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第二幕 Act2
有限会社 空間創造研究所 代表取締役 米森 健二 様

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第二幕 Act2 有限会社 空間創造研究所 代表取締役 米森 健二 様

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有限会社 空間創造研究所 代表取締役 米森 健二 様

第二幕 Act2 有限会社 空間創造研究所 代表取締役 米森 健二 様

有限会社 空間創造研究所 代表取締役 米森 健二 氏(写真 左)
ヤマハサウンドシステム株式会社 代表取締役 平井 智勇(写真 右)

有限会社 空間創造研究所 代表取締役 米森 健二 氏(写真 左)
ヤマハサウンドシステム株式会社 代表取締役 平井 智勇(写真 右)


「Intermission(幕あい)」とは、一幕が終わって、次の一幕が始まるまでの間。舞台に幕が下りている間のこと。このシリーズでは、ヤマハサウンドシステムが日頃お世話になっているホール・劇場の世界を牽引するキーマンの方々に、市場のトレンドやヤマハサウンドシステムへの期待などを、その仕事の「Intermission(幕あい)」に語っていただきます。
新シリーズ第2回にご登場いただくのは、草加 叔也氏からバトンを引き継いで空間創造研究所の代表取締役に就任された米森 健二氏。米森氏の劇場づくりへの思いや、この業界をめざす若い方々へのメッセージなどを弊社代表取締役 平井智勇がうかがいました。

第二幕 Act2 有限会社 空間創造研究所 代表取締役 米森 健二 様

プロフィール 米森 健二(よねもり けんじ)
1971年佐賀県生まれ。東京都内の建築設計事務所を経て1997年空間創造研究所入所。劇場・ホールの基本構想、基本計画から設計・監理まで劇場コンサルタントとして関わる。「KAAT 神奈川芸術劇場」「彩の国さいたま芸術劇場(改修)」「東京芸術劇場(改修)」「久留米シティプラザ」「日生劇場(改修)」「磐田市民文化会館かたりあ」「那覇市文化芸術劇場 なはーと」などを手掛け、近年は各地の劇場で行われる舞台技術セミナーやワークショップなどの講師も務める。2022年7月、有限会社空間創造研究所代表取締役に就任。

学生時代のアルバイト経験により建築の世界を目指し、
空間創造研究所には設立当初から参加

平井:『幕あい』の前シリーズ【トップ対談】では、第1回 のゲストとして、その当時、空間創造研究所の代表取締役だった草加 叔也さんにご登場いただきました(草加様の記事はコチラから)。本日は、草加さんから代表取締役の任を引き継がれた米森さんにお話をおうかがいします。よろしくお願いします。まずはこの業界に入られたきっかけを教えてください。

米森氏:建築業界へ入ることは学生時代から目指していましたが、この業界と言いますか劇場コンサルタントとして活動するきっかけは「空間創造研究所に入所したから」です(笑)。その手前をお話しすると、私は九州で生まれたのですが、中学2年生の時に父が行っていた事業が失敗して、やむを得ずに一家で神奈川に移ってきました。そんなこんなで家計も苦しく私も中学卒業と同時に父が働く水道工事の会社でアルバイトをしていたんです。そこが建築の世界への入り口になりました。建築現場は、たとえば一つの個人宅でもその家に住む家族のために鉄筋工から型枠大工、大工、設備屋さんなど、数多くのいろんな職人が次々にやってきて知恵や技術を出し合いながら工事を進めていく。それがすごく面白いと思いました。そして現場でいろんな職人さんたちとお話するうちに、いつかは自分もこの道に。つまり建築の世界に進みたいと思うようになったんです。

第二幕 Act2 有限会社 空間創造研究所 代表取締役 米森 健二 様

有限会社 空間創造研究所 代表取締役 米森 健二 氏

平井:空間創造研究所にはどのようなきっかけで入られたのですか。

米森氏:建築現場のアルバイトを続けながら建築設計の専門学校に入学し、卒業後、20歳で東京都内の建築設計事務所に就職しました。そこでは個人住宅や都営住宅、公衆トイレの設計なども経験させてもらっていたのですが、その時の上司が草加と大学の先輩後輩の関係で、草加と上司が劇場の設計(当時はコンサルタントではなく設計と聞いていた記憶が(笑))を中心に手がける空間創造研究所を立ち上げるということで退職したんですね。その後にその上司から手が足りないからお前来ないかと誘われたのがきっかけです。

