建築で電磁シールドを設けて外来電波を遮断したりする方法があります。不具合などが発生した場合には、まず施設内で使用しているチャンネルプランを把握し、外来からの電波の有無などを調べてみましょう。

図2:ワイヤレスマイクシステム使用できる周波数帯域

図2 ワイヤレスマイクシステムで使用できる周波数帯域

3:ノイズ発生や誤検知

複数のワイヤレスマイクを使用するとき、それぞれが発する電波が干渉することで発生する電波(意図しない電波)の影響を受ける場合があります。例を挙げて紹介します。
下の例に示すRoom Aで2本のワイヤレスマイクを同時に使用すると、使用している周波数以外の電波が発生します。この電波をRoom Bのワイヤレス受信機で受信し、Room Bでワイヤレスマイクを使っていない時でも受信機のRFシグナルインジケーターが点灯することがあります。このまま、Room Bでワイヤレスマイクを使用すると、アナログシステムではノイズが出たり、デジタルシステムでは音が途切れたりすることがあります(図3)。

例)ノイズ発生や誤検知

【環境:ワイヤレスマイクシステムのチャンネルプラン】
・Room A            ・Room B
 チャンネル1:807.000MHz    チャンネル1:808.000MHz
 チャンネル2:807.500MHz

【症状】
・Room AとRoom Bの隣接する会議室の両方でワイヤレスマイクを使用すると、Room BのワイヤレスマイクをMuteにしても受信機でRFシグナルインジケーターが点灯する。

図3:ノイズ発生や誤検知イメージ

図3 ノイズ発生や誤検知イメージ

同じ施設内のホールや諸室などが近接している場合に起こりえる症状で、回避する方法としては以下の3つがあげられます。ワイヤレスマイクのチャンネルプランは、使用する周波数だけでなく、電波の干渉により発生する周波数の影響も加味しながら作成することが必要です。

① メーカーが推奨するグループチャンネルを使用する
② ワイヤレスマイクシステムを使用する前にメーカーシミュレーションソフトを使用し、使用可能な周波数を確認する
③ 隣接施設の設備との干渉を確認し、使用していない受信機等でインジケーター等が点灯しないか等を確認する

まとめ

ここまで紹介したように、ワイヤレスマイクシステムの電波は、距離による減衰や周りの環境によって妨げられることがあります。そのため、事前に導入場所の電波状況を確認し、使用する周波数帯域を考慮した機種選定が必要です。また、アンテナは、ワイヤレスマイクを使用する場所を見渡せる位置に設置し、電波の受信レベルを確保して安定した運用ができるようにしましょう。

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