北上市文化交流センター さくらホール 様 / 岩手県 /
Japan / Iwate June. 2019
2003年11月にオープンした多目的ホール、北上市文化交流センター「さくらホール」は、大ホール、中ホール、小ホールに加え、レコーディングスタジオ、ミュージックルーム、キッズルーム、アトリエ、多目的室などを備えた北上市の文化の中心的役割を担う施設です。このたびヤマハサウンドシステムは「さくらホール」の音響設備、舞台連絡設備の更新工事を担当しました。更新のコンセプトや今後の展望などについて、「さくらホール」の管理運営を担当する一般財団法人 北上市文化創造 利用サービス課 佐藤辰也氏にお話をうかがいました。
● 最初に北上市文化交流センター「さくらホール」について教えていただけますか。
佐藤氏:
当館はオープンして15年になります。ここは1406席の大ホール、461席の中ホール、175席の小ホールという3つのホールを備えています。さらにアートファクトリーと呼ばれる大小さまざまな練習室、アトリエ、会議室、和室、トレーニングルーム、キッズルームなど21の部屋があり、今日も太極拳やヨガなどが行われています。いつも何かしらが行われている、市民の文化面における中心施設です。このホールは立ち上げの時から「何かあるときにだけ行くホール」ではなく、日頃から人が集い、そのにぎわいから新しい何かが生まれる場所にしよう、という考えで作られました。
● 確かに今日も市民の方々が集ってヨガなどをされていますね。
佐藤氏:
太極拳、カラテ、それにダンスも盛んで、バンドの練習やライブも頻繁に行われています。「さくらホール」は実際に市民が集まって自由に使える場所ということが基本にあり、市の持ち物ではありますが、「民間の発想で自由に運用しよう」と市から言っていただいていますので、大晦日も深夜までライブを行うなど、公共ホールとして常識にとらわれない発想で、さまざまな催しを行っています。
オープン15年を経て大ホール、中ホールのコンソールをヤマハ「RIVAGE PM7」に更新
● 今回の「さくらホール」の音響面での更新は、どんなコンセプトだったのでしょうか。
佐藤氏:
15年前の開館時には大ホール、中ホールともにヤマハのデジタルコンソール「PM1D」を導入しました。最初からハイエンドなデジタルコンソールが導入できたので、音質面でも機能面でも満足していたのですが、15年を経て保守パーツなどを考えて更新に踏み切りました。選定期間にタイミング良く「RIVAGE PM7」が発表されたので「これしかない!」ということで「RIVAGE PM7」を大ホール、中ホールともに導入し、さらに移動用にコントロールサーフェスの「CS-R10-S」も導入しました。「CS-R10-S」は客席でオペレーションをする際やステージ袖でのモニター卓として使用します。
● オープンから一貫してヤマハのデジタルコンソールをお使いいただいていますが、その理由はなんでしょうか。
佐藤氏:
なんといっても「安心感」です。こうしたホールは自分たちだけが使うわけではありません。いろんなオペレーターさんがいらっしゃってこのホールの卓を使うわけですから、万が一にもトラブルがあっては困ります。それが最大の理由です。
移動用卓にヤマハ「CL3」を導入
● 「CL3」は主にどんな用途で使われるのでしょうか。
佐藤氏:
館内のさまざまな用途で使用します。たとえば、事務所の後ろにある「ミュージックルーム」というスペースでライブを行う場合には「CL3」を使用しています。スタンドアローンなので便利です。
楽屋・ホワイエへの音声送りなどのマトリクスミキサーにヤマハ「MRX7-D」を導入
● ヤマハ「MRX7-D」はどんな用途で使われるのでしょうか。
佐藤氏:
大ホール、中ホール共に設置していますが、音響室でバランスを取った音を楽屋やホワイエ、ヘッドエンドへ送る音量調整のために導入しました。改修前は同じ用途でアナログミキサーを使っていたのですが、ミキサー操作に慣れていない職員が使うケースもあり「音が出ない」ということが何度かありました。そこで今回は「MRX7-D」で音の入り口と出口を固定したプログラムを組み、専用のコントロールパネルを用意してだれでも簡単に音量調整が行えるシステムとしました。またこの操作は改修前まで舞台袖のみでしたが、「DCPシリーズ」のコントローラーを導入することにより、音響室からも操作が可能となりました。