平井:空間創造研究所の創業メンバーなのですね。

米森氏:そうです。立ち上げに参加しただけですけどね(笑)。

舞台技術のプロの方々から多くを学びながら
劇場コンサルとして鍛えられた日々

平井:最初は建築設計事務所に入られて一般的な建築の経験を積まれたと思いますが、劇場の建築となると、必要とされる知識や技術は全く違うのでしょうか。

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ヤマハサウンドシステム株式会社 代表取締役 平井 智勇

米森氏:全く違いましたね。一般的な建築と言っても設計でそれほど多くの建築に係わったわけではありませんが、私は現場でアルバイトをしていましたし、建築設計事務所で図面を描いていたので、建物を建てるということについてはある程度の基本的な知識は有していたつもりでした。でも劇場建築というか、そもそもの舞台用語についてはそれこそ「上手(かみて)」「下手(しもて)」といった基本的な専門用語も知らない。舞台機構、舞台照明、舞台音響って何?というまったく知識ゼロの状態で空間創造研究所でのキャリアのスタートでした。そんな状況から草加に劇場建築だとか舞台の“いろは”を教わっていきました。
特に最初の頃にわからなくて困ったのが、劇場という場所ではどういう人たちがどのような機材や設備を使って舞台作品をつくっているのかということです。学生の頃から音楽や演劇、ミュージカルを観に劇場に行っていましたので客席から舞台を観たことは何度もありましたが、劇場の裏方の動きはわからない。劇場というものは、準備段階でどのようなスタッフがどういう作業をするのか、そして本番中はどう動くのかがわからなければ当然ですが何もコンサルティングはできないんです。劇場の中に、何がどうしてそこにこれだけ必要となるのか。そういったことを関わらせていただいた劇場整備プロジェクトの中で、それこそ舞台に関わる一流のプロフェッショナルの方々にたくさん教えていただきました。たとえば「可児市文化創造センター」では舞台監督の三上司さん、舞台音響では(ステージオフィス)の市来邦比古さん。「シアター1010」では舞台美術家の朝倉摂さん、舞台監督の北条孝さん、舞台音響で高橋巌さん、「KAAT(神奈川芸術劇場)」では現館長の眞野純さん、副館長の堀内真人さん、エスシーアライアンスの松木哲志さん。「久留米シティプラザ」では舞台監督の菅原多敢弘さん、舞台音響で渡邉邦男さん、そしていずれのプロジェクトも照明では服部基さんなどなどご紹介しきれませんが、各分野の大御所の方々から、劇場はこうあるべきで、それにはこういう機能が必要なのだ、ということをきちんと理論立てて、細かく教えていただきました。それらは私にとって大変貴重な学びになっています。

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平井:舞台技術の方々の中には、上演作品の制作側の方もいらっしゃいますし、劇場施設で活躍される方もいらっしゃいますね。

米森氏:劇場の舞台スタッフの皆さんとは、「太陽劇団Théâtre du Soleil」が「新国立劇場(中劇場)」で上演した『堤防の上の鼓手』(演出アリアーヌ・ムヌーシュキン/2001)というお芝居ですとか、「ドイツ座」が「彩の国さいたま芸術劇場(大ホール)」で上演した『エミーリア・ガロッティ』(演出ミヒャエル・タールハイマー/2006)に技術監督補佐として携わらせていただいたときに、「新国立劇場」や「彩の国さいたま芸術劇場」のスタッフと協働することでいろいろ勉強させてもらいました。「太陽劇団」の公演のときには仮設の客席を主舞台につくるとか、奥舞台に設けたステージに縦横10メートル深さ1メートルの水槽を設置して100トンの水を張るなど、けっこうな難題がたくさんあり、当時「新国立劇場」の技術部長だった伊藤久幸さんをはじめ、消防の方々といろいろ相談しながら本番を迎えましたが、その時は「劇場ってこういう人たちがこういう動きをして成り立っているんだ」と、具体的に知ることができました。

