ヤマハサウンドシステム株式会社

カンセキスタジアムとちぎ様 / 栃木県
Japan / Tochigi Oct. 2022

カンセキスタジアムとちぎ 様

2020年、栃木県宇都宮市の総合運動公園の総合スポーツゾーンの主要施設の1つとして約25,000席の陸上競技場「カンセキスタジアムとちぎ(正式名称:栃木県総合運動公園陸上競技場)」がオープンしました。2022年、第77回国民体育大会「いちご一会とちぎ国体」および第22回全国障害者スポーツ大会「いちご一会とちぎ大会」の開・閉会式と陸上競技を開催する「カンセキスタジアムとちぎ」の音響設備工事をヤマハサウンドシステムが担当しました。施設の概要や音響システムについて公益財団法人栃木県スポーツ協会 栃木県総合運動公園北・中央エリア 施設・業務運営 専門員 山本 天馬 氏にお話をうかがいました。

カンセキスタジアムとちぎ 様

公益財団法人栃木県スポーツ協会
栃木県総合運動公園北・中央エリア 施設・業務運営 専門員 山本 天馬 氏

末永く栃木県民に愛され、県民に誇れる、
県民総スポーツの推進拠点「カンセキスタジアムとちぎ」

● 「カンセキスタジアムとちぎ」についてご紹介ください。

山本氏:
「カンセキスタジアムとちぎ」は栃木県総合運動公園の北エリアに新たに作られた陸上競技場です。「栃木県総合運動公園」には、「カンセキスタジアムとちぎ」だけでなく、第2陸上競技場、野球場、テニスコート、武道館、体育館、屋内水泳場を備えており、県民のための運動拠点として多くの方に利用されています。
栃木県総合運動公園には1979年に建設した陸上競技場(現第2陸上競技場)があるのですが、施設の老朽化が進み、新たな陸上競技場が必要となっていました。そのため、栃木県総合運動公園整備事業の一環として、2014年1月に事業計画を策定し、2020年8月に供用が開始となったところです。また、「カンセキスタジアムとちぎ」は、日本陸上競技連盟の第1種公認陸上競技場であるとともに、Jリーグ施設基準を満たすサッカー場も兼ねています。

カンセキスタジアムとちぎ 様

那栃木県総合運動公園北・中央エリア 施設・業務運営 専門員 山本 天馬 氏

カンセキスタジアムとちぎ 様
カンセキスタジアムとちぎ 様

カンセキスタジアムとちぎ 外観

● 「県民に愛され、県民が誇れる、県民総スポーツの推進拠点」とのコンセプトをホームページで拝見しましたが、特にこだわった点はありますか。

山本氏:
栃木県総合運動公園内の陸上競技場として、県民の方が使いやすくて愛される、そして県民が誇れるような施設にしたいと考えています。日本陸上競技連盟第1種公認の全天候型舗装トラックを9レーン、夜間でも観戦ができる照明、観戦がより楽しめるよう大型映像装置も1面あります。また、建設の際、県産材を随所に使うことで栃木らしさを演出していました。

● 栃木県の公共陸上競技場でありながら、日本プロサッカーリーグ(Jリーグ)「栃木SC」のホームゲームを開催すると聞きました。プロサッカーの利用は多いのでしょうか。

山本氏:
2021シーズンはJ2リーグの試合が14試合開催されました。より良い環境で試合が開催できるように栃木SCと協力しながら施設を管理しています。ちなみにスタジアムの客席のイエローは、栃木SCのチームカラーと同色です。

カンセキスタジアムとちぎ 様

● 栃木県民の方々が利用される陸上競技大会の利用も多いのでしょうか。

山本氏:
2021年度は新型コロナウイルス感染症の影響により、相次ぐ大会の中止、規模の縮小がありましたが、おかげさまで147件の大会や練習会が開かれ、13万人以上の利用者に来場していただくことができました。

カンセキスタジアムとちぎ 様

● 2022年開催の「第77回国民体育大会」の開・閉会式メインスタジアムとして使われています。大会に期待することがあれば教えてください。

山本氏:
「カンセキスタジアムとちぎ」は2022年度開催の第77回国民体育大会「いちご一会とちぎ国体」および第22回全国障害者スポーツ大会「いちご一会とちぎ大会」の開会式など、国体の中核を担う施設です。2022年1月の「冬季大会」を皮切りに、「いちご一会とちぎ大会」は2022年10月1日から11日まで、「いちご一会とちぎ大会」は10月29日から31日まで開催しています。今までのイベントなどで得た経験を十二分に活かして大会を盛り上げます。

カンセキスタジアムとちぎ 様

● 多くのお客さんが来られる大規模な施設ですが運営で注意している点はありますか。

山本氏:
Jリーグ開催に伴い多くの方に来ていただきますので、新型コロナウイルス感染症拡大防止対策を実施しています。具体的には各諸室の消毒や、サーモグラフィーカメラの導入、職員の毎日の検温などを実施しています。また、施設構造として、近隣住民の生活に影響が出ないようスタジアム内の歓声などの音漏れを可能な限り少なくなるようにしています。