Danteのデジタル音声の伝送を行う光回線を全館に敷設
● また今回の改修では館内のホール間をまたぐ光回線を敷設し、Danteのデジタル音声の伝送を行っています。これはどんな趣旨なのでしょうか。
佐藤氏:
将来的なデジタル回線の活用を見据えて大・中・小ホール間、さらにレコーディングスタジオやラジオ放送の収録を行っているサテライトスタジオなど、館内の主要施設をつなぐ基幹インフラとして光ケーブルを敷設しました。Danteのデジタル音声の伝送だけでなく映像伝送でも使用しています。将来的には照明の信号や館内の監視カメラなど、あらゆる信号の伝送経路の大動脈として使用を考えています。
● 音声や映像のデジタル伝送はどんなことに活用されているのですか。
佐藤氏:
たとえば「さくらホール」では、毎年成人式を大ホールで行うのですが、保護者のかたまでは大ホールには入りきらないことがあります。そのような際は、中ホールや小ホールにご案内し、映像と音声を中ホール・小ホールに伝送する、ということを行っています。また全館を使用して行うこどものお仕事体験イベントや、サテライトスタジオでのラジオ番組の放送中にホールのリハーサルの様子を中継したりと、さまざまな用途で使用しています。またホール単位でも、小ホールやミュージックルームでは、さまざまなイベントや催し物がありますが、Danteならさまざまな用途に応じた回線設定をメモリーしておけるので、基本的なセッティングが素早く行えます。またライブコンサートなどを録音する場合でもNuendoが入ったノートPCを現場に持ち込み、直接PCにマルチトラック録音が行えます。これも非常に便利です。
「ヤマハ製品の安心」はヤマハサウンドシステムの万全のサポートがあってこそ
● ヤマハサウンドシステムは開館以来、「さくらホール」の音響設備、舞台連絡設備の保守点検と工事を担当しています。その感想をお聞かせいただけますか。
佐藤氏:
ヤマハサウンドシステムさんのお仕事ぶりは、見事だと思います。いや、これは取材だからって、お世辞じゃありませんよ(笑)。私がここで15年、好き勝手やらせてもらっているのも、ヤマハサウンドシステムさんのしっかりしたバックアップのお陰だと思っています。先ほど「ヤマハの製品は安心だ」と言いましたが、これは、ヤマハサウンドシステムの万全のサポートも含めて、という意味でもあります。たとえば何かトラブルが起きて音が出なくなったとします。ヤマハサウンドシステムに電話をすると、北上は東京から500kmという距離ですが、それでも、その日のうちにどなたかが来てくださいます。もし都合が悪くて来られなくても、こちらで対処できるような解決法を回答いただけます。また具体的なトラブルの時ばかりではなく、「今度こんなことをしてみたいんです」と言うと「こういう方法があります」というアドバイスを素早いレスポンスで返してくださいます。また今回の改修工事で、ちょっとした手違いがあった時も問題解決の仕方が的確で、とても丁寧だと感じました。
● 最後に、今後の抱負などをお聞かせください。
佐藤氏:
最初の方でも申し上げましたが、市からお預かりしているこの「さくらホール」を、できるだけ多くの市民の方に使っていただきたいと思っています。そのために私たちは積極的にオペレートし、裏方もします。そうしなければ地元の方々の発表会などはなかなか開催できません。むしろ私たちが裏方をすることで、積極的にホールをプロモートしていきたいです。また、同じ志を持った後輩を育て、その後輩が「運用のことがよく考えられている素晴らしいシステムだな」と唸るような音響システムを残したいと思っています。そして最終的にこのホールを使った演者さんに「さくらホールには、いい職員がいて、いい音響システムもあるし、いいホールだね」と言われるようになればいいなと考えています。
● 本日は、ご多忙の中ありがとうございました。
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