平井:米森さんはこれまでに多くのプロジェクトを手がけていらっしゃいますが、特に印象に残っているものはありますか。

米森氏:劇場というものをプロフェッショナルな劇場スタッフと工事段階で徹底的につくりこんでいったということでは「KAAT」が強烈でしたね。工事に入った直後に現在の副館長(事業部長兼任)である堀内真人さんが準備室に入られて、設計図の見直しから始まり、さまざまな課題について議論を重ねました。それを私たちは千本ノックと呼んでいたのですが(笑)、その状態での現場が2年間くらいずーっと続きました。堀内さんだけではなく舞台照明では大石真一郎さん、舞台音響では松木哲志さんなどの意見や要望・指摘を聞いて検討し「これではどうか?」と返すと、新たに別の視点からの指摘が返される、ということを何度も繰り返す中で、舞台設備、建築の各パートが持つ機能について、その使われ方、必要性、使い方によって生じる危険性などを詳細かつロジカルに説明してくれました。同時期に「東京芸術劇場」ですとか「彩の国さいたま芸術劇場」の改修も劇場スタッフと詳細な協議を行った上で検討を進めることができたプロジェクトでしたので今でも思い出します。今から思うとそういうタイミングだったんですね。あの2年間は本当に濃い時間でした。個人的にすごく財産になっています。

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平井:最初に劇場コンサルタントとして独り立ちされたプロジェクトは何だったのでしょうか。

米森氏:独り立ちという訳ではないのですが「劇場コンサルタントとしてやっていっていいんだ」と思わせてくれた人ならいます。草加と一緒に関わるようになったそのプロジェクトの第1回目の現場打ち合わせの後にある方が「僕は草加さんを全面的に信頼していて、劇場の設計をやるときは必ず草加さんにお願いしている。その草加さんが〝任せる〟という判断を下したのであれば、僕は100パーセント米森さんの意見を支持する。何を言ってくれても構わない」と言ってくれました。それを聞いた瞬間に「あ、劇場コンサルタントとしてやっていいんだ」と思わせてもらいました。私がまだ2年目か3年目くらいのとき、「可児市文化創造センター」のプロジェクトでの話です。

平井:それをおっしゃったのは香山建築研究所の長谷川祥久さんですね。

米森氏:そうですね(笑)。その言葉は非常に大きかった。ただ、コンサルタントとしてやるようになった当初は草加を追いかけるばかりだったんです。劇場に関して全方位的な知見と経験を有している草加のようにならなければコンサルタントではないと思っていたので。しかしあるとき同じ土俵で勝負するのは無理だと悟りました。だったら自分が劣っていると感じているところ全てを補うことを目指すよりかは、今やれているところを伸ばしたほうがいいのではないか、その方が未来があるんじゃないかと発想を転換したんです。そこでようやく劇場コンサルタントとして腹が括れた気がします。