カンセキスタジアムとちぎ 様

● ヤマハサウンドシステムが行った音響設備の施工や保守サービスについて感想や、今後期待することはありますか。

山本氏:
陸上競技およびサッカーの大会を開催する上で音響設備は非常に重要な設備です。「カンセキスタジアムとちぎ」の音響設備は専門職だけでなく誰もが使いこなせるようになっていますので、大会開催において素晴らしい音響設備が備わっていると感じています。また、「カンセキスタジアムとちぎ」は、コンサートのようなイベントも開催できますので、これからはスポーツだけにとどまらず、さまざまな用途に音響設備を活用していきたいと考えています。

カンセキスタジアムとちぎ 様

● 「カンセキスタジアムとちぎ」の今後の展望などをお聞かせください。

山本氏:
「いちご一会とちぎ国体」、「いちご一会とちぎ大会」の成功はもとより、県民のみなさんにとって、「する」「みる」「ささえる」のさまざまな観点で、スポーツの楽しさを感じるきっかけを提供できる場所となるよう貢献したいです。末永く「県民に愛され、県民に誇れる、県民総スポーツの推進拠点」であり続けたいと思います。

タッチパネルでイージーオペレーションを実現

● ここからは「カンセキスタジアムとちぎ」に関わったヤマハサウンドシステムの社員に話を聞きます。
まず施工管理を担当した高橋さんは、どのくらいの期間「カンセキスタジアムとちぎ」に関わったのですか。

高橋:
最初の打ち合わせに行ってから最後の音響測定までで、2年3カ月ほど「カンセキスタジアムとちぎ」に携わりました。かなり長期の現場で、その間は栃木県に居住していました。

カンセキスタジアムとちぎ 様

ヤマハサウンドシステム株式会社 技術部 東京技術3課 高橋 淳

● 「カンセキスタジアムとちぎ」の施工管理で特にこだわったのはどんな点ですか。

高橋:
ホールや劇場と違い、屋外に多数のスピーカーなどの音響機器を設置する工事でしたので気を使いました。具体的には「雨」の対策。「カンセキスタジアムとちぎ」ではNEXOのラインアレイスピーカー「GEO S12シリーズ」を導入しましたが、NEXO純正オプションで背面のケーブル接続する部分に耐候性を持ったボックスが用意されていたのでそれを活用しました。またスピーカーのコネクターなどについても耐久性、耐候性の高い部材を選定しています。たとえばコネクターは通常ではプラスチック成型されたものを使いますが、今回は金属製のものを採用しました。

カンセキスタジアムとちぎ 様

● 設計の河野さんにうかがいます。「カンセキスタジアムとちぎ」はスピーカーの数が非常に多いですね。

河野:
大規模施設ですのでスピーカーを分散配置し、お客さまはそれぞれ自分に一番近いスピーカーを聴くという形にしています。客席エリアを分割し、分散したスピーカーでそのエリア内を最適な音量でカバーしています。また、分散配置は外に漏れる音が少ないというメリットがあります。具体的には14カ所に分かれて設置したスピーカーが全部で52台、さらに2階には小型の補助スピーカーが10台、そして1階スタンド席とコンコース用には天井部の66カ所に132台の小型スピーカーを設置しました。各スピーカーを駆動するパワーアンプを組み込んだパワーアンプ架も4カ所に分散しています。スピーカーケーブルをできるだけ短くして、ケーブルによる音質変化をできるだけ少なくなるようにしています。

カンセキスタジアムとちぎ 様

ヤマハサウンドシステム株式会社 設計部 システム設計課 河野 峻也

カンセキスタジアムとちぎ 様
カンセキスタジアムとちぎ 様

14カ所に分散配置したNEXOスピーカー「GEO S1230」 白塗装仕様

カンセキスタジアムとちぎ 様

2階などに使用されている小型のNEXOスピーカー「ID24」

カンセキスタジアムとちぎ 様

1階天井部に設置された補助スピーカー ヤマハ「VXS5W」

● 「カンセキスタジアムとちぎ」の音響システムの設計で、河野さんが特にこだわった点はありますか。

河野:
今回は音声伝送にデジタルオーディオネットワークの「Dante」を採用しました。大規模な施設ですので伝送には光ファイバーケーブルを使っています。それ自体は特別ではありませんが、そのネットワークに音響機器をコントロールするための信号も通しました。「カンセキスタジアムとちぎ」は4階に放送室がありますが、そこと施設内の4カ所にあるアンプ室がデジタルネットワークでつながっています。

● デジタルネットワーク化することでどんなメリットがあるのでしょうか。

河野:
放送室や放送室から離れたアンプ室にある音響機器を、ネットワーク上でリモートコントロールができるようになります。今回、インターフェースにはタッチパネルを導入し、「カンセキスタジアムとちぎ」の形状をグラフィックに表示した操作画面を作成することで、直感的に操作できるシステムを構築しました。

