ヤマハサウンドシステム株式会社

豊中市立文化芸術センター 様 / 大阪府 /
Japan / Osaka October. 2019

豊中市立文化芸術センター 様

大阪府の北摂エリアの郊外住宅地として発展し、質の高い教育文化都市として知られる豊中市。日本センチュリー交響楽団と大阪音楽大学ザ・カレッジ・オペラハウス管弦楽団の2つのオーケストラが拠点を構える「音楽あふれるまち」でもあります。「豊中市立文化芸術センター」はその音楽文化を支える中心とも言える公共施設です。ヤマハサウンドシステムは「豊中市立文化芸術センター」の舞台音響設備を担当しました。ホールの音響システムの特徴や使い勝手、そして保守サービスなどについて、「豊中市立文化芸術センター」の阪本一郎館長 、朝倉祥子総合館長(芸術プロデューサー)、舞台技術責任者 音響担当の内田琢啓氏、舞台技術担当者 音響担当の八谷尚毅氏にお話をうかがいました。

写真右端より 「豊中市⽴⽂化芸術センター」阪本⼀郎館⻑、朝倉祥⼦総合館⻑(芸術プロデューサー)、舞台技術責任者 ⾳響担当 内⽥琢啓⽒、舞台技術担当者 ⾳響担当 ⼋⾕尚毅⽒

写真右端より 「豊中市⽴⽂化芸術センター」阪本⼀郎館⻑、朝倉祥⼦総合館⻑(芸術プロデューサー)、
舞台技術責任者 ⾳響担当 内⽥琢啓⽒、舞台技術担当者 ⾳響担当 ⼋⾕尚毅⽒

「音楽あふれるまち」豊中市の文化と芸術の中心となる施設

● 「豊中市立文化芸術センター」の概要を教えてください。

 

「豊中市立文化芸術センター」外観

「豊中市立文化芸術センター」外観

阪本館長:
「豊中市立文化芸術センター」は2017年1月にグランドオープンしました。ここには定員1,344名の大ホール、定員202名の小ホール、定員160名の多目的室、定員213名の展示室、さらにミーティングルーム3部屋、練習室3部屋、和室、キッズルームとスタジオがあります。おかげさまでオープンから非常に高い利用率でご利用いただいています。

● 「豊中市立文化芸術センター」は、どんな趣旨で設立されたのでしょうか。

阪本館長:
「豊中市立文化芸術センター」にはミッションがありまして、それは「つくる・まじわる・ひろげる」の3つです。「つくる」は、鑑賞の場を提供するだけではなく、企画から、制作、発表、鑑賞まで一貫した文化芸術活動を展開することです。「まじわる」は、音楽だけではなく美術など多様な文化芸術と交流することで、市民、大学、企業、市内外の文化施設、文化芸術団体との連携を深めることも含んでいます。そして「ひろげる」は、この館だけで完結するのではなく、豊中市、さらには北摂地域全般に芸術を発信していくということを意味しています。

 

「豊中市立文化芸術センター」阪本一郎館長

「豊中市立文化芸術センター」阪本一郎館長

● 非常に美しい建造物であることに感銘を受けました。

阪本館長:
ありがとうございます。「豊中市立文化芸術センター」は建物としても高い評価を受けており、さまざまな建築賞を受賞していて、建築界からも注目されています。またロビーの壁面に飾られている「マチカネワニの化石」は1964年に大阪大学豊中キャンバスの工事現場から発見された化石を複製したもので、なんと全長7メートルのワニです。これは発見された地名の「待兼山町」からマチカネワニと名付けられ市民に親しまれています。

 

ロビー壁面に展示されている実物大のマチカネワニの化石のレプリカ

ロビー壁面に展示されている実物大のマチカネワニの化石のレプリカ

大ホールホワイエ

大ホールホワイエ

小ホールホワイエ

小ホールホワイエ

 