劇場コンサルタントがやるべきことは
使える劇場、安全な施設空間をつくること

平井:劇場コンサルタントとして日ごろ意識されていること、心がけていらっしゃることを教えてください。

米森氏:劇場作りに関しては、弊社の草加がこの幕あいで語っていることと全く同じ気持ちです。それを踏まえて一言いうならば、建築に関しては「作れることと、使えることは違う」ということを気にしながらやっています。劇場の機能として盛り込む色々なアイデアも建築技術として作れはしますが、それが使えるものかと言ったらまた違ってきます。大きさであったり重さであったり使う手順であったり。そこまでをしっかりと見極めたうえで検討をしていくことを意識しています。また劇場は、多くの人が集って滞留する空間であり、さまざまなスタッフの方々、出演者の方々が音楽や舞台芸術を創造し発表する活動を行う空間です。それが故にいろんな危険を孕んだ空間でもありますから「安全性の確保」が極めて重要だと考えています。たとえば舞台空間は、暗い中で仕込み作業が行われたり上演中には同様の環境の中で出演者の方々が表現を行ったりします。工事中なら作業灯を点灯すればつまずく、ぶつかる等の危険を回避するための環境を作れますが、一旦、劇場の運用が始まれば作業灯が使えない環境も出てきますので、床や壁の出っ張りやへこみが思わぬケガのもとになりかねない。ですから劇場内全ての空間での安全性の確保は、お客さまのためにも、舞台スタッフのためにも、まずは私たちが一番にやらなければならないことです。
その一方、専属の舞台スタッフがいない公民館や、自治体の職員やOBなど、舞台専門のスタッフではない方々が運用を担っている文化施設も少なからずあります。そういう施設にプロユース化した機器を組み込まざるを得ない場合、専門でない方が扱いやすいシステムを構築するにはどうすればいいだろう、ということを考えます。近年は照明機器も音響機器も高度化が進んでいます。特に音響については、アナログからデジタルに移行し、さらに「Dante」などのデジタルオーディオネットワークが出てきて、技術的にはもう何でもできます。でも素人には手が出せない。つまり「何でもできる=何にもできない」になっちゃう。そういう場合、あえて使い方を限定することで、わかりやすく使ってもらえるように工夫します。たとえばマイクを使うときはここにケーブルを挿してください、とか、このスピーカーから音を出すときはこのフェーダーを上げてくださいとか。そういうシンプルで簡単な操作性を心がけています。
いずれにしても劇場づくりには多くの人間が関わります。そして大きな劇場をチームで作り上げるのが面白いところです。ですから現場で困っている職人さんやスタッフがいたら、コンサルタントは調整役として走り回るのは当たり前のことです。設計に関しても、場合によっては当初の設計とは違う別の方法を探ることもあります。とにかく劇場コンサルタントである私たちがやるべきことは「いい劇場をつくること」です。最終的にそこに行き着けばいいので、プロセス1つ1つでメンツやプライドなんて関係ありませんから、なんでもしますね。ゴールのほうが大切ですから。だからプライドがないのがプライドだと思ってはいます(笑)。

第二幕 Act2 有限会社 空間創造研究所 代表取締役 米森 健二 様

回線や電気といったインフラを充実させることで
新しい方向性や実験的なニーズにも柔軟に対応

平井:劇場や空間演出に関して、米森さんが感じている最近の傾向を教えてください。

米森氏:音楽で言うと、今はライブだからといって巨大なスピーカーからドーンと大きな音を出して客席に届けばいいという方向ではなくなっています。たとえばサカナクションのようにイマーシブオーディオを取り入れて没入感のある音空間づくりに取り組むアーティストも出てきていますし、Perfumeのように映像演出を高度なレベルで取り入れるなど作り手側の実験的なアプローチは増えていると思います。それは舞台芸術の表現も同じだと感じています。イマーシブオーディオへのニーズが高まる中で、ウォールスピーカーやシーリングスピーカーをはじめとした演出的な音づくりのツールを捉え直す動きが出ていると感じます。

平井:イマーシブオーディオなど実験的なアプローチを実現するツールとしてということですか。

米森氏:そうです。固定設備としてそれらを入れるケースもあると思いますが、こうした新しい方向性が出てきても対応できるようなインフラ、つまり電源や回線を準備しておき、必要なときに効果的な機器を設置できるような環境を整えておきましょう、というケースもあります。今後技術が進展してどんなことが実現できるのか分かりませんからね。

平井:今後20年、30年で劇場はどのように進化していくと思われますか。

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米森氏:演出のニーズが変わり、演出を支援する舞台設備関係もさまざまな技術革新を経ていろんな機器が出現してくる。さらにはバーチャルな環境がよりいっそうリアルになり、多くの人々がそれを享受するようになる。ひょっとしたら劇場のような環境が自宅でもリアルに味わえるのかもしれません。そんな時代が来たとしても、人々が集って、その場で空間を共有するという体験は残っていってほしいと思いますね。舞台や劇場は人々が根源的に求めている空間だと思うので、やはりそこは残していきたい。そのためのお手伝いを続けていきたいと思います。