カンセキスタジアムとちぎ 様

4階放送室のコントロールブース

カンセキスタジアムとちぎ 様

4階放送室のコントロールブースに設置されたタッチパネル

● タッチパネルではどんなことができるのですか。

河野:
パワーアンプの電源のON/OFFなどがワンタッチで行えます。たとえば以前ならパワーアンプを再起動する場合、わざわざ遠くにある4つのアンプ室を巡って実際にパワーアンプ本体の電源スイッチでON/OFFしなくてはなりませんでした。これはかなり時間も労力もかかると思いますが、それが放送室のタッチパネルで即座に行えます。タッチパネルは4階の放送室だけでなく、フィールドに近い1階の運営本部室にも用意してありますので、そこでも同じ操作が行えます。

カンセキスタジアムとちぎ 様

1階運営本部室に用意された音響ワゴン

● タッチパネルを導入することにはどんなメリットがあるのでしょうか。

河野:
まず設定の自由度が高いことが挙げられます。施設の用途に応じてさまざまな機能が設定できますし、インターフェースのデザインをグラフィカルにすることで、直感的な操作が行えます。スポーツ施設などの場合は音響技術者が操作するとは限らないので、なるべく扱いやすくすることにこだわりました。

カンセキスタジアムとちぎ 様

1階運営本部室の音響ワゴンに設置したタッチパネル

● 保守点検を担当している片野坂さんにうかがいます。すでに何度か保守点検に入っているのですか。

片野坂:
すでに2回保守点検に入りました。ここの音響は、システムそのものはシンプルですが、スピーカーの数が多いこととアンプ室が分散しているので、そこが劇場やホールとは違う大変さがあります。たとえばパワーアンプは1台1台特性を測定しますが、アンプ室が施設内の4カ所に散らばっていて一番遠い所は、機材の移動に20分ぐらいかかってしまうので、保守点検の作業の中で移動時間をきちんと予想しておく必要があります。

カンセキスタジアムとちぎ 様

アンプ室に設置したパワーアンプ架

● パワーアンプの保守点検は具体的にはどんなことをするのですか。

片野坂:
パワーアンプの特性を1chずつ測定して挙動がおかしくないかをデータでチェックし、その後に実際に音を出して聴感上で確認します。各所のスピーカーまで移動して確認するため、音出し確認だけで丸一日かかります。

● 「カンセキスタジアムとちぎ」に限らず、保守点検でこだわっていることはありますか。

カンセキスタジアムとちぎ 様

ヤマハサウンドシステム株式会社 営業部 東京営業所 保守課 片野坂 拓人

片野坂:
デジタル音響機器の設定データのバックアップです。
デジタル機器は、本体の設定をアプリケーションで管理できる場合が多いので、点検時の正常なデータをバックアップしておき、すぐに正常な状態に戻すことができるよう、現地の制御用パソコンや自身のパソコンにも保存しています。

● 「カンセキスタジアムとちぎ」を手掛けた経験を、今後どのように生かしていきたいと思いますか。

河野:
「カンセキスタジアムとちぎ」の音響システムにはアナログのバックアップ回線を準備しました。万一に備えて念のために作ったものですが、実は、ある機材が故障して回線が途絶えたことがあります。その時にタッチパネルにあるボタンを押すだけでバックアップ回線に切り換えることができ、すぐに運用が再開できたということがありました。その事実がバックアップの大切さを再認識させてくれました。今後はこれまで以上にバックアップを重要視した安全なシステムの設計を提供し、お客様に安心して運用いただけるようにしたいと思います。

高橋:
「カンセキスタジアムとちぎ」の工事期間がちょうどロシアで行われていたサッカーのワールドカップと重なっていたので、サッカーの試合のテレビ中継も普通の人とはちょっと違った目で見ていました(笑)。この工事を通じてスタジアム施工の基本的なことやたくさんのノウハウが学べました。これらは私の糧となって今後いろんなところに活かせるのではないかと思っています。

片野坂:
「カンセキスタジアムとちぎ」では保守点検に3日間もらっています。広い施設で、かつ、保守点検をする音響機器が分散配置されています。保守3日間で保守点検を終わらせられるよう工程管理をしています。工程管理をする上で、いい経験をさせていただいています。

● 最後に営業担当の岩沢さん、「カンセキスタジアムとちぎ」と今度どう関わっていこうと思いますか。

岩沢:
わたしは完成後に担当したので施工期間のことはコメントしにくいのですが、「カンセキスタジアムとちぎ」は非常に音のいい施設です。今後は、「いちご一会とちぎ国体」、「いちご一会とちぎ大会」などさまざまな大会・イベントを通して、少しだけでも『音』にも興味を持って聴いていただければうれしいです。

カンセキスタジアムとちぎ 様

ヤマハサウンドシステム株式会社 営業部 東京営業所 営業課 岩沢 直樹

● みなさん、ありがとうございました。

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