● 豊中市は音楽が盛んな土地柄だとうかがいました。

朝倉総合館長:
豊中市にはたくさんの芸術団体、例えば合唱団やバレエ教室などがあります。また、日本センチュリー交響楽団と大阪音楽大学ザ・カレッジ・オペラハウス管弦楽団という2つのオーケストラが拠点を構えています。日本センチュリー交響楽団は練習場が豊中にあった縁から豊中市と提携を結び、市内各地のお寺や古い建物でアンサンブルや演奏会を行うようになりました。そんな経緯もあり、「豊中市立文化芸術センター」には指定管理者の一員として、日本センチュリー交響楽団が加わっています。オーケストラがこういった施設の指定管理者になる例は、日本ではあまりないと思います。

 

 

朝倉祥子 総合館長(芸術プロデューサー)

朝倉祥子 総合館長(芸術プロデューサー)

● オーケストラが指定管理者ということで、やはり自主企画も盛んなのでしょうか。

朝倉総合館長:
貸館としても多く利用いただいておりますが、私たちは自主企画にも力を入れております。日本センチュリー交響楽団が指定管理者ですから、やはりクラシック音楽が主体です。たとえばグランドオープンから年4回「センチュリー豊中名曲シリーズ」という日本センチュリー交響楽団のコンサートをシリーズで行っています。また室内楽や日本センチュリー交響楽団の演奏者によるリサイタルも数多く行っています。

● やはりクラシックが主体なのですね。

朝倉総合館長:
はい、できるだけクラシック音楽を広めていこうと頑張っています。ただ、クラシックばかりでなく、日本センチュリー交響楽団とポップスの歌手との共演も年1回行っています。初年度が谷村新司さん、次が森山良子さん、そして、今年は岩崎宏美さんをお迎えしました。またジャズや落語、邦楽などの公演も積極的に行っています。

● 観賞するものだけでなく、普及育成型のプログラムもされていると聞きました。

朝倉総合館長:
一番代表的なものが、毎年3月に「こどもクラシック」と題して、全館で1日中こどもが参加できるさまざまな企画が行われています。また12月に「豊中市民第九演奏会」を行います。ベートーベンの第九と言えば合唱で、豊中の市民の方々が多く参加されています。このオーケストラはもちろん日本センチュリー交響楽団です。また豊中市にゆかりのある世界的バレエダンサーの針山愛美さんによるバレエのワークショップも行っています。これは毎年行っており、秋に開講し、翌年3月頃に発表会を行います。

阪本館長:
私たちの企画は、いわゆるクラシックが多いのですが、決して上から目線でなく、市民の方に楽しんでもらえるよう工夫を凝らしています。また針山さんのバレエのワークショップも、経験のない子たちを集めてレッスンするんです。そのあたりは、「豊中市立文化芸術センター」ならではです。

大阪産の杉材を多用した美しい響きの大・小ホール

● 大ホール、小ホールともに、木が使われていて非常に美しいと思いました。

阪本館長:
これらはすべて大阪産の杉の木なんです。

朝倉総合館長:
音響反射板にも大阪産の杉を使っています。ここまで木を多用しているホールは珍しいと思います。ホールの音が完成するまでには10年かかる、と言われますが、ホールの木が馴染んできて、どんどん響きが美しくなっていっていると感じています。音楽だけでなく、演劇の方からも「はっきり台詞が聴こえる」とご評価いただいています。また木を基調にしたデザインなので、見た目にも落語や和太鼓など和風の出しものにもよくマッチします。

 

大ホールの壁面
大阪産の杉材がふんだんに使用されている

大ホールの壁面
大阪産の杉材がふんだんに使用されている

● 音響的にはどうでしょうか。

八谷氏:
本当にすごくいいです。大ホールはオープンから時間が経ち、基音がしっかりして、低音も高音も芯が出る感じになっています。やっぱりホールは楽器みたいに成長するとものなんだな、と思っています。小ホールも当初からいい音だった印象でピアノの演奏家の方にも高く評価をいただいていました。大阪でもいちばんピアノの音が聴きやすいホールじゃないかと思っています。

