ヤマハサウンドシステム株式会社設立10周年 武田信次郎インタビュー

(公益社団法人日本舞台音響家協会 機関誌「Stage Sound Journal Vol.20 No.105 2019年7月号」より転載。)

ヤマハサウンドシステム株式会社が4月で設立10周年を迎えました。

以前、筆者は都内の劇場に勤めていました。3つの劇場を持ち、その施工、保守を3社が別々に請負うというスタイルでしたので、大劇場と稽古場を担当して頂いたヤマハサウンドテック(当時)以下3社の「やり方」を図らずも比較できる立場にいました。

それで言うと、ヤマハサウンドテックのやり方はスマートな印象。それが2009年に老舗の不二音響株式会社と合併してヤマハサウンドシステム株式会社となると、スマートさに永い歴史から蓄積された経験値が加わり、安心してすべてをお任せできるようになりました。

とは言え、もともと違う方向性を持った会社同士の合併は大変な苦労を伴った難事業でもあったことでしょう。10年を経て、方向性はどのように変わって来たのか。また、50年以上の長いスパンで考えなければならないと言われる劇場・ホールの保守業務に対して、今後はどのように取り組んで行かれるのか、昨年就任された代表取締役の武田信次郎氏に聞きました。(編集部)

ヤマハサウンドシステム設立10周年 武田 信次郎 氏インタビュー

―― 今日はお忙しいところお時間を頂きましてありがとうございます。

武田:こちらこそ、事務所までお越し頂きありがとうございます。

―― 武田さんが昨年6月にヤマハサウンドシステム(以降YSS)の社長に就任されて、ちょうど1年が経ちます。いつも当協会の機関誌に掲載させて頂いている広告が、昨年から「もっと、音を。」というテキストだけのものに替わり、また最近では「YSS 2.0」というこれもテキストだけの広告を拝見したのですが、これまでのヤマハサウンドシステムとは変わってきたように感じています。今日はその辺のことをお聞かせ頂ければと思っています。まずは、武田さんの経歴から教えてください。

武田:はい。大学時代は軽音楽サークルでバンド活動に明け暮れていました。3年の時にサークルでPAを買い替えることになって、私がその担当になりました。まずはPAのことを勉強しようと本屋に行き、そこでたまたま出会ったのが「新版PA音響システム 藤岡繁夫編」です。実はこれ、バンドPAの本ではなく、設備音響の本だったんです。間違って買ってしまったんです(笑)。でも、この本によって世の中には音響設備の仕事があることを知り、また社会性が高い仕事ということもあって、たいへん興味を持ちました。その結果、当時、藤岡さんが社長を務めていた東亜特殊電機(現TOA)に入社しました。「新版PA音響システム」は運命の本。今でも大事に本棚にしまっています。

TOAには12年ほど勤めました。辞める前の8年はホール音響の営業・設計・施工をやっていました。施工管理で現場に常駐したこともあります。ホール音響の仕事の面白さにのめり込み、その後、縁あってヤマハサウンドテックに転職しました。主に営業で、4年ほどお世話になりました。

その後、縁あって親会社のヤマハに転職しました。浜松本社で6年ほどPAの商品企画や事業企画をやりました。その後、東京に戻ってきて、ヤマハ及びヤマハミュージックジャパンのPA営業部でマーケティングを担当し、カタログ制作やInterBEEなどの展示会、Facebookページの立ち上げなどをやりました。その後、部門全体のマネジメントも経験しました。PA営業部で9年ほどやったタイミングで、YSSへ異動になりました。

―― 以前、勤めていた会社に戻ったような形ですね(笑)。

武田:まあ、そうですね、出戻った感があります(笑)。それと・・・私が浜松から東京に戻ってきたのが2009年の3月なんです。YSSの設立が2009年の4月ですから、YSSの設立のタイミングからずっとすぐ隣で見ていたという感じですね。

―― 昨年6月にYSSに入ってみて、どうでしたか?

武田:とにかく社員はみな真面目で一所懸命、というのが率直に感じたことで、一番安心したところでもあります。しかし、組織ですから当然、変えて行きたいところもいくつか見えてきまして・・・大きなところでは2点ほどありました。

―― その2点とは?

武田:はい、1点目は、「もっと音にこだわっていこう」ということです。私の席が提案設計部門のすぐ隣なのですが、どのメーカーの何を使うかという会話がよく聞こえてくるんですね。提案設計部門の会話としては当たり前なんですが・・・でも、弊社のお客様が本当に必要としているのは音響設備ではなく、「音」です。この観点では「音」が目的であり、音響設備はその手段にすぎない。当然、目的ファーストでなければいけない。

どういう音にしたいからこの機材を選定したのか、というところが一番大事なわけです。もっと言うと、「音を買って頂く」という姿勢が行動の原点であってほしい。

そんな思いを言葉にして社員に伝えました。それを広告の形にして、社内だけでなく社会に向けてメッセージとして発信したものが、「もっと、音を。」という企業広告です。別の言い方をすれば、経営理念を広告の形にしたものです。

ヤマハサウンドシステム設立10周年 武田 信次郎 氏インタビュー

―― おっしゃる通り、現場の音響エンジニアが欲しいのは音響機材ではなく、「音」なんですね。たいへん共感します。2点目はなんでしょうか?