ヤマハサウンドシステムはいつも期待に応えてくれる
個性豊かなプロフェッショナル集団

平井:米森さんの手がけたプロジェクトに当社として多く関わらせて頂いていますが、ヤマハサウンドシステムについての印象など頂けますでしょうか。

米森氏:一緒に手掛けた現場はたくさんあります。けっこう深く関わったスタッフも少なくありません。現場に関わってくるヤマハサウンドシステムの人たちって提案型なんですよ。そこがいい。たとえば私が作った機器構成や配置のプランを出しても、「本当にこれでいいのか」と考えたうえで、いろいろ提案してくれるんです。そのブラッシュアップの精度がすごくて、そこは本当に信頼しています。それができるのがヤマハサウンドシステムの技術者だと思うし、そこがやれないとヤマハじゃないよね、とも思います。

平井:ありがたいお言葉です。社員みんなに伝えておきます。ある意味プレッシャーをかけられている気もしますが(笑)。

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米森氏:しかもヤマハサウンドシステムのスタッフのいいところは、それが画一的ではないということです。それぞれのメンバーが自分の個性や持ち味を生かした形でさまざまな提案をしてくれる。まさにプロフェッショナルな集団ですよ。だからほんとに仲間として一緒にプロジェクトを進めていけるし、今後もそういった各自の個性を失うことなく、さらに磨きを掛けていただきたいと期待しています。

目を輝かせながらこけら落としの開幕を待つ
客席いっぱいのお客さまたちを見ると辞められない

平井:最後に、劇場や舞台技術の分野に進みたいと考えている方々へ、劇場に関わる仕事の魅力を伝えていただきたいと思います。

米森氏:この仕事の醍醐味は、やっぱりものづくりに携われるところです。それも、日本全国の自治体の方々や地域のみなさん。設計者や建設現場のみなさん。プロフェッショナルな舞台スタッフのみなさんとチームになって一緒に劇場を作っていく。やっぱり「人」なんですよね。劇場に関わるものなんて自分一人だけでは一つもつくれないし、あらゆる局面でいろんな人たちとの関わりがある。ふだんは接する機会がないような人たちと出会うことができて、それがときにはアーティストだったりするかもしれないし……。そういう人たちと議論を交わしながら仕事を進めていくわけなので、プロジェクトごとに見せてもらえる、見える景色が違ってくる。そういう面白さもあります。そして劇場が完成したら、こんどは自分が関わった劇場をいろんな人が活用して、面白いことをやってくれる。こんな楽しい仕事はないと思います。

平井:みんなで作った劇場で完成して、そこでいろんなお芝居や催し物が開催されると思うと、ほんとうに人が笑顔になる、楽しいものを作る仕事なのですよね。

米森氏:企画を立てたり設計をあれこれ考えたりしている時間や、それを現場でなんとか納めなければいけない時には正直言って、非常に苦しい思いをすることもあります。でもその苦しさを越えて劇場が完成し、こけら落としで初めてお客さまを迎え入れて、子どもからお年寄りまで客席が多くの人で埋まって、みんなが期待で目を輝かせながら幕が開くのを待っているという、あの光景を1回でも見たら、もうこの仕事は辞められなくなっちゃう。またそこから次のプロジェクトに向かっていけるんです。

平井:最後にもしよろしければ、これまでに手がけた中でナンバーワン、一番思い出に残っている劇場を教えていただけますか。

米森氏:それはまだないですかね、というか今いえる段階ではないかなと思っています。もちろん自分が関わらせていただいたものに対しては全部すばらしいと思っていますけど、人生の最期にそれまでの来し方をふり返って「ああ、あれはよかったな」って思いたいんですよね。だから今はまだ途中段階。最期に「ああ、あれがナンバーワンだったかもな」と思えるような劇場を残せるように、みなさんと一緒に仕事を続けていきたいと思います。

平井:アーティストは次に出すアルバムが最高傑作、と言うのと同じですね。今日はすばらしいお話をたくさんお聞かせいただきました。ありがとうございました。

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