 

舞台技術担当者 音響担当 八谷尚毅氏

舞台技術担当者 音響担当 八谷尚毅氏

大ホール内観

大ホール内観

小ホール内観

小ホール内観

 

フライング設置されたラインアレイスピーカーと
デジタルオーディオネットワークDanteによる先進的な操作性

● 音響設備面でのこのホールの特徴はどんな点でしょうか。

八谷氏:
音響システムとしてはベーシックなものだと思います。ただちょっと他のホールと違う点は、ラインアレイスピーカーが高い位置に露出でフライングしていることです。大ホールではプロセニアム中央、下手、上手という形で3つのアレイが吊ってあります。小ホールはセンターがフライングしてあり、必要に応じてサイドスピーカーをステージ上に設置します。

● スピーカーを高い位置でフライングしていることには、どんなメリットがあるのでしょうか。

八谷氏:
クラシックコンサートを行うことが高いホールですので、スピーカーが高い位置にあることでお客様の視野を邪魔しないんです。それと高い位置にあることとラインアレイ効果が相まって、客席に均一な音量でアナウンスを届けられます。また現代音楽などの場合、作品中にSEとして環境音などを再生することがありますが、そういったときも再生音の音像が上から響くので、ギリギリまで音量を大きく出しても生音を邪魔することなく、いい感じに混ざります。

 

大ホールプロセニアムスピーカー
中央、下手、上手でラインアレイを配置

大ホールプロセニアムスピーカー
中央、下手、上手でラインアレイを配置

大ホールプロセニアムスピーカー(中央)

大ホールプロセニアムスピーカー(中央)

大ホールプロセニアムスピーカー(上手)

大ホールプロセニアムスピーカー(上手)

 

内田氏:
大ホールは音響反響板がアーチ型で、比較的反響が豊かというか多めだと思うんです。反射音と上に吊ってあるスピーカーからの音が相乗効果で、いい混じり具合になっているのだと思います。

 

舞台技術責任者 音響担当 内田琢啓氏

舞台技術責任者 音響担当 内田琢啓氏

小ホールはプロセニアムスピーカー(中央)のみ常設
サイドスピーカーは必要に応じて設置

小ホールはプロセニアムスピーカー(中央)のみ常設
サイドスピーカーは必要に応じて設置

小ホールプロセニアムスピーカー

小ホールプロセニアムスピーカー

必要に応じて設置する小ホールのサイドスピーカー

必要に応じて設置する小ホールのサイドスピーカー

 

● 調整卓としては、大ホールにヤマハのデジタルミキシングコンソール「CL3」が、小ホールには「CL1」が入っています。

八谷氏:
ヤマハの「CLシリーズ」は音質や機能はもちろんですが、なんといっても操作がわかりやすい点がいいですね。音響スタッフの増援を頼むこともありますし、外部のオペレーターさんがこのミキサーを使うことも多くありますが、ヤマハの「CLシリーズ」なら使えない人はいないんじゃないでしょうか。

● 誰もが使いやすい機材であることは大切なのでしょうか。

内田氏:
操作性は大切です。それに、私もそうでしたがアナログ卓から移行しても、迷うことなくすぐに使えます。

八谷氏:
それとヤマハ「CLシリーズ」をWi-Fi経由したiPadで操作できるアプリ「StageMix」は画期的です。ステージ上で演者さんのポジションから直接モニターのEQやレベルなどのミキシングパラメーターが操作できるので、精度の高い調整がスピーディに行えます。これはとても使いやすいです。

 

大ホール音響調整室
ヤマハのデジタルミキシングコンソール「CL3」を採用

大ホール音響調整室
ヤマハのデジタルミキシングコンソール「CL3」を採用

小ホール音響調整室
ヤマハのデジタルミキシングコンソール「CL1」を採用

小ホール音響調整室
ヤマハのデジタルミキシングコンソール「CL1」を採用

 