武田:はい、2点目は変革です。中に入っていろいろ聞いてみると、設立以来10年弱、不二音響とヤマハサウンドテックの2社のいいとこ取りをした上で、小さな改善をたくさん積み重ねるスタイルでずっとやって来たんですね。その結果、年々ご用命頂ける仕事が増えてきました。だから、やってきたことは全くもって正しいと思います。

そして、ちょうど今年の4月1日をもって合併して10年を迎えました。これからの10年を考えた時、これまでの延長線上で大丈夫なところとそうでないところがあるだろうと。特にIoT、AIが中心とした第四次産業革命が進んでいる中、これまでとは違うこともしっかり考えてやっていかなければならないだろう、また、常にお客様に新たな価値をご提供し続けて行くことはリーディングカンパニーの責務でもあるので、変革していく必要性を強く感じました。そこで、次の10年に向けて、新経営方針「YSS 2.0」を作ったわけです。

―― 合併からもう10年ですか。早いですね。あらためまして10周年、おめでとうございます!「YSS2.0」について、詳しくお聞かせ頂けますか?

武田:人事制度などの細かいところまで手を付けているのですが、今日は細かい話は置いといて、「YSS 2.0」の要諦についてお話しします。基本コンセプトは「不易流行」です。不易流行とは残すべきところは残し、変えるべきところは変える、ということです。変革と言っても、何でもかんでも変えるということではありません。やはり、これまで培ってきたノウハウ等の資産は大事に残して継承し、その上で、中長期のビジョンを設定して、それに向けて変えるところは変えていくということです。具体的にどこを変えるかは、秘密にさせてください(笑)。

―― 「YSS 2.0」の広告も拝見しましたが、10周年のお礼の挨拶の他、今後のことについてもメッセージがありましたが、なるほどそういうことだったのですね。具体的なところは秘密とのことですが、少しお話頂けるところはありませんか?(笑)

ヤマハサウンドシステム設立10周年 武田 信次郎 氏インタビュー

ヤマハサウンドシステム設立10周年 武田 信次郎 氏インタビュー

武田:あ、お話しできることがありました(笑)。実は1月1日付でマーケティング部を発足させました。社員はみんな、真面目で一所懸命にいい仕事をしているんですが、納入実績などを外にうまくPRできていないのは本当にもったいないなと思いまして、マーケティング部門を作りました。

また、弊社の業務は受注生産型ビジネスで、工場と言うか作り上げる場所は建築現場なんですね。車であれば、ショールームで触って試乗して、ということができますが、受注生産型のビジネスではそれができません。契約段階では図面しかありません。では、それでどうやってお仕事を頂けるかと言うと、それは信頼だと思います。納入実績だったり、経営理念だったり、社員の心意気や対応であったり。それらをしっかりと外に伝えていくのもマーケティング部のミッションにしています。

それともう一点。先ほど人事制度にも手を付けていると話をしました。少しお話ししますと、弊社では案件ごとに担当を付けて、案件ごとの要件に見合った仕事をしてもらっています。設計基準や施工基準などをしっかりと作ってはいますが、仕事の品質が人の品質に依存するところが少なからずあります。なので、従来以上に人をしっかり育てていく仕組みだったり、個人個人が自ら成長できる仕組みを作ろうとしています。

基本的な考え方は「まずしっかりした個があって全体がある」というもので、個人が成長することで会社も成長すると考えています。企業広告の「もっと、音を。」「YSS 2.0」からもその考えをご理解頂けるかと思います。

―― そういえばヤマハサウンドシステムのウェブサイトも最近はコンテンツが充実して来ましたね。最近では10周年に寄せて、業界の第一人者の方々からのメッセージが掲載されていたり、Facebookページも開設されたようですね。

武田:そうなんです。劇場コンサルタントや音響コンサルタント諸氏をはじめお世話になっている方々から非常にありがたいメッセージを頂いています。私たちもそれを読んで大きな励みになっています。Facebookページはぜひ皆さん、フォローして頂けるとありがたいです。今後はもっと皆さんのお役に立てるようなコンテンツを配信して行きたいと考えています。

―― 今後のヤマハサウンドシステムがとても楽しみです。今日はお時間を頂きありがとうございました。

武田:こちらこそ、ありがとうございました。

Stage Sound Journal 2019.07 解体心書

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