● デジタルオーディオネットワークのDanteを採用していますが、使い勝手はいかがでしょうか。

八谷氏:
DanteのDVS(Dante Virtual Soundcard)を非常に便利に使っています。この機能を使うと、ダンスなどのイベントとかで客席にパソコンを持ち出して音の再生が行えます。今までだったら誰かに調整室で音源を再生してもらって、自分は客席で音を聴いていたんですが、DVSのおかげで、客席にいながら自ら操作できるようになったのでとても便利です。

● 音を客席で直接再生操作ができるわけですね。つまり本番と同じ状況を、客席で聴けるということですね。

内田氏:
そうです。ホールでありながら、ライブハウス的なPAをしている感じです。

八谷氏:
iPad用のアプリの「StageMix」はボリュームとEQをリモートコントロールし、併せてDVSを使うことで、調整室で行う作業のほとんど全てを客席で行えるようになりました。一番前の席でも操作できるのが非常に便利です。

 

大ホールアンプ室

大ホールアンプ室

大ホールは舞台袖、調整室、アンプ室をDanteによりデジタルオーディオネットワークを構築

大ホールは舞台袖、調整室、アンプ室をDanteによりデジタルオーディオネットワークを構築

 

ホールへの深い愛を感じるヤマハサウンドシステムの保守サービス

● 「豊中市立文化芸術センター」の音響システムの保守や施工は開館以来ヤマハサウンドシステムが担当しています。その感想をおきかせください。

内田氏:
正直、素晴らしい対応ですね。

八谷氏:
私も本当に素晴らしい対応だと思います。リハーサル中ではあったんですが、一度大ホールで機材がトラブったことがありました。そうした事態になっても対応できるようにセーフティを考えたパッチが組まれているのでスピーディーに他の機材に入れ替えることができました。それだけではなく、ヤマハサウンドシステムさんに電話したらすぐ来てくれたんです。その場ですぐ不具合の状況を見てくれました。「すぐ行きます」って言ってくれるのは、たぶんヤマハサウンドシステムさんぐらいじゃないでしょうか。昨年地震があった時も様子をわざわざ様子を見に来てくださいましたし、ヤマハサウンドシステムさんにはホールに対する深い「愛」を感じますね。

● 最後に今後「豊中市立文化芸術センター」でどんなことをしていきたいか、一言ずつお願いします。

阪本館長:
「豊中市立文化芸術センター」はおかげさまで利用率が90%を超えています。つまり基本、毎日フル稼動です。スタッフの補強はしてはいるのですが、業務が多く、やりたいことがなかなかできていないことがまだあると感じています。たとえばお客さまとの個別相談も昨年は50回ほど行いましたが、まだまだ希望するお客さまの全てには対応できてないと思っています。今後はよりお客さまの立場に立ち、もっと市民の方に寄り添える施設にしていきたいと考えています。

朝倉総合館長:
コンテンツ面としては、とにかく市民の方々に「行ってみよう」と思われる施設にしたいですね。それには「来て良かった」と思えるような場所であることが大切なので、より多くの市民の方々に楽しんでいただけるコンテンツを増やしていきたいと考えています。

 

豊中市立文化芸術センター 様

八谷氏:
クラシック中心のホールという性質上、音響が担当することはアナウンスのみだったり、ソロマイクを用意するくらい、ということもありますが、私は音響以外の部分も含め、このホールを支えるスタッフの一人として、お客さまに喜んでいただけるように、関わっていきたいと考えています。

内田氏:
「豊中市立文化芸術センター」は大ホール、小ホールともにクラシックやバレエなどの公演が多く、ナチュラルな響きを持った音に評価をいただいております。今後はマイクを多用した公演、たとえばバンド演奏などでもいい音を提供するなどさまざまなジャンルでも高い評価をいただけるホールにしていきたいです。

● 本日は、ご多忙の中ありがとうございました。

 

豊中市立文化芸術センター 様

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